65.空間ぶった斬り
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
あくる日、私は兵士たちを連れて、大鉱山へとやってきた。リルちゃんがいた鉱山だ。
「ほわぁあ! す、すごいのじゃ! 魔銀が、こんなにたくさんあるじゃとおぉおおお!」
私達に同行してきたドワーフ職人のガンコジーさんが、歓声を上げる。
鉱山内の壁や天井は、青みがかかった銀色の鉱物で覆われている。
これが魔銀。
魔力・闘気を最高の効率で通す、とても希少な鉱物だ。
エルザ曰く、高難易度ダンジョンの、奥深いところでしか取れないらしく、かなりレアな鉱物だという。
かなり高値で売買されているのだとか。
そんな希少な鉱物を目の前にして、ガンコジーさんは大興奮。
すりすりと魔銀の表面に頬ずりしていた。
「副王様、これから何するんすか?」
獣人兵士のワンタくんが手を上げて質問してくる。
彼の妹トイプちゃんを始め、兵士達も、今から何をするのか気になっている様子でこちらを見てくる。
「この魔銀を使って訓練をします」
「訓練?」
「ええ。内容は単純。この魔銀を武器で切り取るのです」
私は木刀を手に魔銀の鉱床へと近づき、ストンッ、と斬る。
切り取ったそれを手に、皆に見せる。
「なんかすげえ簡単そうっすね」
「お兄ちゃん、バカなの?」
トイプちゃんがあきれたようにため息をつく。
「なにぃ? バカってどういうことっすかトイプ!」
「お兄ちゃん、副王様が切り取った鉱石、触ってみて」
ワンタ君が近づいてきて、つんつんと指で突く。
「硬えす……。え、これ木刀で切れるもんなんすか?」
「無理に決まってるでしょ。しかも、副王様は闘気を使って無かったじゃない」
「ふぁ!? まじっすか!?」
どうやらまだ、ワンタくんをはじめ、闘気を24時間吸収する呼吸法……【常駐】を身につけていないようだ。
一方……。
「トイプちゃん。常駐、ちゃんとできるようになってますね」
この子にはこないだ、闘気を24時間吸収し続けるやり方を教えた。
そしたら、モノの数日で、技術を習得して見せたのだ。本当に覚えが早い。これからもっともっと強くなっていくだろう。
「副王様、闘気で体を強化しないのは、どうしてですか?」
「魔銀には闘気と魔力を吸収する力があるのです。それゆえ、闘気で身体強化し攻撃を加えても、威力半減してしまうのです」
なるほど……と皆が納得したようにうなずく。
「で、でも……じゃあ闘気も使わずどうやって?」
「そうじゃ! ありえんぞ!」
我に返ったガンコジーさんが私に尋ねてくる。
「魔銀は、神威鉄ほどではないにしても、かなり硬い鉱物じゃ。採掘は特殊な道具を使わないと不可能。木刀で切り取るなんて、あり得ないことじゃて」
確かに、コツを知らない人たちからすれば、どうやったのか気になるだろう。
「モノを斬る極意を使うのです」
「「「モノを斬る極意?」」」
私はエルザに説明した、極意について伝授する。
森羅万象、あらゆるものは呼吸をしてる。そして、息を吐いた瞬間がもっともろい。そこを狙ってモノをきれば、万物を斬れる……と。
「モノの呼吸……? い、意味わかんねーっす。モノって呼吸してないっすよね……?」
大半の兵士達は、私の言ったことを理解できていなかった。
「ちょっとわかった気がしますので、やってみます!」
「マジかよトイプ!」
トイプちゃんが剣を持って、魔銀鉱床の前までやってきた。
目を閉じて、武器を振り上げる。
彼女は絶気状態、すなわち、闘気をゼロの状態だ。
……嘘だろ。教えてないのに、この子は絶気を、習得していた。恐ろしい才能だ。
「ヤあッ……!」
トイプちゃんが剣を振り下ろす。
ごとん! と魔銀が落ちた。
「うぉおおおお! と、トイプぅううう! おま……おまえ! すごすぎるっすよ!」
なんて才能だ。一発でモノを斬る極意をみにつけ、魔銀を斬ってしまった。
「えへへっ♡ どうですか、副王様」
「素晴らしいです」
「やったー! 褒めてもらったー!」
ぶんぶん! とトイプちゃんが尻尾をうれしそうにふる。
「見事じゃな……副王よ。まさか一度教えただけで、魔銀を斬れるようにしてしまうとは」
「いえ、私はなにもしてないです。この子の才能が半端じゃなかったのです」
ガンコジーさんも驚いてるようだ。
落ちた魔銀を、私は異空間にしまう。
「待て待て待つのじゃ副王よ!」
「どうしました?」
ガンコジーさんが空間の裂け目を指さして言う。
「なんじゃそれ!? 魔銀をどこにしまった!?」
「? 空間の裂け目にですけど」
おや?
「ガンコジーさん、天王剣……ファルを使って空間を切り裂く秘奥義を、知ってますよね?」
確か、ゲータ・ニィガからネログーマへ来るときに、見せたようなきがする。
「う、うむ……じゃが、あのときは聖剣を使って空間を斬って、つなげただけだったような……」
「はい。そこから試行錯誤して、新しい剣を身につけたのです。空間を切り裂き、そこにものを収納しておく」
「アイテムボックスのスキルか!」
「? いえ、剣技ですけど」
スキルでは無く、単なる剣の技のひとつだ。
「いやそれは、アイテムボックススキルじゃ! 超超レアなスキルで、いにしえの勇者しか使えないというものじゃ!」
「そんなスキルを剣技で再現してしまうなんて、さすが副王様っす!」
いや、スキルじゃ無くて剣技なのですが……。
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