39.王女を救出
私達はゲータ・ニィガ王国へと向かっている。
その道中でのこと。
「副王さまっ。また敵が近づいてきてますねっ!」
トイプちゃんが衝気円で、敵の存在に気づいたようだ。
やはり彼女はセンスがある。
「飛竜でしょうか? ちょっと気配が変ですが……」
……ふむ。
これは驚いた。彼女もまた違和感に気づいてるようだ。本当に、闘気操作の才能がある。
「水蓮。あなたはどう思いますか?」
「拙者はその……すみません。飛竜にしか感じません」
「そうですか。わかりました。では、飛んでくるそれをとりあえず、地上へと落としなさい」
「了解でござる!」
高速で飛翔してくる、飛竜(仮)。
水蓮は刀を構える。
「水の太刀! 水蛇!」
水蓮が刀を振るうと、水の蛇が出現する。
「わ! すげえ! 水の蛇っす! 闘気を生物に変化させるなんて……!」
蛇は上空へと飛び、飛んでくる飛竜に絡みつく。
そして、飛竜は地上へと落ちた。
ずずぅううん……!
「で、でけえ……! なんすかこの飛竜! ちょーでけえ!」
ふむ。5メートル……いや、8メートルはある。
飛竜は小型竜に分類される。それと比較すると、確かに大きな個体といえた。
「水蓮。倒してみなさい」
「はい! 水の太刀……流水舞!」
水蓮は川を流れる水のように、流麗な連撃を飛竜に食らわせようとする。
刃が敵に襲いかかる。が。
「なっ!? 攻撃が……通らないでござる!?」
刃は確実に敵の肉体をえぐったはず。
だが、飛竜の体表には一切切り傷が見当たらないのだ。
「衝気!」
ワンタ君が衝気を放つ。
だが、闘気の弾丸は飛竜の皮膚にぶつかるも、反射され、そして戻ってきたのだ。
「な!? はや……」
私はワンタくんの前に立ち、弾丸を木刀で一刀両断した。
「ワンタ君。今の見てどう思いましたか?」
「えと……弾丸が跳ね返ったようにおもえたっす……なんか、妙っすね」
「そのとおり。その感覚を忘れないように」
この子はバーマンと近いタイプのようだ。
感覚で戦うタイプ。
「おそらくこの個体は、飛竜ではありません。巧妙に偽装してますが、おそらく軟体生物が飛竜に化けてるのだと思われます」
「!? か、完全に闘気が飛竜のそれでござるが?」
「生命のもつ闘気のゆらぎや色すらも、完璧に偽装する魔物なのでしょう」
「なんと……。それを見抜いてしまうなんて、やはりアレク殿は凄いでござる!」
ふむ……。
水蓮の使う水の太刀は、水流を利用した鋭い斬撃を得意としている。
その彼女ですら、傷つけられないほどの皮膚を持っているのか。
「どうしよう、副王さま。こいつのおなかの中に……」
「ええ、人がいますね」
「んな!? ま、まじっすか!? こんなかに人が……?」
読めてきた。
どうやらこの飛竜に化けた生き物は、誰かを飲み込み、そしてどこかへと移動する途中だったようだ。
「ギシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
水蓮の水蛇による拘束をとくと、飛竜もどきは、どこかへと飛び去ってしまう。
「「「はや!?」」」
先ほどよりも速く、飛んでいく飛竜もどき。
「逃がしません」
私は緑、そして紫の型を複合した奥義、疾風迅雷を発動。
迅雷となりて飛竜もどきの前まで移動した。
「ギシャ!?」
「悪いが、返してもらいます」
食われている人は、私にとって無関係な人だ。助ける義理がないかもしれない。
だが、私はか弱き物のために剣を振ると、再度誓ったのだ。
目の前で拉致されかけている人を、放ってはおけない。
「技を借りますよ。水の太刀……流水舞」
流れる水のごとき流麗な連撃を、相手に食らわせる。
スパパパパパパパッ……!
細切れになった飛竜もどきの中から、少女が一人、出てきた。
美しい少女だ。
何も身につけていない。
私は空中で彼女を受けとめて、軟着陸する。
服はとかされてしまったのだろう。可哀想に。
私は身につけている上着を脱いで、彼女の体を包んであげた。
闘気の状態を見やる。
どうやら呼吸ができていない。気道に粘液が詰まっているようだ。
「活性」
白色闘気を体に流す。
「かはっ! はぁ……はぁ……こ、ここは……?」
「大丈夫ですか? お嬢さん」
「う、うん……♡ ありがとう。おじさま♡」
目を♡にして、少女がつぶやく。……おじさま?
「おじさまが助けてくれたのねっ。ああ、やっぱりあなたはあたしの騎士様だわっ!」
むぎゅーっ、と少女が私を抱きしめてくる。
どうにも少女は私を知ってる様子。
しかし、私にこんな美しい少女の知り合いは……。まあ、いるか。何人も。
「大丈夫でござるか~!」
水蓮たちがこちらに駆けてくる。
「拙者の剣を一度見ただけでコピーし、そして拙者では斬れなかった敵をたおしたうえ、中に居た人に一切傷つけることをしない! なんという超絶技巧! さすがですアレク殿っ!」
水蓮が私を褒めた後……ぎょっ、と目をむく。
「スカーレット姫ではありませぬかっ!」
「………………スカーレット」
スカーレット……姫……。
どこかで……。いや、そうだ。昔、会ったことがある。本当に昔だけど……。
「まさか……本当にスカーレット姫殿下なのですか?」
「ええ、そうよ。なぁに、忘れてたの? もうっ。アレクじゃなかったら不敬罪でしょっぴいいてるところだわっ!」
そこへ、おくれてワンタくんたちがやってくる。
「副王さま。その子が飛竜もどきに食われてた人っすか?」
「無礼な獣人ね。あたしをどなたと心得るの?」
「え、知らんけど……」
やれやれ、とスカーレット姫が首を横に振る。
「あたしはスカーレット・=フォン=ゲータ・ニィガ。ゲータ・ニィガ王国の王女さまよ。頭が高いわっ」
「え、えええ!? ゲータ・ニィガの王女さま!? うそぉお!?」
「ほんとよ! なにあんた、不敬罪に処すわよ?」
まあまあ、と私がなだめる。
「すみません、姫。彼は子供でして。許してくださいませんか?」
「うん♡ いいよ♡ 他でもないアレクのためですものっ♡」
すぐに許してもらえてよかった。
それにしても、まさかスカーレット姫がこんなところにいるとは……。
「ああ、素敵♡ ピンチに颯爽と現れて、あたしを助けてくれるなんて……♡ やっぱりあなたは、憧れのナイト様……♡」
「は、はあ……ところで姫、どうしてネログーマに?」
「そうだった!」
スカーレット姫は私に抱かれた状態で、びしっ、と指を向けてくる。
「辺境の剣聖、アレク・サンダー! あたしの騎士になりなさい!」
……。
…………。
………………ふぅ。やれやれ。また、ですか。どうして、皆こんなおっさんを、求めてくるのでしょうか。
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