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29.異形化した大精霊を助ける


 私達はついに聖域に突入した。

 アビシニアン陛下から伺っていた話だと、聖域は綺麗な湖だったらしい。


 だが。


「これは……ひどいっすね」

「真っ黒で……汚い……」


 ワンタくんたちが目の前の【それ】を見てつぶやく。

 湖の水がすべて黒いヘドロになっていたのだ。


 そして魚や肉の腐ったにおいが湖から漂ってくる。


「精霊ちゃん。大精霊さんはどこにいるのですか?」

【大精霊様の気配……湖の中からする……おじさん、早く助けてあげてっ!】


 この湖のなかに意識を集中させる。

 確かに強い自然エネルギーの気配を感じられた。これが大精霊さんの発する闘気オーラだろう。


 だが、大精霊さんの闘気オーラは濁っていた。

 闘気オーラのゆらぎは心のゆらぎ。大精霊さんは何かに苦しんでいるのがわかった。


「ふぇふぇふぇ! よく来ましたねえ人間どもぉ!」


 空中を見やると、そこには亀型魔物……否。


「現れましたね、魔族……カメマン」


 魔族。この世界での立ち位置はわからないが、ガロウ同様、人間に敵対する種族だ。

 カメマンは私を憎々しげににらみつける。


「貴様のせいで計画があわやおじゃんになるところ【だった】ぞぉ!」


 ……だった。

 なるほど。やつの闘気オーラを見ればわかるが、精神的な余裕が感じられる。


 つまりやつの言うところの計画は、完了してると考えるのが筋だろう。


「いでよ、巨大ブラックウーズ!」


 カメマンがそう叫ぶと……。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


「み、湖の水が盛り上がっていくっす!」

「わ、で、でっかい! なにあれぇ……!?」


 湖のヘドロが噴き出し、一体の巨人を作り上げる。

 体はヘドロでできている。目や鼻、耳はなく、口だけがあった。


 身長は10……いや、15メートルほどだろうか。

 我々の10倍くらいのお大きさである。


「ふぇふぇ! こいつはなぁ、水の大精霊に長い時間をかけ、ブラックウーズを飲み込ませて作った巨大ブラックウーズよぉ!」

【そんな! こ、このバケモノが……大精霊さまだってぇ!?】


 精霊ちゃんが絶望の表情を浮かべる。


【大精霊様が……こんな……バケモノになっちゃった……】

「ブラックウーズよぉ! そこのゴミ虫どもをぶち殺せぇ!」


 巨大ブラックウーズはカメマンの命令に従い、我々めがけて、踏みつけ攻撃を行ってきた。

 私はワンタ君、トイプちゃんを抱きかかえてその場から跳躍し、攻撃を回避。


 バーマンは大剣を手に持って飛び上がり、ブラックウーズの腕を駆け上っていく。


「烈火の太刀! 炎月斬!」


 バーマンが回転しながら巨大ブラックウーズの首をはねようとする。


【だめぇ……! 大精霊さまを殺さないでぇ……!】


 バーマンの刃がビタッ……! とブラックウーズの首の前で止まる。


「くっ……!」

「バカがぁ! 死ねぇ!」


 巨大ブラックウーズが、その巨大な手でバーマンを払いのける。

 バシッ!


「ぐあぁあああああああああああああああああああ!」


 吹き飛んでいくバーマンを、私が空中で受けとめた。

 一度兵士たちをおろし、再び跳躍していたのだ。


「大丈夫ですか、バーマン」

「先生……げほっ! だ、大丈夫です……」


 ブラックウーズの攻撃を受けて骨が何本かいってるのが、呼吸、筋肉のけいれん具合からわかった。

 私は着地し、バーマンをおろす。


「あなたは内力系活気で、自分の治療に専念なさい」

「げほっ! で、でも……先生。一人じゃ無理です……あ、アタシも……」

「大丈夫です」


 これは強がりでもなんでもない。

 私には、この状況でも怯えも焦りもなかった。


 そんな私の様子が気に入らないのか、カメマンが苛立ちげに言う。


「この巨人はブラックウーズをたべ、体を変貌させた大精霊そのものだ! 貴様の剣で傷つければ、大精霊が死んでしまうかもしれんぞぉ!」

「ひ、卑怯者ぉ!」

「大精霊さんをかえせー!」


 ワンタくんたちが怒るのも当然だ。

 私も……カメマンの卑劣な行いには、少々、腹が立っている。


 だが、怒らない。

 怒ったところで敵が有利になるだけだ。


 私は呼吸を整える。

 闘気オーラの基本は呼吸。


 自然界にみちるエネルギーを、特殊な呼吸で取りこみ、体内で燃やして爆発的なエネルギーに変える。


「来なさい」

「ふみつぶせぇ……!」


 がくんっ、と巨人が膝をつく。


「なっ!? あ、足がない、だとぉお!?」


 私は【背後】を振り返る。

 巨人は両足を失い両手を地面に付けていた。


「け、剣神さまが湖の向こうにいるっす!?」

「いつのまに!?」


 ふむ。ワンタくんたちはまだ見えていないようだ。

 一方バーマンは目を輝かせながら言う。


「先生は今、極光剣、紫の型、疾風迅雷で速度を強化してたんだ。超高速で踏み込み、一撃で両足を切り飛ばしてたんだ! なんて早業! さすが先生だぜ!」


 私が木刀を正眼に構える。


「く! だ、だがブラックウーズは再生能力持ちだぁ! 足だってすぐに再生してみせる!」


 ボコボコ……! と切断面から黒い泥があふれ出る。

 だが、片足だけしか再生していない。


「ば、バカな!? 片足しか再生していないだと!?」

「やはり、ですか」


 私の手には、黒いヘドロが握られている。


「なんだそれはぁ!?」

「巨人の足に埋め込まれていた、ブラックウーズですよ」


 あの巨人は、ブラックウーズ(の細胞)を取りこみ、巨大化した大精霊さんだ。

 今の大精霊さんは、ブラックウーズ細胞のせいで暴走してるに過ぎない。また、ブラックウーズ細胞があると再生してしまう。


「だから、私は片足を切り飛ばした際、ブラックウーズ細胞を摘出したのです」


 衝気を込めると、簡単にブラックウーズははじきとんだ。


「あ、あり得ない! ブラックウーズ細胞と、精霊の細胞は完全に融合していたのだぞぉ!? 体の組織、血、そのすべてに完全に!」

「? そんなのわかってますよ。だから、異物だけを見分けて、摘出したんですが?」


 カメマンが絶句している。

 ふむ? 驚くことだろうか。


 地球の外科医だって、体にできたがん細胞を、手術で見事に摘出しているじゃないか。

 やっていることはそれと一緒だ。


「大精霊さん、もう少し待っててください。今、あなたの体に巣くう、病原菌をすべて摘出し、元に戻してあげますからね」

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