139．人外バトル
魔神が氷鬼の体を乗っ取って受肉した。
「ふう……」
こき、こき……と魔神が首をならす。
『うげえぇえええええええええ！ おげぇえええええええ！』
魔神が首をならしただけで、古竜は怯えて吐いてしまったようだ。
「いいな。この国は、生命力にあふれている。素晴らしい！ 全員殺して、食らってやろう！」
『オロロロロロロロロロロロ！』
「む？ 竜もいるのか。竜もいいな、実に美味だ。焼いて食うとうまい」
『オロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ』
「ミブロ、眠らせておきなさい」
『はい。手刀！』
びしっ。
どさっ！
……古竜が気絶する。
さて、と。
「どけ、人間」
「どきません」
「そうか……ならば……死ね！」
魔神が一瞬でこちらまで距離を詰めてくる。
私は闘気で体、そして木刀を強化し、防御する。
ズガンッ……！
私は背後に向かって吹っ飛ばされる。
すさまじい勢いでふっとんでいき、この王都の外壁へと激突する。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン！
「あれくさんだぁさん！」
そばにはミブロたちがいた。
どうやら私は相手のケリ一発で、王城から外壁までぶっ飛ばされてしまったようだ。
「はっ！ ここはどこ？ わたしはだれ……？」
「古竜！ 何寝ぼけてるんだ！」
べしっ、とミブロが古竜の頭をたたく。
「はっ！ な、なんでおっさんが！？」
「敵の蹴りをうけて、ここまで飛ばされてきたのだ」
「はぁ！？ めっちゃ距離あるじゃん！？」
「ああ、つまり……それほどまでのパワーということだ」
「オロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ」
……古竜が怯えて吐いている。
なんとも情けない姿だが……情けなさで言えば私も彼女とどっこいどっこいだ。
「あれくさんだぁさん……」
ミブロに、ドワーフたちに、不安な表情をさせてしまった。
剣士の恥だ。
「どうした？ もう終わりか？」
頭上に魔神がいる。
空中に立っていた。闘気使いならあれくらいできる。
今の蹴りでわかった。
「「なかなかの、闘気の腕前だな（ですね）」」
私と魔神の声が重なる。
「おわりだぁ……人外と同格があいてってぇ……もう勝てないよぉ……みなごろしだぁ……オロロロロ……」
「安心してください、古竜」
「ふぇえ……？」
「私が守りますよ、みんなを」
「お、おっさん……」
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