138.魔神復活
私が少し闘気を解放しただけで、氷鬼は吐いて倒れてしまった。
『やったか!?』
ふむ……古竜はどうやら、これで戦いが終わりだと思ってるようだ。
「まだまだですね」
『なに? どーゆーこったよ、おっさん?』
「まだ氷鬼は奥の手を残してるようです。心の余裕が見て取れます」
『いや心なんて見えないんだけど……』
「闘気を見ればわかりますが」
『剣士にしか通じない概念で語らないで欲しいんですけど!?』
氷鬼がひざをつきながら、顔を上げる。
にぃ……と彼は余裕の笑みを浮かべていた。
「へ、へへ! おまえらぁ! 来るのが一足遅かったようだぜ! 我の分身が魔神の封印を、解いちまったようだ!」
『分身だと!?』
驚く古竜をよそに、ミブロが解説する。
『そうか、本体でドワーフから聞き取りを行い、分身で封印を破壊する算段だったのか』
『え、まずいじゃん! 逃げなくちゃ……!』
古竜が逃げようとしてるのが、目に浮かぶ。
「ミブロ」
『はい!』
ざくっ!
『いってぇえええええええええええええええええええええええ! ケツ刺されたぁああああああああああああああああ!』
ゴロゴロと竜姿の古竜が地べたを転がる。
ミブロが逃げようとする彼女の尻を刀で刺したのだ。
『あれくさんだぁさんから、ドワーフたちを守れと言われてるだろうが。なに任務を放棄してるんだ? 刺すぞ』
『刺されたよ!!!!!!!!!!』
なるほど……どうやら氷鬼はかなり頭が回るようだ。
わざと闘気を出し、自分はここに居るとわかりやすく主張することで、分身が魔神の封印を解く時間を稼いでいたわけか。
「ひゃはは! 魔神を解放し、その力を取りこめばおまえらなんて瞬殺だぞ瞬殺! ゲボォオオオオオオオオオオオオ!」
『氷鬼が蒸発した!? なんで!?』
……おやおや。
「どうやら、魔神のご登場のようですよ」
『どういう……?』
頭上を見上げる。
『何か居るのか……?』
「ええ、降りてきます」
ずん!
ばきぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!
城の天井を破壊し、そいつは現れた。
長く白い髪の、筋骨隆々の男。
上半身は裸で、下半身はだぼっとしたズボンをはいてる。
鍛えられた肉体からは、武の化身という言葉が想起させられた。
「ふむ……なるほど。良い闘気をしてるな、人間」
『おげぇええええええええええええええええええええええ!』
……頭のなかで、古竜がはいてる音がした。
『むりむりむりぃいいいいいいいいいいいいいいいいい! しんじゃううぅうううううううううううううううう!』
やれやれ、氷鬼と同じリアクションを取ってるじゃないですか……。
『うぷ……ぼくも、立ってるのがやっとです。魔神を直接見たわけでもないのに、すさまじいプレッシャーを感じております……』
ミブロも古竜も、魔神に圧倒されてるようだ。
「あなたが魔神ですね」
「然り」
「氷鬼の分身はどうなさったのです?」
「はは、食ってやったわ」
なるほど……。
「では、本体が蒸発したのは?」
「本体も、食ってやった。そして我が受肉したわけだ」
なるほど……理解できない。
『おっさんでも理解できない事象が……ぜえはあ……あるなんて……うぷっ』
古竜はこんな時でもツッコミを忘れないようだ。
指摘者が発動するような気がしたが、体調不良のときは発動しないのだろうか。
まあ、いい。
「古竜は休んでいなさい。どうやらこの敵の目的は、最初から私を殺すことのようです」
なら、対話なんて必要ない。
剣を使い、直ちにその命の灯火をかき消すまで。
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