105.氷鷲、散る
《氷鬼の眷属Side》
……駄目だ。
氷鷲は勝てないと悟った。
ぎゅんっ!
「あー! あいつ逃げてやがる~! へっへーん! へいへいびびってんのかぁ? ぎゃははは!」
古竜がこちらをあおってくるが、無視。
(あのおっさんには勝てない! ここは一端引いて、あのおっさんの脅威を主に伝えるのが最善!)
だが……。
「な、なんだ!? 前に進めない!? どうなっている!?」
氷鷲が全力でその場から退散しようと、翼を動かしてる。
だがその場から一切動けないのだ。
「逃がしませんよ」
おっさんが腰の木刀を抜いて、ぶんっ! とその場で素振りをする。
ガオンッ……!
妙な音とともに……。
ゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「うわわあぁああああああああああああああああああああああああああ!」
ものすごい力で後ろにひっぱられたのだ。
氷鷲は地面にたたきつけられる。
「なんだ!? なにをされたんだ!?」
「なんだ!? なにをしたんだよ!?」
古竜と氷鷲のリアクションがかぶる。
なぜおっさんの味方(一応)である、古竜が驚いてるのかはさておき……。
「空間を斬りました」
「空間を斬った、だと!?」
驚く氷鷲に、おっさんは冷静に説明する。
まるで、できの悪い生徒に教えるかのように。
「空間を斬ると、そこにあった空間が消滅し、離れた相手を引き寄せることができるのです」
「なんだそれは!? 意味がわからんぞ!?」
氷鷲にはおっさんの言ってることが理解できなかった。
……一つ確かなことは、これで飛んで逃げることができなくなった、と言う絶望的な事実のみ。
氷鷲は退路を断たれてしまった。
……もう、あとはこのおっさんに殺されるのを待つだけ。
「う、う……」
「殺生は好かないのです。大人しく……投降なさい」
「投降……するもんか!」
ばさっ! と氷鷲が翼を広げる。
「このばかまた飛んで逃げようとしてやがるぜ! ばっかでーい!」
「バカはあなたですよ、古竜」
「ふぁ!?」
「この方の目を見ればわかるでしょう? 決死の覚悟を決めた者の目です」
そう……氷鷲は死を覚悟し、最後の特攻を仕掛けることにしたのだ。
氷鷲はおっさんに抱きつく。
「そうか! あぶねえぞおっさん! そいつの体は絶対零度! 触れただけで相手を凍らせ、粉々にしてしまう!」
そう……なるはずだった。
だが、おっさんはいくら待っても凍り付くことはない。
「なにぃい!?」
「闘気を燃やし、冷気が体を蝕むのを防いでいるのです」
「そんな……!」
がしっ! とおっさんが氷鷲の肩をつかむ。
そして……ぎゅっ、と握りしめた。
パキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
「氷鷲が砕け散ったぁ!?」
「おや、おや。こんなにもろいとは思っておりませんでしたよ」
……氷鷲の体が砕け散る。
死に際……氷鷲は思った。こいつは……正真正銘の、バケモノだと……。
「わーっはっはぁ! 見たかぁ! これがおれ(が使えてるおっさん)の力だ」
……いや、おまえの力じゃないだろ……とツッコむまもなく、氷鷲は撃破されたのだった。
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