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学園の精霊さまは恋を知る。  作者: 上舘 湊
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精霊さまと不思議な感情

「本心…か」


俺はさっきおじさんに言われた言葉を頭の中で繰り返しながら店が立ち並ぶ繁華街の所を歩いていた。


11月が終わり12月に入った途端、街のお店などの商品は一斉にクリスマス仕様のものへと変わっていった。


クリスマス当日に関しては特に予定も無いし一人暮らしなのでゆっくり過ごす休日位の認識でしかないのだが、少しは気分を味わいたいのでクリスマスっぽいものを毎年勝手に食べている。


「今年もまたクリスマスは1人で過ごすのかな〜」


「おや、私をお忘れですか?」


「うわ!」


俺がボソッと呟くと左の方向からどこからともなく声が返ってきた。


声の方向には今日は出かけているはずの涼風が立っていたので思わず驚きの声を上げてしまった。


「うわとはなんですか、人に向かって失礼な」


「す、すまん。まさか涼風がこんなところに居るとは思っていなかったからつい、な」


「それはそうですよ。だって今日の行先は全く伝えませんでしたし、月城さんだって出かけると教えてくれませんでしたし」


「まあ元々出かける予定なんて無かったし気分で外に出ただけだからな」


今日は1日家に居ると涼風には事前に伝えていた為、涼風からすると『家に居ると言っていた人が何故か街を歩いている』と言う状況なのだ。


それにしても


「なぁ涼風。『私をお忘れ』ってどういう事だ?」


俺はクリスマス1人宣言の後に涼風が言っていた言葉が少し気になったのだ。


「どういう事も何も今年のクリスマスは私と一緒に過ごすつもりだと思っていたので1人では無いですよ」


「一緒に過ごすって約束、いつしたっけ」


「してません。でも今までずっと家で一緒に居ることが多かったですし私と一緒にクリスマスを過ごす事なんて不思議でも無いですよね?」


今まで特に深く考えてはいなかったが確かに今まで俺と涼風は一緒に家で居ることが多かった。と言うか毎日一緒だ。


そんな状況が続いて居たらクリスマスに一緒に過ごすということもなんらおかしいことでは無いだろう。


涼風に恋人が居ないことも知っているし恋人を作る気もさらさらない無いようなのでそう言ったのだろう。


「それとも私とクリスマスを過ごせない訳や用事があるのですが?」


「…いや、用事も無いし理由もないから大丈夫だ」


俺はすごい圧で迫ってくる涼風に押されて、勢いでOKを出してしまった。


× × ×


「それにしても月城さんはどうして今日外出をしていたのですか?」


涼風は今日の用事が後は買い出しだけだという事で俺と涼風は一緒にスーパーまで向かっていた。


「最近おじさんのカフェに行けてなかったからな。たまには顔を出しておかないと行けないなと思って行ってたんだ」


「確かに最近私が月城さんを連れ回し続けていましたから行っていませんでしたね」


「ああ、今度は涼風も連れて来いって言ってたよ」


「それではまた今度時間が空いた時にでも行きましょうか。楽しみです」


涼風はこの間連れていった時に気に入ったのか、カフェに行く予定が出来ただけで喜んでいる。


俺としても涼風がおじさんの店に愛着を持ってくれるのはとても嬉しいのだ。


「月城さんにあのお店に連れて行って貰ったのももう2ヶ月近くも前になるんですね。時間の流れは早いです」


「だな。去年と比べると今年はする事が多くなって余計時間の流れが早かったような気がするな」


今までとは比べ物にならないくらいに早くすぎる時間を感じながら、俺は今の生活が楽しいんだなということを改めて実感した。


七瀬や蒼真達と友人となって遊んだり、様々な学校の事を行ったり、そして涼風と出会って色々新しい事をやってみたりと、今思い返してみると色々あったなと心の中で強く感じた。


「…ほんとに涼風と出会えてよかったよ」


「!…急にどうしたのですか、びっくりしましたよ」


「いや、涼風と出会ってからというものの自分の見る世界が変わったというか、自分の生活自体が全て変わったから感謝の気持ちを伝えないとなと思って」


「…急にそういうことを言われるのは心臓に悪いです」


涼風は少し照れているかのように耳を赤く染めて俺の目線から顔を背けている。


こういう仕草はとても可愛らしいなと思うのである。


そんな涼風を見ておじさんに言われた言葉を何度も思い返し考えると、どうしても涼風への感情が嘘では無いということを本心から証明しているような感じがする。


『完璧な精霊さま』ではなく1人の普通の女の子として涼風に接している俺の特別感を誰にも渡したくは無いという独占欲が心の奥底には少しだけあるのだ。


「?どうかしましたか?」


「いや、なんでもないさ」


俺は隣で不思議そうな顔をしている涼風に笑顔でそう言った。


今はまだこの居心地のよい関係のまま居たいのでこの感情はしまっておくことにした。

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