精霊さまと合流
「…軽率な行動をしてすみませんでした」
「いえ、大丈夫ですが次こそは気をつけてくださいね。まったく、月城さんは本当に油断をしたらすぐこういう事してくるんですから」
俺は涼風に怒られた事を謝罪すると、涼風は照れながらも顔を横に向けて膨れている。
最近自分でも意識せずに出てしまう行動が涼風によって怒られる事が多いので気をつけていかないとなという所ではあるのだが、そんな簡単に直せたら苦労しないのだ。
「…それでは罪滅ぼしとして次はここに行きたいです」
そう言って涼風の指さしている場所を見ると、そこにはコーヒーカップの文字があった。
涼風がコーヒーカップに乗りたいと言ってくる事がかなり意外ではあったが、俺としても特に拒否する理由もない。
俺と涼風はそのままレストランを出てコーヒーカップへと向かった。
× × ×
「…月城さん、どうしましょう」
コーヒーカップの所へと意気揚々と向かった俺達は、その直前にある看板を見て立ち止まっている。
というのもここのコーヒーカップは大きめのサイズで人が多く来る為『4人以上での入場』というのが条件になっていたのだ。
「どうするって言ったってどうしようも無いだろ。俺達は2人なんだから4人以上のコーヒーカップには乗れないだろ」
「それはそうですね、それでは別の場所にしましょうか」
俺が涼風にそう言うと、涼風は諦めたようにコーヒーカップの方向から体の向きを変えた。
少し残念そうにしているので、やっぱり乗りたかったんだなという感情が伺える。
(どうにか出来ないか…)
「あ!要と凛ちゃんじゃ〜ん!!み〜つっけた!!」
どうにかして涼風の機嫌を戻せないかと考えていると、どこからか良く知った声で俺たちの名前を呼ぶ声が聞こえた。
声の方向を見ると見ている方向から七瀬と蒼真が走ってこっちにやってきた。
「七瀬?どうしてお前らがここに居るんだ」
「そりゃあデートに決まってるじゃん要くんよ〜カップルが休日に遊園地に遊びに行くなんて珍しいことでは無いでしょ」
「そう言われるとそうだけどさ」
俺が七瀬と質問をしつつ話していると、涼風が俺の真横に近づいて来た。
「あの、実は如月さんに今日のペアチケットを譲って頂いたんですよ」
「そうなのか?」
「ああ、涼風さんの言った通りだな」
俺は涼風が教えてくれた内容が本当なのかを確かめるように七瀬の横に立っている蒼真を見た。
すると蒼真は少し前に出てきて俺の質問に肯定の返事をした。
「実は涼風さんに要と仲良くなるにはどうすればいいかって相談されてな、それで『遊園地に遊びに行けばどうか』って言ってペアチケットを譲ったんだ」
「あ、あの如月さん…」
「まあ元々俺の伊織は今日ここに来る予定があってチケットを取った後に福引きで当てたチケットだからそんなに遠慮しないでいいぞ」
「あの!如月さん!」
涼風の呼ぶ声に反応せずに話を続ける蒼真に、涼風はあわあわした様子で大きな声を出した。
流石の蒼真もこの声には気がついたらしく、不思議そうな表情を浮かべて涼風の方向を見ながら黙っている。
そして顔を赤く染めながら少し不機嫌に膨れている涼風の様子を見て蒼真は驚きの表情に変わった。
「…まさか涼風さん、要にちゃんと説明しなかったんですか?」
「…直接遊びに誘うのが難しかったので友人に断られたのでという理由を使いました…」
涼風の説明を聞いた蒼真はため息をつきながら頭を抱えた。
どうやら友人に断られたから俺を誘ったという口実にして俺を遊園地に誘ったらしい。
何故そのような遠回りな事をしたのかは謎ではあるが、それより仲良くなりたいと思って色々考えてくれた事が俺にとっては嬉しかったのだ。
「もう2人の事に関しては細かいことは言いませんけどそのままじゃ何にも変わりませんよ」
「はい、ごめんなさい…」
蒼真が涼風を叱っている状況がかなり特殊である為、隣に立ってみていた七瀬も驚愕を隠せていない。
正直俺もその気持ちである。
「ほらほら蒼真、そんなに話ばっかりしてたら折角の遊園地が台無しだよ!そうだ凛ちゃん!一緒に回らない?」
「え?今は如月さんとデートなのでは?」
「大丈夫大丈夫、元々行く予定だったところ制覇してどうしようかって時だったから。ほら」
そう言うと七瀬がカバンからパンフレットを取り出し広げると、そこには複数の場所に丸とチェックがついていた。
恐らく事前に話し合ってどこに行きたいかなどを決めておいてそこを回っていたのだろう。
「というわけで私たちは今からの予定が未定な訳なんです。なので凛ちゃんたちと一緒に回ったらいいんじゃないと思ってね」
「…それでは早速なんですけどいいですか?」
「お!凛ちゃんからのリクエスト!どこに行きたいの?」
七瀬が涼風からのお願いに少し興奮気味で行き先を聞くと、涼風は目の前にあるコーヒーカップを指さした。
「実はあのコーヒーカップ4人以上限定でして、私と月城さんだけでは乗れないので一緒に乗ってくれませんか?」
涼風の考えは、先程は2人で乗れずに断念したコーヒーカップを七瀬と蒼真を追加したら乗れるのではないかという事だった。
確かに規定の4人という人数には届いているのだが、問題はそこではなくまた別のところにあった。
「コーヒーカップに乗るのは賛成なんだけどさ、蒼真って遠心力ダメじゃなかったっけ」
「…頑張るしかない」
蒼真は覚悟を決めたような顔をした。




