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学園の精霊さまは恋を知る。  作者: 上舘 湊
14/24

精霊さまと委員会

「いや〜暑い夏もいよいよ終わりだねぇ〜」


「後はこの調子で気温が下がり続けてくれることを願うだけだな」


猛暑日が連続して訪れた今年の夏もいよいよ終わりに差し掛かり、人々の中にはどこか秋の香りが漂い始めている。


個人的にも暑いのは苦手なので一刻も早く涼しい秋になって欲しいものだが、秋になると花粉が舞い始めるためそこだけが懸念点だ。


「いや〜今年の夏はついに40℃を超えちゃったからね〜ついに大台だよ」


「観測史上最高だってな」


「もう毎年更新してるから別に驚きもしないよ…って冷た!」


「俺特製の熱中症予防氷袋だ。喜べ」


俺は机の上で溶けている七瀬の頭に氷の入った袋を落とすと、七瀬はすごい勢いで飛び上がった。


何故こんなものがあるのかと言うと、暑さにめっぽう弱い俺にとって真夏の暑さ対策は命を守る手段のひとつなので、こうして氷袋を常備しているのである。


俺と七瀬が涼みながら教室で待機していると、教室の前の扉が開き涼風と蒼真が教室内に入ってきた。


「おかえり〜遅かったねぇ〜」


「あの委員会のおっさん話長いんだよ…それに自分で同じこと話してる事に気づいてねぇし」


「環境委員のおじさんと言えば吉岡か、まぁどんまいだな」


「あの先生は少しお話が長くて、内容も同じような事ばかりなので眠たくなって来るんですよね」


俺の席の前で七瀬に抱きつかれている涼風は眠たそうな表情をしていた。


授業中は絶対に寝ないようにしている涼風だが、俺の家に居る時はよくソファに寝転がって眠っている。


涼風曰く「普通は安心する人が居るか自分の家なのでしか寝ないのですが、月城さんのお家は凄く安心して居られるので寝転がると眠ってしまうんですよ」という事らしい。


それ程までに俺の家が落ち着く場所だという認識になっている事はとても嬉しいのだが、同年代の異性の前で無防備な寝顔を晒すという所は少し治してもらいたい所ではある。


「涼風、まだ帰る時間になるまでだいぶあるから少し寝ててもいいぞ?」


「いいえ、大丈夫です…学校で寝るなんて出来ません…」


「もし変な奴を心配してるなら大丈夫だぞ。俺や七瀬はずっとここで見張ってるからな」


「そうですか…?ではお言葉に甘えて少しだけ…」


涼風は七瀬の後ろに置いてあった椅子に座ると、最後まで言葉を言い終わる前に七瀬の肩にもたれかかって眠ってしまった。


その間、七瀬は「凛ちゃん可愛い〜!!」と小さい声で叫びながらスマホのカメラで涼風の寝顔を撮っていたが、涼風は30分後の下校時間まで起きる事は無かった。


× × ×


「凛ちゃんまだ眠たそうだね〜」


七瀬は隣で眠たそうに歩いている涼風の姿を見ながらボソッと呟いた。


実際涼風はさっきから心配になるくらいにフラフラと歩いているし、時々目をウトウトさせている。


この調子で家に1人で帰らそうものなら何かしら大事件が起こりそうな予感がするので、俺と同じマンションで良かったなと心の底から安心しているのだ。


「ほら凛ちゃん!そんなフラフラ歩いてたら転けちゃうからちゃんと目を開けて歩いて!」


「ん、分かりました…頑張ります…」


「…こりゃあダメそうだね。今日の予定は無しにして要はこのまま凛ちゃんを持って帰ってくれる?」


「…持って帰るって…まあ今日は涼風も限界そうだしそうするか。ほら涼風、帰るぞ」


「ん、わかりました月城さん。おうちにかえりましょお…」


「おっと!危ない…」


俺が涼風を見ながら言うと、涼風はふにぁっとした眠たそうな顔で俺の言葉に返答をしてから俺の腕にもたれかかってきた。


俺はもたれかかってきた涼風の体が倒れないように涼風の肩を持って体勢を戻させた。


「はいしっかり歩いて、行くぞ。それじゃあ七瀬、蒼真、また明日」


「はぁ〜いまた明日!」


「気をつけてな〜」


俺は七瀬と蒼真の2人に別れを告げ、今すぐにでも寝落ちしそうな涼風を支えながらマンションに帰って行った。


× × ×


「お〜い、涼風〜もうそろそろ家に帰らないと行けない時間じゃないのか〜?」


俺と涼風はあの後一直線に家に帰り、普段のように俺の家のリビングに着くと一目散にソファにダイブしに行ってそのまま寝てしまった。


その後ゴロゴロして時間を過ごしているうちに現在時刻は夜の8時を回っている。


いつもなら涼風はこの時間くらいにここから3部屋分離れた自分の家に帰って行くのだが、今日はソファでクッションを抱き抱えながら寝たまま全く起きる気配がしない。


「お〜い!涼風〜!明日学校遅刻しても知らないぞ〜!」


俺が声をかけ続けると3回目でようやく重たい瞼を少し持ち上げ、上半身を上げてこちらをぼーっと見つめている。


「月城さんだぁ〜」


涼風はそう言うと目を少し開けた状態で、先程と同じふにぁとした表情のまま俺の腰付近に抱きついてきた。

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