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学園の精霊さまは恋を知る。  作者: 上舘 湊
13/24

精霊さまと下校道

「んで、お昼の時に話した通り明日からは要が凛ちゃんの側に出来るだけ居るって事でOK?」


「はい、そうして貰えるととても助かります」


「これから俺の身が持つかどうかが心配だがな」


ずっと男の影が無かった涼風に急に男と親しげにしている様子が見えたら嫉妬や探りの目で見られ、敵意を向けられる事は容易に想像できる。


朝の行動で一部の男子生徒から警戒されている状態でその光景を見た時に、溜まっていた不満が爆発して涼風に被害が出ないかだけが心配である。


「だ〜いじょうぶだって!涼風さんに近づく他の男共を蹴散らしたらいいだけなんだから!」


「蹴散らしたらダメだろ。そんな事したら即指導室行きでそれこそ守るなんて出来なくなるぞ」


「確かに!」


七瀬は掌の面を上にして、広げた左手に右手の拳をポンッと当てて納得した顔をした。


こいつは勉強に関しては俺や涼風には負けるものの、毎回20位以内には入る程かなり優秀なのだが、全てそっちに持って行ってしまったのか一般的常識等に関してはバカそのものである。


「伊織、要が一般の生徒を蹴散らす程の力だと入院案件になるから流石にまずいぞ…」


「そこまでじゃねぇよバカ、せいぜい保健室レベルだろ」


「月城さん、暴力は些かどうかと思いますが…」


俺と蒼真がそんな会話をしていると俺の横で歩いている涼風が少し怯えた顔をしながら忠告してきた。


「まさか、本当に暴力で解決させる気は無いよ、安心してくれ」


「そ、そうですか。よかった…」


俺が暴力行為を否定すると涼風はほっとしたように胸を撫で下ろした。


涼風の前では涼風に危害が及ぶか余程の事が無い限りは暴力行為はしないと決めているし、何より涼風が怯えるのは避けなければならないと本能に染み付いている。


× × ×


「にしてもまさか凛ちゃんと要が前から面識があったなんてね〜」


「前って言ってもまだ1ヶ月かそれくらいだけどな」


これから涼風と頻繁に交流をする事になるのだから、俺と涼風の関係について七瀬と蒼真に説明をした。


七瀬には「どうりで凛ちゃんが要に懐いていると思ったよ〜」と言われ、蒼真には「まあそりゃそうだよな」と言われた。


なんでこいつらはこんなに観察眼が良いのかと疑問に思ったが、今は細かい説明の手間が省けるので丁度いい。


「いや、1ヶ月でそこまで信頼されてるのが凄いんだけど。あそこまで男嫌いとかの噂が立ってる凛ちゃんが相手っていうのも驚きだけどね。」


「別に男の方を嫌っている訳では無いですよ?ただただあまり話が弾まないので苦手というか、それだけなので」


涼風はあたかも当たり前かのように話しているが、「男嫌いという噂が立っている理由はそれなんじゃないか?」と思ったがつっこむと面倒くさそうなので我慢した。


それからは4人でクレープを食べ歩きしながらゆっくり放課後を過ごし、その日は解散となった。


× × ×


「今日は楽しかったか?」


「今日ですか?」


俺の家でソファに座りながら俺が入れた紅茶を飲んでいる涼風に、俺はそう尋ねると涼風は不思議そうな顔で返答した。


「ああ、七瀬も蒼真も良い奴だがもしかしたら涼風にノリが合わないとか無かったかなと思ってな」


「そういう事でしたか。凄く楽しかったですよ、七瀬さんも如月さんもとてもお優しい方でしたし、如月さんは七瀬さんとお付き合いされているようで私に色目を使う事も無かったですし」


涼風は凄く穏やかな笑みをを浮かべながら話している。


本当に七瀬や蒼真に嫌味なくとても楽しかったのだなということがひしひしと伝わってきて、ふたりの友人としても嬉しい気持ちになった。


「それなら良かった。それと延長線みたいな感じだが明日から俺と行動を共にする事が増えるが、もし嫌になったら遠慮せずに突き飛ばしてくれよ」


「そんな嫌になるなんてないです!」


涼風は俺の言葉をものすごい勢いで否定した。


そこ後しばらくすると、涼風はふと我に返り白い頬を赤色に染めながらソファにうずくまった。


俺はそんな涼風の様子を見てとても愛おしい気持ちになった。


「…うう、あんなにムキになって。恥ずかしい…」


「はは、そんな恥ずかしがること無いだろ。実際俺を嫌う事をあんなに否定してくれるのはとても嬉しかったよ」


俺がうずくまっている涼風を宥めるように頭を撫でると、抱え込んでいるクッションから少し顔を出して俺の方向を見た。


「…月城さん、軽々しく異性の頭を撫でるのは些かよろしくないのではと思いますが」


「す、すまん」


俺は涼風の忠告に従って、涼風の頭に乗っかっていた自分の右手を急いで下ろした。


俺が手を下ろすと涼風は急いでソファから立ち上がり、空っぽのティーカップを持って台所に向かった。


「…うう、恥ずかしい…頭を撫でるのは反則ですよ…」


俺が涼風に対する行動で反省している時に涼風が台所で顔を押さえながらしゃがみこんでいる事を、俺は知る由もなかった。


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