精霊さまとお昼ご飯
「いや〜朝から散々だったね〜」
「ホントだよ、うちの学園もとんでもない奴が居たもんだ」
俺と蒼真、そして七瀬と涼風は現在帰路を共にしている。
というのもそれはお昼休みに遡る。
× × ×
「ほぇ〜いっつもああなんだね〜」
「もううちのクラスでは朝からあの光景を見るのが定番化しつつあるんだよな」
「皆さんの前でお誘いされるのは少し恥ずかしいのでやめて頂きたいのですけどね…」
七瀬と蒼真は珍しく学食に行かず、うちのクラスに来てお昼を弁当を食べている。
「今日のお昼は伊織が作ってくれたんだぜ!」と自慢されたがなんかムカついたので無視を決め込んだ所、直接弁当を見せて自慢しに来たのだ。
後は七瀬によると涼風のメンタルケアを含めた様子の確認をしておきたいのだとも言っていた。
「う〜ん…どうにか出来ないものかね」
「まあ学園での涼風の評価が下がらない限り無理だろうな」
「じゃあ無理だね」
俺が解決案を出すと七瀬はその案を速攻で諦めた。
うちの学園でトップの人気を誇り、性格も良しな精霊さまの評価が下がるなど、考えなくとも不可能ということが分かりきっているからだ。
正直自分でも言っていて「不可能だな」と思ってはいた。
「とりあえず凛ちゃんの評価を落として無くす手は「不可能」という事にして、それ以外になんかある?」
「う〜ん、男を作る…はその相手が死ぬから無理だな」
「そうだな」
「私としても今恋人を作る気にはなれませんね…」
「「う〜ん」」
俺たちは様々な解決案を出したのだが、ことごとく「不可能」といつ結論が出て終了してしまうので頭を抱えていた。
そもそも涼風への誘いを無くす方法があるのか、というところが怪しいところではあるのだ。
「もう凛ちゃん本人を云々じゃなくてその周りを変えたらいいんじゃない?」
「周り?」
「そう。さっきの「凛ちゃんに男を」みたいな感じで」
「さっきも言っていたが涼風は恋人を作るつもりは無いんだぞ?一体どうしろと…」
「だから恋人じゃなくても要が近くに居ればいいじゃん」
「は?」
七瀬はとても理解の出来ない提案をしてきた。
涼風の周りに近づく男はどんな奴であれ周りからの冷たい視線を浴びるし、それに涼風自身も男を近くに置いていいという考えでは無いだろう。
それを踏まえて考えたら俺が涼風の近くに居続けるという提案は些か良案とは言い難いものだ。
「…あのなぁ七瀬、人気のある涼風の周りに居る奴には無条件に嫌味のこもった視線が飛び交うし、俺は別にどうも思わないが涼風自身も良いと言わないだろ。なぁ涼風」
「…えっと、月城さんさえ良ければお願いしたい…です」
…え?
俺は涼風の放った言葉に驚き過ぎて言葉が出なかった。
あの男の誘いには考えもせずに断り、恋人や異性の友人といったものには一切の興味を示して来なかった涼風が俺がそばに居るのをお願いすると言ったのだ。
一般的に考えるとこれは夢や涼風の言い間違え、または俺の聞き間違えだと考えるのが普通だろう。
なので俺はもう一度涼風に聞き直すことにした。
「…涼風、今俺にお願いしたいって言ったか?」
「はい、月城さんは他の男性と比べて下心を持って接して来ませんし、何より月城さんくらい強いのであれば何かあっても守ってくれるのかな〜っと思いまして」
確かに俺は涼風に対して一切の下心を出さずに接してきた。
それは対象となっている涼風の方にも全く伝わらない程に慎重に接してきたので、それが理由で涼風は俺を信用したのだろう。
「…友人兼護衛という訳か、確かにそれなら俺を選ぶのが最適解といった所か」
「まるで正義の騎士様だな!」
「うるさいぞ蒼真、黙ってろ」
「はいは〜い」
蒼真は俺と涼風の会話を聞いてここぞとばかりに茶化してきた。
(ほんとにこいつは…)
ムカつくところはあるが、さっきの騒ぎの時にも俺を守ってくれた所からも仲間想いで、困った時には1番に助けに来るとても良い奴なので憎もうにも憎めないのだ。
「…じゃあ明日からは涼風は俺との行動を増やすと言うことでいいんだな」
「はい、よろしくお願いします」
俺が涼風にそう確認すると、涼風は嬉しそうにニコッと眩しいほどの笑みを浮かべた。
「…これはとんでもない破壊力だな」
俺の隣で座っている蒼真は、涼風の満面の笑みにやられないように両目を瞑って俺の肩を掴みそう言った。
正直俺も今すぐ目を閉じたいのだが、涼風が笑みを浮かべている相手は俺なのでそうする事は出来ない。
なので俺がする事は。
「…涼風、ちょっと教室を見渡してみてくれ」
「教室内をですか?」
そう言うと涼風は不思議そうな顔をしながら鮮やかな空色の目動かし、辺りを見回し始めた。
少しして涼風は辺りを見渡していた目を俺の方向に戻した。
「教室内はどんな様子だった」
「…なんだか皆さんこちらを見て呆けた様な表情をしていました」
「ああ、その通りだな。そして涼風、お前は凄く綺麗なんだから少しは自分の魅力を加味して行動してくれ。そのままだと本当に死人が出るぞ」
「…は、はい。すいません、気をつけます」
涼風は少し照れたような顔をして謝罪した。
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