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TarotGame  作者: 三影純
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第1話 TarotGame

雪降る寒い季節。俺は桜が舞う地に立っていた。


時は遡る事1時間前。

俺、“赤峰徹(あかみねとおる)”はバイトが終わり帰路についていた。

上を見上げると数々の白い雪が舞って落ちていく。

俺はネックウォーマーを口元まで持っていき、白い息を吐いた。


家に着くと妹が「おかえり」と出迎えてくれ、「そういえば手紙来てたよ」なんて言って一通の手紙を俺に差し出す。俺はそれを受け取り、自室へと足を進めた。

部屋に着き、椅子に座って一息つくと先ほどの手紙を手に取った。

「差出人は…書いてないじゃん」

不思議に思いながらも封を切り、中の紙を取り出す。

紙にはこう書いてあった。


赤峰徹様

おめでとうございます。

貴方は第5回TarotGameの参加者に選ばれました。

このゲームの勝者には願いを叶える権利が与えられます。

詳しいゲーム説明はゲームスタート前にお伝えいたします。

ルール説明まで以下の質問に答えてお待ちください。

叶えたい願い

「        」


「なんだこれ…?」

なんとも怪しい手紙だ。勝者には願いを叶える権利という所が特に怪しい。

くだらないなと思い、手紙を机に投げ捨てる。

だが…叶えたい願いとはなんだろうか。俺は願いについて考える。

家族関係、友好関係共に良好。バイトしているからお金にはそんな困っていない。

うーむ、と俺は悩む。

あ、と一つ思いついた。強いて言うなら楽しい時間が欲しいと。

日々同じことの繰り返し。たまには楽しい何かがしたい。

そう思い、俺はシャーペンを取り出し、先ほどの手紙にこう書いていた。


叶えたい願い

「 楽しい時間  」


そこまで書いて、我に返る。

何してんだか…こんなの悪戯に決まっているのに。

俺は席を立ち、扉に向けて足を進めた。

その時、まるでノイズが走ったかのように視界が変わっていく。

一瞬気のせいかと思ったが、周りを見渡すと俺の部屋がどんどん知らない場所へと変化していくのだ。

「な、なんだよこれ」

どんどんと知っている場所は消え、最終的にどこか知らない塔の上のような場所に変化していった。

先ほどまで降っていた雪は消え、眩しいほどの太陽が姿を見せていた。

「ふむ…君の願いは楽しい時間か」

突如聞こえた声にビックリして振り向く。

そこには猫のぬいぐるみが先ほどの手紙を持ち、椅子に座っていた。

「なかなか面白い願いだな」

「しゃ、喋っ…」

驚くことの連続に声が上手く出ない。

「申し送れたな、俺はネム。ゲームマスターの一人だ」

ゲームマスター?このぬいぐるみが?というか動いている…?

「早速ゲーム説明に入りたいのだが…良いだろうか?」

「ま、待ってくれ。ゲームに参加するなんて言ってない!」

「楽しい時間が欲しいのだろう?なら良いではないか」

きっと君はこのゲームを気に入るだろう。と言われ、言葉が詰まる。

「それにこの質問に答えた時点で強制参加だ。辞退は認めない。」

「そんな勝手な…」

「ではゲーム説明に入る」

ネムはそう言い、勝手に話を進めた。

「君にはこのカードを22枚集めてもらう」

そう言われ、渡されたのはタロットカード。

カードには“Ⅸ 隠者”と書いてあった。

「参加者は16名。それぞれカードを奪い合ってもらう」

16名…そんなに参加しているのか。

「ゲーム開始時にカードを渡すことになっている。その隠者のカードは君のカードだ」

「待て、参加者は16名なんだろ?残りのカードはどうすれば手に入るんだ?」

「ゲームの途中でイベントがある。参加するもしないも自由だがそのイベントに勝利すればカードが手に入る」

イベントには参加しなくてもいいのか…ということは勝利したやつから後から奪うというのもアリということだろうか。

「そしてこのゲームの最大の醍醐味は参加者にそれぞれ力を授けていることだ」

「力…?」

「そう、例えば君には“未来を予知する力”を授けている。」

「未来を予知…!?」

「ただ強大な力ほどデメリットもある。君の力は稀に発動するようにしといた」

じゃあ見たいときに見れるわけではないのか…。

「では、そろそろゲームスタートしようではないか」

まぁどうせ拒否権はないわけだし…少し楽しそうだしやってみるか。

「この塔を下りればゲームスタートだ。頑張るがいい」

そう言われ、俺は階段に向かって歩みを進めた。


塔から出ると暖かい風が俺を迎えた。

さっきまで雪が降るほど寒かったのに…。

周りを見渡すと桜の花びらが舞っていた。

「桜…春なのか?」

近くに看板が立っており、「春エリア」と書いてあった。

どうやらエリアごとに季節が分かれているみたいだ。

俺はとりあえず近くの町へと向かった。


町に着くと人が沢山いた。

参加者じゃない人もいるのか…。

そんなことを思いながら足を進めると急に頭に映像が浮かんできた。

俺は色とりどりの花に囲まれていた。

これは…花畑?花畑で俺は誰かと話している。

これが未来を予知する力…?

そう思い、立ち止まる。

誰かと話していたということは参加者かもしれない。

そう思い、俺は花畑を探した。


しばらくすると俺は一面に広がる花畑を見つけた。

その花畑を見渡せる丘の上には一人の入院着を着た男性が立っていた。

入院患者…?

不思議に思い、周りを見渡しても花畑だけで病院など見つからない。

俺が男性に近づくと、男性はそれに気づきニコリと笑ってこちらを見る。

「やぁ、君もこの花畑を見に来たの?」

「あ、あぁ」

「僕は(れい)。君は?」

「徹だ」

「そう、徹…」

しばしの沈黙。すると礼はふふっと困ったように笑って、こう言った。

「ごめん、僕ずっと入院してたからコミュニケーション苦手で…」

「入院してた?」

「そう、今はもう自由なんだ」

でも入院着…と不思議に思う。

「もしかしてだけど…徹はゲームの参加者?」

「え、あぁ、そうだけど…もしかして礼も?」

「うん、僕も参加者なんだ」

礼はそう言いふふっと笑った。

「なんで俺が参加者だって分かったんだ?」

「ん-…勘、かな。なんとなくそうなのかなーって」

「凄いな」

「そんなことないよ」

そんなことより、と礼は言葉を続ける。

「徹は何を願ってゲームに参加したの?」

そう言われ、困ったように笑いながら「楽しい時間」と呟いた。

そうすると礼は目をぱちくりさせ、面白そうに笑った。

「あははっ楽しい時間って…徹はそんなに退屈してたの?」

「そういうわけじゃないけど…他に浮かばなくって」

「ふふふっ徹は面白いね」

「そうか?」

そんなに笑われると照れくさくなってくる…と顔をネックウォーマーで少し隠す。

「あっごめんね、こんなに笑って。僕、姉と幼馴染くらいしかまともに話さないから楽しくって…」

「そうなのか?」

うん、と無邪気に笑う礼を見て、俺はなんか嬉しくなり微笑む。

「礼は何を願ったんだ?」

「僕?僕はね…病気を治したいっていう願いだったんだ」

過去形…?と不思議に思い首を傾げると礼は笑いながらこう言った。

「でも、もうその願いはいいかな。もう叶ったようなもんだし」

「叶った?」

「うん、僕の力は“体の異常を無くす力”。だからこのゲームに参加している内は治ったも同然なんだ。」

「“体の異常を無くす力”…」

「だから僕の今の願いはこのゲームを続けたいかな」

そういって礼は笑う。

「この世界に来て、自由になって、色んなものを見てきたんだ。僕にはどれも楽しくって…この世界を離れたくないと思ったんだ。」

こんな綺麗な花畑ずっと見ていたいよ、と礼は目を細めながら言う。

「そっか…確かに綺麗だもんな」

俺も花畑を眺めながらそう言う。

「だから僕はカード集めなんてどうでもいいんだ。むしろこのゲームが終わって欲しくない」

「礼…」

「ごめんね、徹には退屈だよね、こんな話…」

そんなことない、と俺は言った。

「なら、俺と礼でこのゲームを終わらせないようにしよう」

気が付いたら俺はそう言っていた。

俺の“楽しい時間”なんて願いよりもずっと立派な願いじゃないか。何よりこの花畑を綺麗だと笑う礼をまた病気にさせたくない、俺はそう思った。

「二人でカードを持っていればゲームは終わらないんだ。ずっとこの世界にいよう」

「徹…でも君の願いは…」

「こんな綺麗な花畑があるんだ。この世界で暮らすのも楽しそうだ、俺はそれでいいよ」

そういって笑って見せる。

すると礼はありがとう…と言って泣きそうな顔を見せた。

「徹みたいな参加者がいてくれて嬉しいよ…最初に会えた参加者が徹で良かった」

「な、泣きそうな顔するなよ…」

「うん…ごめん、…ねぇ徹」

「何?」

「僕と…友達になってくれない?」

そう言って礼は不安そうにこちらを見る。

「そんなの良いに決まってるだろ」

俺はそう言って笑う。

すると礼もありがと、と満面の笑みを見せた。


その日は礼とは別のホテルに泊まった。礼と同じホテルは取れなくて、次の日に俺と礼はまた会う約束をした。

ちなみに支払いはゲームの参加者だとしなくていいようになっているらしい。食べ物も無料で貰えると礼が教えてくれた。

次の日、俺は昨日の花畑へと向かった。

礼はもう来ているだろうか。まだここら辺近辺しか行ったことないようだったから二人で冒険したいな。礼はきっと何を見ても面白そうに無邪気に笑うのだろう。

そう思いながら丘を登り、昨日礼と会った場所に辿り着いた。

そこで俺は目を見開いた。

礼が倒れている。血だらけで。

その光景に吐き気を感じたが、口を手で覆いなんとか耐える。

「れ、礼…?」

なんとか声を出してみるが返事はない。

礼は背中に刃物のようなもので何度も刺された跡があり、もう息絶えていた。

息がどんどん荒くなっていく。

でも頭は思っていたよりも冷静で、そうだカードと、手を伸ばした。

カードを集めれば願いは叶う。礼を生き返らすこともできるかもしれない。とカードを探す。

だが、いくら探してもカードは見つからない。

「なんで…どうして…!?」

そこでふと考えが一つよぎった。

まさか…他の参加者が礼を殺してカードを奪って行った…?

ゲーム説明時にカードを集める方法なんて言われてなかった。もし、殺しも良いのだとしたら…!

そこまで考えて俺は震える体を抑え込むように座り込んだ。

俺はなんて最悪なゲームに参加してしまったのだろう…。

礼の亡骸を見ながら俺はそう思った。

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