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知らない間に色々とあるようだ

子供のころに間近で初めて見た騎士の名乗りに、実は憧れていた。

などと口に出して言えるわけもなく。


「アルファルド卿、……―――………目の下にクマがある」

「…!!」


うっすらとだが、疲れてるのだろうか?

傍らの女性は小さく頷いている、アルファルドは驚いてだがすぐに気を取り直すように身を正した。どうやら自覚があるらしい。

そういえば彼は何時、ここに帰ってきたのだろう。


「ちょっと最近忙しくてね、それはそうと―――紹介が遅れたが彼女はメリエ嬢。少し前に王都からここに配属になっている。メリエ、彼がフレイヤ夫人のご子息リゼル殿だ」

「リゼル様、お初にお目に掛かります。ようやくご紹介に預かりました執事見習いのメリエと申します、どうぞよろしくお見知りおき下さい」


騎士団に所属する使用人か何かと思っていたがまさかの執事、に何れはなるということか。

まだ若く、20歳ほどだろうに使用人たちや館全体の様子を見る立場になるというなら随分と優秀な人材なのだろうか。


「初めましてメリエ嬢、リゼル……です、どうぞよろしく?」

「リゼル様、私には気軽にお話になって下さい。それと私の上司はここを束ねる留守組の方々ではございませんので。付きましては一つお伺いしたいことがございますよろしいですか?」


メリエの言葉に一瞬何を言われたのかと驚く、よろしくすると色々と面倒なのではと過ったのを

しっかりと察せられたみたいだ。

アルファルドは面白そうに口元に手を当てていたが何も補足する気はないらしい。留守組とは本館にいる使用人たちの事なのだけはわかった「そ、そうか…」とだけ返事をするとそれを許可と取ったメリエはゆったりとした笑みを浮かべて問いかけてきた。



「本日のお帰りは、何時頃になりますでしょうか?」



予想外の言葉にリゼルは更に困惑をする事になった。


「夕方には帰るかも」「お夕食をご用意しておきますね」という会話が成され

急ぐのでとそそくさとリゼルは二人から逃げるようにその場を離れた。

特に止められる事もなく見送られ、「お気をつけて」とまで言われる。

終始アルファルドは楽し気でメリエもにこやかにしていた。


メリエ嬢という女性は――そしてアルファルドは粗方の事情は把握しているのか、とふと気づく。

幾らか大公邸から離れ木々を抜けて降りた先に街が見えてくる。

街の中の外灯はまだ魔法の明かりが灯っているなか徐々に空が白みはじめている。



「――……考えても仕方ないか、ひとまずは採取の依頼しないとな」


よし、と気を入れ直しフードを目深に被り直せば、止めた足を踏み出し街へと向かう。







足早に去ったリゼルの背を見送った二人はしばし佇んでいた。


「私の顔、疲れてるかな」

「…仮眠をお勧めいたしましたのに、ただ この暗さでよくお分かりになったと思います」

「参ったなぁ」



昨夜遅くに数名の部下たちを連れここに到着したアルファルドは立場的にも激務が続いていた。

あまり睡眠がとれていないのだが眠れず少し気分転換で早朝の散策にメリエが付き合ってくれた先での今回の出来事だった。

しかし人に察せらえるほど疲れている自覚のなかったアルファルドは不意の指摘に大いに動揺してしまった。


―――人の気配のない、東陽館の建物を振り仰ぐ。

本来であれば数名の使用人が朝の支度をしていてもおかしくないというのに、唯一の住人が出かけ誰も居なくなった館は静まり返っている。


「そろそろ戻ろう、何だか少し眠くなってきたよ」

「ではお休みなる前によく眠れるお茶をお入れしましょう。本日はごゆっくりされてよいのでは?」

「それはいいね、ありがたく頂くよ。――…さて、どうするかはすっきりした頭になってから考えるよ」



アルファルドはフレイヤ夫人とその子息の親子がこの領地へと来る道中を共にしていた。

久し振りに見た彼はもう少年から青年へと変わろうとしてた、まだ幼さがあるし、窓から出入りしてるやんちゃぷりも合わさり、見目は随分と成長したがやはり中身はあまり変わっていないように思えて、…何だか気分は親戚のおじさんのような心持だった。


二人は滞在している騎士館へと戻る。

外は徐々に白み始め夜が明けようとしていた。

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