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結末ー聖南塔にて

再UPしました。

まあ、こんなものか。


リゼルはそう隠し部屋から見る隣の様子を見て思っていた。


ユウリス大公はとても体調不良には見えない、以前の初めてあった頃に感じたやつれた感はなかった。

氷の大公、北方の支配者…などなど言われるだけある。その当主の前に引きずり出されている者たちは戦々恐々の様子で、彼らに当主は一言も声を掛けなかった。


騎士の一人が引き出されてい者たちの名と役職、罪状が述べられ、そしてほぼ全員が領内で最も厳しく、魔物発生率が高い南西の砦へ移送されるという。そこで鍛え直されるらしい。


皆一応に絶望感を醸し出していた………。


家中の問題だ、それで十分だろう。解雇して放り出すにしても迷惑でしかないという事らしい。

「監督不行き届き」もあり、重すぎる罰は下されなかった。


職務放棄、横領、窃盗に様々手を添えてしまっていた彼らは当初はそれなりに仕事を全うしていたのだ。ただ6年の間にどんどんと悪化していった。そしてそれらの邸内の事象を全て本来なら監督しなくてはならなかった男が最後に引き出された。


執事長 ニコライ・スタンフォード へ始めてユウリス大公が口を開いた、


「長らく留守にしたが、それもこれも我が邸宅は任せておけると思っていたからに他ならない。信頼していたその結果がこの有様か」


「―――身の程を弁えさせるために行ったのです旦那様。ただ、私が思うよりもずっと…使用人達は不安だったのでしょう。最終的にはこのような結果になった事は私の不徳のいたしますところ。いかようにも罰は受けるつもりでございます。ですが!あの者の扱いを私は間違ったとは思っておりません、我が由緒ある大公家で養育する価値などないのです」


彼はそう大公を前に堂々と言い放っていた。


「……よくぞ言ったな、身の程ならばあの子のが遥かに弁えていた。セルジュ」


隠し部屋にまで冷気を一瞬感じた程に隣の部屋の空気が変わったのが分かる。

「身の程知らずはどちらやら」とアルファルドも苛つく気持ちを抑えられないような口ぶりで呟いている。

当の本人は(やはり初めからフレンドリーに対応しすぎたのか…)とディートリヒ大公子とソフィーリア大公女との初対面を思い出し密かに反省していた。


名を呼ばれた腹心の男が一歩前へ進み出る。

セルジュ・ロハンーーー眼鏡をかけた、ザ・官僚という出で立ちだ。


「以前、招かれていたフォルト卿を覚えておいでかな執事長殿」


「…お子様方の勉学を見ていただく為に我が邸宅に招いた方です」


「彼から申告があったのです、不当な扱いを受けていたと。約2年間の記録をびっしりと記したノートを此方に提供された。もっと早く出せ…! っと失礼、彼が言うには解雇の際に手紙を渡したと言っていましたが―――こちらに届いていない」


「……………、お送りした筈ですがどこぞで郵便事故にあったのやもしれません」


「ええ、どうやら事故で先代大公夫人の元に届いたようだがな? そして調べた結果まともな食事すら与えていなかったそうだ。彼は騎士館を頼り、ただ名乗りはせずにこっそりと仕事を手伝った代わりに賄や騎士館の食堂などを使用していたようですよ、……よくもそのような真似が出来たものだな、恥を知れクズが」


「………っ、……確かに、身不相応と思しき待遇には私が指示致しましたが最低限のことは行うように命じておりました!衣食住ともにでございます。それは侍女長が―――っ」


執事長はそこまでとは思っていなかったのだろう。

衝撃を受けたように先ほどまでの堂々とした居住まいが一気に崩れていた。


「邸宅に侍女長は不在だったはず、まさかそれは下級侍女であったグレータ殿のことかな?どうやら執事長は随分と耄碌しているようだ」


大公の側近であるセルジュがどんな表情をしているかここからではあまり見えないが。

めちゃ蔑みの眼差しを向けているのだろうと安易に想像出来た。



(フォルト卿って……先生か?俺の事そんなに気にしてないと思ったのに)


当初は難色を示していたが少しづつ慣れていき授業の時間が増え、そしてその日の食事は普通に二人分ちゃんとしたものが出されていた「マナー教師ではないですが、何事も実践で覚えるべきでしょう。今も十分ですが」とか言いながら食事を一緒にしてくれていた、最初は使用人たちから意地悪がされたが先生が目ざとく見つけて、嫌味の言葉を担当給仕に延々と告げていたから、しっかりと同じものが配されていたのを思い出す。


丁度病み上がりの11歳~13歳ごろという成長期に被ったのでそれもいい栄養になり無事健康体で成長出来たのだろう。



「お前の気持ちはよく分かった、どうやら随分と毒されていたようだな」


その後も様々に邸宅で行われて横領などをセルジュが執事長へ責め立てたのちに、

ユウリスが片手を上げ、セルジュを下がらせるとそう執事長へと告げる。


「家族と共に西砦だ、場所は離宮。母上ももう到着されているだろう。お前にそこへ部署替えとする」


「西…砦の離宮とはあの廃離宮でございますか!? 周囲には常に魔物どもが徘徊し、冬は殆ど日が照らないと言われるほどの。そこに先代大公夫人を、実の母親をお送りになったというのですかっ」


「そうだ、お前はどうやら私より母に付き従いたいらしかったからな。今回の事でよくよく分かった。いっそその首を刎ね飛ばしてやりたいが。折角だ最期にその身を役立てろ」



「連れていけ」護衛騎士が騎士達へと命じれば、

何やらわめく執事長は抑えられて連れ出された。





「………。凄い大事になっていないか?」


リゼルは隠し部屋から暫し唖然と見た後……呟いたが

それに答える者はおらず「では、一度お部屋にお帰りになりますか?」といつもと変わらずメリエが問うて来た。



その後、大公家一門の勢力図が当主ユウリスによって書き換えられた。

当主が絶大な力で君臨している時は揺るがなかったが「呪い」で弱った所を突かれ、そして彼らもまたボロをだしたのだ。

母親の腰巾着はじめとした者たちは隠居させ、代替わりがこの冬の間に粛々と行われたのだった。

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