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知らないままではいられない

再アップしました。


留守組を拘束した、と教えられた日からリゼルは東陽宮で過ごしていた。


あの日から執事見習いのメリエが主となって東陽宮に人が増えている。

リゼルの生活を尊重してくれて程よく一人にしてくれながらも、食事や風呂の準備や対応そして掃除などを行う者たちを入れているのだ、どの人物も最近この邸宅に入った使用人たちだった。


(高級リゾートホテルに住んでいる気分だな、これ)


6年ぶりの至れり尽くせりは、確かに慣れているが慣れない…そんな気持ちながら甘んじて受けていた。

今後来るだろう面倒から目をそらすように、その日暮らしを満喫していた。

うっかり森番小屋やシアの事を忘れそうになっているが、忘れていない。

この騒動が収まったならば……とは考えていた。

そろそろ傷も治り医療テープは外している。



朝食を終えて、まったりとしていた時間にアルファルドが「やあ」といつもの調子で現れた。

向かい側の席に座り、暖かな茶をメリエが淹れてくれる。


「…忙しいんじゃないか?昨日、夜に帰ってきたって聞いたけど」

「私の仕事は粗方終わっているからね、後は……閣下が裁可される事だ。この後の始末はある程度決まっているからね」


ユウリス大公が昨夜戻っているのはメリエから教えられていた。

母は同行していないと聞いて…少し安堵した。


「閣下が君を同席させるおつもりのようだ」


そのまま拘束した者たちは裁かれ終わるのかと思えば、リゼルも関わらせる気でいるのに驚いた。

事はどうあれ、大公家の内部の問題だ。

自分は、その家の外の人間だとリゼルは思っていた。


「同席、どう罰し対応するのか見ろということか…?」

「どう決するかは知っておくべきだろうとね。同席と言っても、君をあの者たちの前に晒すきはないよ。……すべてが終わってから書面や人伝でも知る機会はあるが、今後の為にも君には必要だろうと思っておられるようだ」

「………俺は」


(母のおまけでしかない……なんて卑屈な言い方だろうか…?)


テーブルに肘をつき顔を伏せる。


カチャカチャと茶器が触れる音だけが流れる時間が過ぎる。

何を思っているのか、メリエもアルファルドも口は開かなかった。

考える時間を与えられているのだ、決定権は俺にあるのだろう……。


「わかった、…直接会いたいとか欠片も思ってないから念のため」

「そのように伝えるよ、ただ侍女長に関しては、ソフィーリア様が対処されるそうだ」

「は、ソフィーは…ええと俺の二つ下だから15歳か」

「あと一週間もすれば王都の使用人たちを連れて到着予定だよ、…侍女長にはそちらのが酷だろうね」

「15歳だろ…?まだ早いんじゃないか、大丈夫なのかそれ」

「閣下がご判断された事だ、…そうだね、たしかに王都に行かれた後も不安定な時期があったが今は随分と落ち着かれていて、しっかりした淑女にお育ちになっているから大丈夫だよ」

「え、心配しかないんだが…!?」


久し振りに懐かしい名を聞いた、大公女ソフィーリア。出会った時は8歳で彼女が王都へ旅立った時は9歳だっただろうか。コロコロとして可愛らしい、少し自信無さげな少女を思い出す。


「ソフィーリア様か、…俺は高熱出てぶっ倒れてたからなー見送りも出来なかった」

「………そうだったね、相当続いたのだろう?熱が」

「ん-、まあね3か月くらい上がったり下がったりしたな。医者は―――原因不明としか、徐々に下がっていたし、死ぬかと思ったな、あれはさすがに!」


笑って言うがあの当時、丁度王命によって王都行きが決まっており。

フレイヤ夫人は子爵夫人となる手続きもあり置いていけなかったのだ、だが高熱のまだ11歳の少年を連れて出るのは危険だ。最も信頼できる侍従1名と侍女2名がよくよくその時は仕えてくれていたらしい。


その後、大公閣下が目に見えて体調を崩したことで大公家は大慌てになったのだ。


あの頃が最も悪い方に回っていた時期でもあった。




「………、君はもっと怒っていいのにね」


ぼそりとアルファルドが呟いた声は誰にも聞き取られることはなかった。

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