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色々と気になる事が多い

冬の精霊宮の周辺には城壁が囲うように建っている。

四つの門とその他にも通用口などが幾つかあるが使用人や出入りの業者が使う西側の門以外はどれも固く鍵が掛けられ時折衛兵が巡回していた。


1日半ぶりに帰宅したリゼルは、何時ものように、鍵が半分壊れている為ちょっとしたコツで開く東裏門にある通用口の扉をゴッと足先で蹴り上げ敷地内へと入った。すでに数年、この手を使っているので慣れたものだった。


誰とも遭遇する事なく、無事に部屋へと入る。ベランダから入ったので窓際でまずは靴を脱ぎ棄て、すっと室内へと入る、窓を閉め、何も変わっていない部屋に安堵した。

荷物や服を床にに無造作に放り投げた。

脱いだ外套が所々焼け焦げているし衣服も所々痛んでいた、新たなものを調達しない。


「…………、―――ただいま」


誰もいないが寝台を背にして絨毯が敷かれた床に直接座り込み、

はーっと息を吐きながら天井を見上げた、


ギルド側の責任者、北端支部支部長補佐アライエの提案をあっさりと頷いて承諾し特に交渉する事もなく、掲示された金額も――大金だった、不満もなくさっさと拠点を後にして帰ってきたのだ。

もう2度と関わる事がないだろうし、特にごねる理由もなかった。


森番小屋は封鎖していると聞いていた、

街中も大して騒ぎになっていなかったので、ギルド側の裏工作…?は成功しているのだろう。


「また森番小屋に行って、それからシアに……待つしかないか。後は………」


後はなんだったか。


「ナイフ全部壊したんだよな…外套や装備、全部買っても―――今回の報酬で十分事足りるか」


いっそこの部屋から出て、街に部屋を借りる事すら出来る額だ、今までも何度か考えていたしいいかもな、などと考えたが、昨日の朝のことを思い出して頭を抱える事になる。


(そうだ、昨夜の約束…いや約束なのか?内緒にするって言った以上帰らなかった理由を考えないと?)


「本館の様子でも見に行くか…?」


騎士団が出て居た、しかも氷の魔法を…大がかりなのを発動していたのだ。

大公ユウリスかその息子のディートリヒ大公子が帰ってきてる………かも?


(それならもっと騒がしいと思うが、東陽宮は変わらず静かなだけなのかもしれない)


直接見に行くべきか、と座り込んでいた体を起こす。

立ち上がる時にふと扉の下に差し込まれている小さな紙に気付いた。


「…あの二人しかいないよな」


目に浮かぶのは騎士と使用人の二人組だった。

二つ折りにされていた紙を開いた、予想していた人物からの置手紙だ。



――――


リゼル様へ


扉の外に呼び鈴を置いておきますので、

お帰りになりましたら、1回だけ振って下さい。


御用向きがある場合は2回振っていただけましたらすぐに伺います。


執事見習いのメリエより


――――


こっそりと扉を開くと近くにワゴンが置いてあった。

その上に青白の陶器で出来た取っ手に銀色の鈴が付いたハンドベルが置いあり、すぐに『魔道具:呼び出しのベル』と呼ばれるものだと気づく。


ベルを振るとこのベルと連動している魔道具を持つ者に知らせが届くのだ。

一般的によく使われているものだが、これは王侯貴族用だろうと意匠凝らした造りになっている。





>>>>>



ふる、とメリエが付ける耳飾りが揺れ、は、として彼女は業務をする手を止める。

揺れたのが1度だけ、ため息交じりの息を吐いたが…これでお帰りになった事は知れたのだと思い直してほっとする。


(無視されたり、鳴らないよりはマシね)


「メリエどうした?」


ここは執事長室、本来であれば執事とその業務に関われるものしか入れない室だが

現在はアルファルド卿を中心とした数名の騎士が出入りしていた。

他の執事補佐や見習いは本来の業務を熟しているため不在だった。


「いえ、小鳥のことが気になりまして」


本来であれば執事長が座るデスクに座っていたアルファルドは重なる書類を1枚づつ確認する作業を止め、

メリエを暫く見詰めてくる、気づいたのだろう。目の奥が笑っている。


「そうか、行かなくていいのか?」


「はい、まだ人なれしていなくて必要以上に構うのは良くないと思っております」


「…………それもそうだが、暫く休憩にしようか」


二人は粗方探し当てた書類を一先ず纏めに入る、全てを厳重な書類箱へと入れこの部屋に設置されている隠し扉の先の金庫へと厳重に保管した。

他の騎士に少し休憩する旨を告げて二人は、廊下へと出た。

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