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第59話 パーティー顔合わせ

 翌日。

 僕たちは食事処にやってきていた。食事処は基本的には冒険者がクエストから帰ってくる夜に開店することが多いのだが、中には昼からやっている店もある。

 そこで僕らは、5人揃って顔を合わせていた。


「えっと、こちらが新しくパーティーに入ることになった、クーシャさんとサロメくん。で、こっちが僕の仲間のアディさんとフェンリルのロウ」


 テーブルを挟んで座る二人を交互に紹介する。

 挨拶を終えた直後、真っ先に言葉を発したのは意外なことにサロメくんだった。昨日は常にボーっとしてる感じだったのに、今は興奮したように身を乗り出していた。


「フェンリル!? なんでフェンリルがこんなところいにいるの?」

「少し前に、雷龍と戦ってたところで偶然出会って……」

「そうなんだ。フェンリルと、戦いたいな」


 サロメくんは背負った細長い太刀に手を伸ばす。

 戦いたいから興奮してたようだ。


「へっ。残念だが俺は無意味な戦いはしない主義でな。ま、気が向いたら訓練を付けてやるよ」

「はぁ、なによ偉そうに言ってるのですわ。本当はフェンリルじゃなくて豚の魔物だから、戦うのは避けたいだけでしょうに」

「てめぇ……!」


 興奮する弟とは対照的に、姉のクーシャさんは冷徹だった。そもそも、ロウがフェンリルだってことを信じていないみたいだ。

 前足をテーブルに乗せて威嚇する。


「なによ? やるの? だったら、弟と戦うと良いですわ」

「俺はお前と戦いたいんだよ」

「へぇ。どうせ上位種も倒したことないですわよね? そんな相手と戦う気はないですわ」

「残念だったな。つい最近、上位種を倒したことあるんだよ。聞いて驚け、俺達が倒したのはクラウケンシュタインだ!!」


 ロウは勝ち誇ったように前足を降ろして、鼻を鳴らす。


「あら。やっぱり豚じゃない。そんな嘘が通じると思っているだなんて滑稽ですわ。私たちは常に上位種のクエストをチェックしてますので、私たちが冒険者になってから一年。一度もクエストはありませんでした」

「だから、クエストとは関係なく倒したんだよ。なあ、アディ! 事実だって言ってやれ」

「ああ。本当だ。彼らは私の妹を救うために、倒してくれたんだ」


 アディさんも倒したことは嘘じゃないと助太刀する。クーシャさんは、アディさんを横目に僕に対してため息を吐いた。


「それにしても、まさか、パーティーメンバーが【裏切り者のアディ】だとは思いませんでしたわ。残りの一人は誰でもいいと思っていましたが、こうなると話は変わってきます」

「……」


 アディさんが裏切ったことは、ギルドでは有名になっているらしい。金で雇われたパーティーは上手く行かないと教訓にまでされてるだとか。


「何も言い返せないのかしら? だとしたら、裏切り者は見捨てて、他の人を探しましょうか。そうだ、そうしましょう」


 パチン。

 クーシャさんは顔の前で手の平を合わせた。

 何も知らないクーシャさんが、言うことも一理あるのは分かる。でも、それ以上に僕はアディさんが噂されるような人間じゃないことを知っていた。


「彼女はそんな人じゃありません。理由を知ればきっと納得してくれるはずです! アディさん……説明してもいいですよね?」

「それは構わないが、理由を言わねば納得しないのであれば、私が自分でするさ」


 アディさんは、僕に柔和に微笑むと何故、【炎の闘士】を裏切るような真似をしたのか話した。


「妹のためとはいえ、パーティーを金で動いたのは事実だ。そこに関しては言い訳をするつもりはない。もし、これでパーティーを組むのを考えたいというのであれば、私は全力でお前達の相手を探して見せる!!」


 アディさんが、自分のせいで駄目になるなら、クーシャさんたちのパーティーは絶対に見つけると言い切った所で――


「どうして、泣いているんだ?」


 前に座るクーシャさんとサロメくんが泣いてることに気が付いたようだ。


「う、ううう。妹の為に……裏切りをなんて分かりますわ。私だって弟の身体がお金で治ると思ったら、同じことしますもの……」

「俺もだよ……姉さん」


 二人は家族だからこそ、アディさんの選択に理解できるようだった。だとしても、話を聞いて泣いてくれるなんて……やっぱり、口は悪いが良い人達のようだ。


「それに――あなたは【占星の騎士団】を追放されたと言っていたけど――本当は、あなたがパーティーの要だったのでしょ?」


 僕がパーティーの要だなんてそんなことは有り得ない。

 だって、【占星の騎士団】に所属していた頃は、使用できる魔法は一種類で2つだけだったのだから……。


「バニス達も才能には溢れてましたから……」

「でも、現にあなたはサロメの斬撃を防いで見せたじゃない」

「あれは……」


 僕が防げたのは魔法の真理を知ったから。それはバニス達から追放を言い渡された後に手に入れた力だった。

 だから、僕がパーティーの要だなんて……。


「ま、いいわ」


 涙を拭ったクーシャさんは、それまで瞳から流した雫が嘘のように表情を切り替える。


「とにかく、この4人でパーティーを組みましょう」

「いや、ちょっと待てよ。俺達のことは話したが、お前らのことは何も聞いてないぞ?」


 僕たちのことは話したが、クーシャさんたちのことは聞いていないと、ロウが不満げに口を開いたのだった。

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