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第58話 新たなパーティー結成

「ユーケットさん。あの姉弟を紹介してくださり、ありとうございます。無事、彼らとパーティーを組むことができました」


 彼女達と分かれた僕は、再びギルドに戻ってきていた。

 時刻は昼過ぎ。

 朝の内に賑わっていたギルドは、少し落ち着きを取り戻しているようだった。まだ、クエストから冒険者たちが帰ってきていないからだろう。

 夕方から夜にかけての小休止といった所か。


 僕は休んでいたユーケットさんに礼を述べる。


「ほんと!? それは良かったよ。彼女達は悪い人じゃないんだけど、容赦なくてさ……」

「そうなんですか。因みにユーケットさんとはどういう関係なんですか?」

「あの二人はね、夜中、仕事帰りに衛兵に絡まれてる私を助けてくれたのよ。普通、貴族と関わりたがらない人が多いから、見て見ぬふりする冒険者ばっかりだったのに」


 衛兵は国を守るのが仕事だ。

 だが、貴族の職として用意された組織は、名ばかりでまともに機能はしていない。むしろ、ユーケットさんが襲われたように、好き放題する衛兵の方が多い。

 立場が高い彼らは、「何しても許される」と思っているらしい。


「それは嬉しいですね」

「うん。そこから仲良くなって、ちょっと話したりするようになったんだ。弟くんは単語でしか喋らないけど、クーシャはお洒落で面白いからね!」


 ユーケットさんの話を聞いて、僕はあの二人とパーティーを組めて良かったと思えた。

 いきなりテストを仕掛けて来たり、一方的な感じがしたけど悪い人達ではなさそうだ。実力も性格も申し分ない。


「私がお願いすることでもないんだけど、クーシャ達のこと、お願いするね」

「勿論です。僕達も迷惑をかけないよう頑張ります!!」





「そうか、無事、パーティーを組めることになったのか」

「はい。ですので、明日、4人そろってギルドに参加の意を伝えに行こうと思います。なんでも、4人揃わないと手続きを受け付けないみたいで……」


 その日の夜。

 僕はロウとアディさんに、パーティーを組むことになった二人について話した。


「そうか……。いきなりテストとは大変だったな。お疲れ様」


 アディさんは言いながら、コトンとテーブルにスープを置いた。

 僕たちがいる場所は、この街で僕が暮らしていた部屋だった。一人用の部屋なので、狭いが生活に必要なモノは揃っている。

 アディさんは材料を市場で買い込み、夕飯を振舞ってくれていた。シーマさんから教わったという料理は、とても美味しい。


「ありがとうございます」


 妹さんを助ける前までのアディさんだったら、僕がこんな目にあったと知ったら、凄く自分を責めただろうが、今の彼女は違う。

 素直に感謝してくれていた。


「それにしても、フェンリルの牙と対等の身体能力って、未だに信じられないぜ? 何者なんだ? そのサロメって男は」

「それが……詳しいことは教えてくれなくて。はっきりしてるのは実力はあるってことだけかな?」

「けどよ。本当にそれでいいのかよ? 【選抜騎士】を目指すのに、そんな正体不明な人間を仲間に迎えるなんてよ」

「それは大丈夫だよ」

「なんで言い切れるんだ?」


 ロウは僕に質問してくる。僕がどんな人でもパーティーを組める理由。そんなの考える必要もなく決まってる。


「ロウとアディさんが一緒にいてくれるから」


 二人が一緒にいてくれれば、それだけで【選抜騎士】になれると思ってる。そりゃ、折角パーティーを組むんだから、皆で仲良くしたいけど、でも、目的だけを達するなら充分達成できると思うんだ。


「随分な期待だな。私は足を引っ張らぬように努力しよう」

「だな。ここまで馬鹿みたいに期待されちゃ、答えたくなるってもんよ」


 僕は二人の言葉に、なんだか恥ずかしくなる。


「そう言えば、アディさんは今日は何してたんですか?」


 僕の問いかけにロウとアディさんは顔を見合わせる。


「なに、大した用事ではない。王の元へ顔を出していたんだ」

「そうだったんですか!?」


 王への接見は普通の人間なら叶わない。しかし、そうか――。アディさんは【占星の騎士団】として、一度、招かれている身だ。


「それで……何の話を?」

「私も【占星の騎士団】に居たのだからな。もし、罰を受けるならば、受けようと思ったのだ」

「アディさんは――」


 アディさんは悪くないと思うのに。

 敗北しそうになったバニス達を見捨てたと本人は言っていたが、すぐに応援を連れて戻っている。冒険者としては正しいことをしているはずだ……。


「なに、そんな顔しないでくれ。結局、私は罰を受けないことになった」

「良かった……」

「それが、良かったと素直に言えるかどうか。帰り際、大臣が気になることを言っていたんだ」

「大臣が?」


 王の隣にいつもいる、髭面の老人を思い出す。

 今日、衛兵たちを罰にかけていた人だ。


「ああ。少しでも見応えのある戦いにしたいから、お前みたいな実績のある人間は必要だと言っていたんだ」

「その言い方……【予選大会】で何か企んでるってことですよね?」

「ああ。一筋縄で勝ち上れることはなさそうだ。私たちも期待に答えるが、残りの二人が腕が必要なのも事実。だから、ユライくんは良い選択をしたと思うぞ?」

「そう言って貰えると、安心します」


 明日、ロウ達があの二人に遭うのが楽しみになってきた。

 なんだか、皆で上手くやっていける気がする。

 僕が期待に胸を膨らませていると、ロウが、「俺、大変なことに気付いちまった」と顔を青褪めさせていた。


「どうしたの?」

「いや、よくよく考えたら、ここにベッドは一つしか置いてないじゃんか? その、ほら、ひょっとして俺って邪魔とか言われないよな?」

「なんだ、そんなことか」


 何事かと思ったら全然大したことのない内容だった。

 一人暮らしだから、ベッドは一つしかないけど、寝る場所なんてどうとでもなる。


「僕は床で寝るよ。アディさんはベッドでも使ってください」

「……いや、私も自分の部屋を借りてるから大丈夫だ。明日の朝、迎えに来よう」

「あ……」

「あ……」


 冷静に考えればそうだ。

 アディさんはこの街の住人なのだから。ここまで一緒に旅をしていたことと、ロウに釣られて一緒の部屋に泊まるのが前提になっていた。


「は、恥ずかしい……」


 なにより、一緒に夜を明かせないことを、少し寂しく感じている自分がいたことを、受け入れらなかった。

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