第52話 メイドさんとの早い再開
52話から次の展開が始まります!!
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「ロウ! 砂浜を走るってこんなに気持ちがいいんだね!」
クルルちゃんの呪いを解除した翌日。これまでの体調不良が嘘のように、クルルちゃんはロウと浅瀬で遊んでいた。
パシャパシャと水しぶきを上げて、笑顔を浮かべる彼女は無邪気な天使みたいだ。
「当たり前だ! 砂浜を走るのは足腰を鍛えるのにも良いんだぜ!!」
クルルちゃんの前で良い格好をしたいのだろう。ロウは4足を使い全力で駆ける。
バシャ!!
あ、転んだ……。
しかも、顔から。
ロウの顔が海水を含んだ泥で汚れる。うわぁ、格好悪い……。
「ははっ! ロウ、酷い顔!」
いつもならば、不機嫌になっているだろうが、クルルちゃんの笑顔に、心は清められているみたいだ。
ロウも釣られて笑顔を浮かべる。
楽しそうな二人を眺めていると、意外な相手が訪れてきた。
「良かった、ここに居ましたか」
「ノゾミさん!?」
黒を基調とした服に、白いエプロンが映える。エミリさんに使えるメイド――ノゾミさんだった。
「貴様!! どうしてここに!?」
真っ先に反応したのは、ノゾミさんと犬猿の仲であるアディさんだった。
「ネメス諸島のどこにいるかまでは、教えていなかったはずだが?」
「おやおや。あなたはラインハート家を随分舐めているみたいですね。この辺り一体の船乗りは、皆、私たちの味方なのですよ?」
「ふん。だとしても、私たちの後を追ってきて何がしたい? まさか、仲間にいれてくれと言い出すつもりではあるまいな?」
ロウとクルルちゃんも、ノゾミさんの存在に気付いたのか、遊ぶのを辞めてこちらを見ていた。
ロウは泥だらけの顔を隠すように俯き、近付こうとしなかった。
二人に手を降るノゾミさん。
「手を振る前に、私の質問に答えたらどうだ?」
「私が使えるのはエミリ様のみです。他の方々に使えようだなんて、微塵も思いませんよ?」
「だったら、なんでここにるんだ?」
「当然、エミリ様からの命令です」
ノゾミさんは迷いのない笑みで言い切ると、腰に付けたポーチから、手紙を取り出し渡してきた。
「エミリ様からです」
「あ、ありがとうございます」
エミリさんから……。
一体、なんだろう?
何か伝え忘れたことでもあるのかな?
手紙を読み始めようとすると、ノゾミさんが意地悪く驚いて見せた。
「おやおや。あなたは自分が使える相手に、手紙を読ませるつもりなのですか? 私だったら差し出された手紙を、エミリ様に読ませるなんて絶対にありえません。そんな気遣いもできないなんて……ユライ様が可哀そうです」
「なに!?」
ノゾミさんの言葉に触発されたのか、アディさんが手紙を奪った。
いや、僕とアディさんは主従関係ではないので、普通に自分で読むんだけどな……。まあ、読まれてマズい内容ではないと思うので、今回は別にいいか。
アディさんは、「コホン」と咳ばらいをして、優しい声色で読み始める。
『ユライ様へ
ここ最近の気候は良く雨が少ないですね。雨が多いと嫌になりますが、少ないと恋しくなる。それはどことなく、夫婦のように思いませんか?』
一度、言葉を止めてアディさんは首を捻った。
「いや、思わないな。冒頭から彼女は何を言っているんだ?」
読んでる最中に、読み手の感想が入り込んできた
……。
手紙を読むなら、内容だけを伝えて欲しいかな。途中で感想を入れられるとこちらとしても内容が頭に入ってこない。
そんな姿をノゾミさんは楽しそうに見守っていた。
『本日、こうして筆を取らして貰ったのは、国が【選抜騎士】を決めるために、【予選大会】を開催すると聞いたからです。予選を突破すれば誰でも【選抜騎士】になれるチャンスがあると知り、ユライ様に伝えたくなりました。是非とも参加したらどうでしょうか?』
【選抜騎士】を決めるための【予選大会】? どういうことだろう? 困惑する僕と違いアディさんは何か察しているようだった。
読んでいる手紙を僕に渡す。
「やはり、実力主義に切り替えてきたか。人々の目を気にする大臣らしい策だな」
「えっと、どういうこと?」
「今回、【占星の騎士団】が選出されたが、実際の戦力は低かった。だったら、実際に戦わせて、一番強いパーティーを任命したほうが良いと考えたのだろう」
「そんな方法を……」
これまでは数年の実績、村人たちの評価等から選出されていた。他国に出しても恥ずかしくない人間を送り出すためだ。
だが、今回は『力』だけを求めるということらしい。
クエストの達成率も何も関係ない。
単純な強さ。
ノゾミさんも手紙の内容を知っていたのか、「まあ、そうですよね。だって、今年選ばれていた【占星の騎士団】は――!」
「そこからは言うな!!」
ノゾミさんの言葉を怒声で遮るアディさん。俯き拳には力が入っているのか、ぶるぶると震える。
「そこからは――ユライくんには知ってほしくないんだ」
アディさんはそう言うが――。
僕は【占星の騎士団】がスパイの手によって崩壊したことを既に知っていた。
「やっぱり、アディさんが隠していたのは、このことだったんだね」
言い聞かせるみたいに、言葉を発した僕に驚き目を見開く。
「その反応、まさか知ってるのか?」
「うん。実はエミリさんから聞いてたんだ。黙っていてごめん」
「そう……か」
アディさんの瞳に力が無くなる。まるで波に身を任せる海月みたいだ。数分、意識の海を放浪していた彼女だが、やがて意を決したように僕を見つめた。
「すまない。ユライくんと二人だけで話をさせて貰えないか?」
「別に構いませんよ?」
ノゾミさんは僕達から離れてロウとクルルちゃんに駆け寄っていた。それだけでも、充分距離が開けたのだが、念を押すようにアディさんは船に乗った。
僕も乗り込み、二人で船を扱いていく。
ザザン。
ザザン。
波の音が子守歌みたいに心地いい。島から離れた場所でアディさんは漕ぐ手を止めた。
「ユライ君が知ってるのは分かった。だが、やはり、私の口から自分で説明したいのだが、いいだろうか?」
「勿論です」
そうすることで、アディさんの気持ちが軽くなるのであれば、僕は何度だって話を聞く。
「良かった。では聞いてくれ――私の懺悔を」
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