第51話 リーダーの死 【追放Side】
手足こそ失ったが、生きていれば充分だ。
もう、冒険者はできないが、俺は頭もいいから、今度は商人でもやるか。
次の目標に心が踊る。
俺が欲しいのは金と女。
手っ取り早く、手に入るのが【選抜騎士】だったから、目指しただけ。それが無理なら次の方法を探すまでだ。
普通の人間はこうは考えられないだろうな。
いつまでも、失ったモノをグジグジと考えてるんだ。
「へっ。やっぱり、人生はこうでないとな!」
「何言ってるのよ、一先ず、アジトに着いたわよ」
プリスが連れてきたのは、【二頭鯨】と呼ばれる場所だった。ここには槌臼と呼ばれる防御力と攻撃力が高い魔物の縄張りだ。
中途半端な冒険者じゃ乗り越えることが出来ないと言われている。俺達も港町に用がある場合は、極力迂回し、近付かないようにしていたんだが……。
「アジト……?」
「そう。取り敢えず私たちは国からはお尋ねモノでしょ? だから、ほとぼりが冷めるまで、ここで隠れてようかなって」
「そ、それは確かに……」
プリスの奴、ちゃんと考えてるんだな。
色恋にしか目がないのかと思っていたよ。
「でも、ここなら人が来ないわよ?」
パサリ。
脱いでいた服を落とした。
「ここでするのか?」
「ええ。それともしたくない?」
「まさか!」
やりてぇに決まってんだろ!!
プリスは、とんと俺の身体を地面に置いた。
あー、もう、なんでもいいや。我慢できねぇ。早く、その綺麗な指で俺に触れてくれ。舌を出して快楽を待つ俺に、
「何度見ても、だらしない顔ですねぇ」
顔を抑えて笑う男が現れた。
紳士然とした言葉遣い。俺はこの声を忘れたことは一度もない。
「オストラ……! なんで、てめぇがここに居るんだ!」
オストラへの問いに答えたのは、プリスだった。
一糸まとわぬ姿で、オストラの細い体に抱き着く。
「まだ分からないの? 最初から、私はあなたを助けに行ったわけじゃないの。オストラに、ここに連れてくるように頼まれたのよ」
「まあ、そういうことです。しかし、本当に上手く行くとは思いませんでした」
良く出来ましたと、ふわふわのプリスの髪を撫でる。
「ねえ、ご褒美はぁ~」
プリスは子犬が飼い主に甘えるように、ケツを降る。
「仕方がありませんねぇ」
細い指がプリスの下腹部をまさぐる。この光景で、プリスがオストラを裏切ったわけじゃないことが、はっきり分かった。
「あ、うん!? 凄い、上手……。指だけでこんなに気持ちいのは、オストラだけよ!」
トロンと瞳が解けている。
余程、気持ちがいいのか、呂律すら怪しくなっていた。
ビクン。
プリスの身体が跳ねる。
全身の力が抜けたのか、ヘナヘナと倒れ込んだ。
くそ!
俺だって手があれば、それくらい出来るんだぞ!!
倒れたプリスの頭を撫で、オストラが言う。
「さて、それじゃあ、仕上げとしましょうか。プリス。彼の隣に立ってください」
「へ? な、なにするの~? もう、あんな気持ち悪い奴の近く行きたくないよ! オストラから離れたくない!!」
「嬉しいことを言ってくれますね。しかし、私がお願いしているんです。将来の夫の頼みを妻は聞けないんですか?」
「ううん。そんなことないじゃない」
こいつら――将来を約束してるのか。
ふざけんなよ。
俺をこんな目に合わせた癖に、自分達だけ幸せになろうだなんて、絶対に許せない!!
プリスが俺の横に立つ。
こうなったら、足でも食い千切ってやろうか。
牙を剥いてプリスの足に齧り付こうとした瞬間――。
ザン。
風の刃がプリスを引き裂いた。
「どう……して?」
ドスン。
プリスの上半身が近くに落ちた。
な、何が起きたんだ?
「さてと。これで邪魔な女も殺せました。後はしぶとい馬鹿だけですね」
「お前……何してるんだ!? プリスを嫁にするんじゃなかったのかよ!」
「あなたねぇ。こんな尻軽で頭の悪い女を嫁にするわけないでしょう? 遊んだら殺すつもりだったんです」
「お前……」
「どうせ殺すなら、あなたを攫って貰おうと利用したんですよ。本当に頭が良いとはこういうことを言うんですよ?」
オストラは、俺の頭を片足で踏みつけ、「ふふふ」と、紳士ぶって笑う。首を振って足を払おうとするが、オストラの力は強く首だけの力だけでは、どかすことができなかった。
つまり、それは逃げられないということだ。
こ、殺される……。
死体になったプリスを見る。オストラは人を殺すことに躊躇いなんて持ってない。
「た、助けてくれ……! 何でも言うこと聞くから!!」
「なにを言ってるんですか。あなたみたいな馬鹿は、どうやっても使い物にはなりませんよ」
ザン。
プリスを殺した時と同じく、俺を魔法で切り裂いた。
「が、っがああ!」
身体が引き裂かれ熱い。
た、助けてくれぇ! ママぁ~。
俺が一体、何したって言うんだよ。
グス、グスン。
痛みに啜り抜く俺に、オストラは笑う。
「バニスさん。死ぬ前に良い事を教えてあげましょうか? 能力がない人間ほど、人を見下すんですよ。生まれ変わったら、自分の立場を理解できる賢さがあるといいですね」
オストラが俺の顔を突き刺した。
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