第50話 脱走 【追放Side】
「おい。こいつとの面会は、誰だろうと禁じられているはずだろ?」
俺がチャンスを待ち焦がれて、何日が経過しただろう。光の入らぬ牢獄では日にちの感覚すらも奪われる。
そんなある日のこと。
いつもは退屈そうな見張りが何やら騒がしかった。
「いいじゃねぇか。あまりにもこの女が可哀そうだからよ、優しい俺が助けてやろうかと思ってな」
見張りが連れてきたのは一人の女だった。肉付きのいい、見る物を誘惑するような身体が惜しげもなく晒されている。
四肢を切り落とされた俺は、自然と女を舐めるように見上げていた。
ああ、最後に女を抱いたのはいつだっけ?
考えただけで、下半身が熱くなる。
【選抜騎士】になり、金も女も自由になる。それこそ、俺を痛めつける見張りである貴族のように……。
これだけの身体だ。
きっと、顔も美人に違いない。俺は女の顔を見て驚愕する。
「プ、プリス!!」
姿を見せたのは、オストラと共に俺を裏切ったプリスだった。
朧気だった意識が、搾られるみたいに、「きゅっ」と、研ぎ澄まされる。
裏切り者が、自分からやってくるなんて、良い度胸じゃないか!!
「おい、こいつも裏切り者だ! スパイであるオストラに付いていった裏切り者だ!」
俺が叫ぶと、プリスを連れてきた見張りの一人が牢の隙間から槍の柄を突き刺した。
「お前、自分が見捨てた女を更に傷付ける気か!! お前が見捨てたせいで、オストラは死に、彼女はリベリオーガに犯されたんだぞ!」
は?
こいつは何を言っているんだ?
リベリオーガに犯された? それは俺だ。
プリスはオストラと一緒に逃げ出したではないか。
大体、オストラ達は死んだと言っていたのは、お前達だろう?
自分達の矛盾点に気付かないのか!?
……そうか。
俺達はこいつらにとって、どうでも良い存在。死のうが生きようがどっちでもいいんだ……。
「いいの! 私はあなたに会えたから……」
プリスは、「ぎゅっ」と自慢の肉体を見張りに押し付ける。だらしなく見張りの頬が緩んだ。
俺は何を見せられてるんだ? 二人はまるで付き合いたての恋人みたいじゃないか……。
「へへへ。それでな。こいつが復讐をしたいって言うんだよ」
「ふ、復讐?」
「ああ、そうだ。自分を捨てた男の前で最愛の男に抱かれたいんだと」
するり。
パサッ。
プリスが纏っていた服が地面に落ちた。俺が何度も抱いたはずの身体は、薄暗い牢獄では輝いて見える。
「あ、ううん!」
見張りの一人が乱暴に胸を掴み、その形を変えさせていく。まるで、自分のモノにするために、プリスを作り変えていくみたいだ。
ふざけんな!
そいつは、今でも俺の女だ!
「あ、ううん。ダメ、激しい!! こんなに気持ちいいの初めて!」
甘い声が牢獄に響く。「初めて」という言葉に、一層、動きが乱暴になる。やがて、漏れる音は声だけじゃなく、粘液が刺激される音が反響し始める。
気付けば俺は、切り落とされた手足で藻掻き、牢に張り付いていた。
「そっちのお兄さんもどう?」
プリスは、最初に相手した見張りだけでなく、もう一人も誘惑した。当然、誘いを断ることはしなかった。
裸の男女が乱れる光景。
膨らむ股間を弄りたくなるが、手足のない俺は、ただ、堪えることしかできなかった。
くそ、くそぉ!!
虚しい。
虚しい。
ガンガンと牢に頭を叩きつけると――、
ギィ。
牢屋の扉が開いた。
驚きに目を見開くと、見張りの二人は意識を失って倒れていた。なら、この扉の鍵はプリスが開けてくれたのか?
「な、なんで?」
「なんでって、見張りを二人も倒すにはこうするしか方法がないじゃないの。目覚める前に逃げ出すわよ」
「プ、プリス……!!」
そうか。
プリスは俺を助けるためにきてくれたのか――オストラではなく俺を選んで。今直ぐにでもプリスに抱き着きたい。
だが、手足のない俺は、抱えられるしかなかった。
満たされぬ興奮を発散するように、プリスの腕の中で腰を動かす。
「楽しみは後に取っておこうよ。今、そんな余裕はないでしょ?」
牢獄を抜けると、プリスが乗ってきたであろう馬に飛び乗る。俺が落ちないように、グルグルと馬車に縄で固定する。
「さ、行くわよ!!」
瞬く間に俺が捕えらえていた牢獄が遠くなっていく。
街の外れに作られた石造りの建築物。
捕らえられた犯罪者の恨みによって、外観までボロボロになっているみたいだ。
「へっ、みたか! やはり、俺は神に見捨てられてなんていない!」
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