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第38話 擬態する龍


「で、隠れた擬態龍を見つける方法はあるのか?」

「それは……。まだ、遠くに行ってないと思うから、コレを使って片っ端から探そうかなと」


【擬態龍】の檻から出た僕は、腰に付けたポーチから、手の平より二回り小さい球体を取り出した。


「なんだよ、それ?」

「これは煙玉って言って、僕が愛用していた道具なんだ」


 これがあったから雷龍から逃げられた。魔法を使えなかった僕は、いつも煙玉などの道具を持ち歩いていたんだ。

 その癖は魔法が使えるようになった今でも続いていた。


「煙……なるほどな。でも、なんでそんなに用意してんだよ。今のお前には必要ないだろ?」

「用意しておくと落ち着くから」


 今の僕は魔法を30枚使えるから、道具が必要になる場面は少ない。でも、ポーチ一杯に道具が詰まってるとなんか安心するんだ。

 言ってみれば、道具が僕にとってのお守り代わりみたいなもの。


「ま、持ってる理由はどうでもいいか。確かに煙玉があれば【擬態龍】を見つけることは出来るか」

「やっぱり、ロウも特性を知ってるんだね」


 擬態をされると、全身が透明になり、姿が消えたかのように匂いも消える。だがそれは、実際にに消えているわけじゃない。

 あくまでも擬態だ。

 匂いは特殊な体液で。

 身体は周囲の模様に合わせて変えているだけ。


「ああ。だから、煙みたいに絶えず動くものへ擬態するのは、僅かに時差が生まれる。その隙に発見できるんだろ? お前、良く知ってるな。戦ったことあるのか?」

「残念ながら、クエストは受けたけどクリアできなかったんだ。次は絶対にクリアするからって、バニスに特性を調べてこいって命令されてたんだよ」


【擬態龍】の討伐を受けた僕たちは、結局、見つけることが出来なかった。僕の勉強不足だとバニスに殴られたっけ。

 そこから、必死に勉強して古い文献で特性が乗っているページを見つけたんだ。


「だから、本当に聞くかは半信半疑だったんだけどね。でも、ロウも知ってるなら間違いはなさそうだ」

「ああ。となると問題はこの辺にいるか、どうかだな」


 後は遠くに逃げていないことを祈るばかりだ。今の僕に出来ることは、片っ端から【魔物園】を調べていくことだけ。

 煙玉を地面に投げ付ける。


 ボフン。

 モクモクモク。


 温泉の湯気みたいな煙がゆっくりと広がっていく。

 顔を上げ周囲を探索しようとした僕たちの前に、


「うわっ!!」


【擬態龍】はいた。中に液体を垂らし固まったビー玉みたいな目で、ただ一点を見つめていた。視線の先に居たのは――ロウだ。


「ちっ。やっぱり、俺を狙ってやがるか!」

「そうだったね!」


 龍種と狼種の仲は悪い。僕とロウが出会ったきっかけも、雷竜に襲われていたから。

「さしずめ、自分の暮らす城に餌が運ばれたと思ったんだろうぜ!」


【擬態龍】は【魔物園】が創造された時から、ずっとここで暮らしていたんだ。他の魔物達と動揺に野性が失われていても不思議ではない。

 自分の家に餌が運ばれた。

 だから、ずっとここに留まっていたんだ。

 

「それは助かったんだけどさ!」


 アーン。


 大きな口を開いた【擬態龍】は、躊躇うことなく俺達を飲み込もうとする。こんな間近にいたのに気付けないなんて、流石は擬態の名を冠する龍だ。

 でも、


「大口開けてるのは見えてるんだよね!!」

「全くだ!!」


 ロウが俊敏な身体を活かして、下から体当たりを繰り出す。ガチィンと、鉄柱が折れたような音が響く。

【擬態龍】の歯と歯がぶつかった音だ。


「へっ。良い音を奏でるじゃねぇかよ」


 ザザっと地面に着地したロウが、不敵に笑う。

 そんなロウの姿を僕は初めて見た気がした。


「珍しいね。ロウが戦闘で手を貸してくれるなんて……」

「まーな。フェンリル種と龍種は仲が悪いだろ? 言うならば、犬猿の仲、竜虎の仲って奴だな」

「……なんだろう。なんかどっちも微妙に惜しい気がするよ」


 フェンリルは犬と呼べるだろうが、龍は猿と呼べない。

 竜はその名の通りだが、虎は猫の仲間。犬ではない。


「こんな時に小さい事を気にしてる場合じゃねぇだろうが。さっさと【選択領域】を開け!」

「分かった!」


 怯んだ隙に僕たちは【擬態龍】から距離を取る。


「へっ。温室育ちの魔物には、痛い一撃だったみたいだな!!」


 魔法を30枚集めた者だけが入れる領域で、ロウが自分の一撃を誇示するように口を開いた。


「もう、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。にしても……【選択領域】は上位種でも発動するんだね」


 魔法の絶対的なルールは、例え龍種だろうとも例外はないようだった。煙の中、呻る姿勢で固まっていた。


「そりゃ、そうだろ。だから、ここからは俺達の番だ。まず、何をするかは分かってるだろ?」

「勿論。手札看破!!」


 飼われていた龍が、魔法を持っている可能性は低いだろうが、油断はできない。瞳に込められた力が、魔物が持つ魔法を暴いていく。

【擬態龍】の頭上に手札は表示されない。


「良かった。やっぱり、魔法は持ってないみたいだ!」

「だな。だからこそ、上位種が人間に飼われてるんだろ」

「それが分かれば、後はこの手札でどう戦うかだよね」


 眼前に浮かぶ6枚の魔法。


泡弾フォームショット】【泡弾フォームショット

【斬撃】【泡弾フォームショット

泡弾フォームショット】【斬撃波】


「やっぱり、偏ってくるよね」


 捕らえられた飼育員さん達を助けるに当たり、強力な魔法を選択していった。今の僕のデッキには、魔法進化に必要な枚数は揃っていない。


「でも、温存できるほどの余裕もなかったし……」


 手札の半数以上が水属性の魔法――【泡弾フォームショット】。これまで、相手にしてきた魔物が、水中を得意とする魔物だったために使用を避けていたのだが、まさか、この場面で一気に揃うとは……。


「選択性って言うのも良いことばかりじゃないな」


 泡弾フォームショットは、対象に当たると泡で相手の力を奪う魔法。


「そして、斬撃系は、エネルギーの刃を生み出して攻撃する、か。威力が高いのは斬撃系なんだけど、龍の鱗に通じるかどうか……」


 龍の鱗は固い。

【斬撃】に【腕力強化《中》】を用いて傷を付けられるかどうか。しかし、僕が持つ【腕力強化】は全て使ってしまった。


「たく、しょうがねーな」


 悩む僕にロウが声を届ける。


「いいか? 俺だったら、今回は枚数が多く選べる方法を用いて様子見するぜ?」

「へ?」


 つまり、このターンは逃げることに専念しろと言いたいのか? でも、確かにロウのいう通りだ。

 無暗に攻撃を仕掛けるよりも、手札が整ってから反撃に応じた方がいい。


「一番、多く選べる方法……!」


 それは下段の三枚を選ぶ方法。

 僕が端から順番に選択していると、


「馬鹿! お前、ルールを忘れたのかよ。同じ魔法は場所に関係なく選べるだろうが!」

「そう言えばそうだった!」


 中々、そんな機会が無くて忘れてた。

 一番、枚数が多いのは【泡弾フォームショット】の4枚だ。

 僕が4枚の魔法を選択すると――。


 キュイン。


 4枚の魔法が光り輝き、一枚の魔法を生み出した。

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