表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/62

第37話 全部自分で話しちゃった

「あぶねぇ!」


【選択領域】を開こうとすると同時に、ロウが体当たりで僕を押した。身体が一歩ズレたお陰で風弾エアーショットは脇を抜ける。


「フェンリルが助けたか。可哀そうに……。良いように利用されちまってよ」

「残念だが、俺は利用なんかされてねぇよ! ユライ、油断すんな!」

「ロウには言われたくないよ!! さっきまで、「良い奴かも!?」なんて言ってたくせに……」

「そ、それは……。そう、フェンリルの余裕ってヤツだ!! いいから、常に手札看破は発動してろよ!」

「分かってるってば!!」


 ロウの言葉に頷き、意識を瞳に集中させる。「ギュン」と視界が鋭く一点に狭まっていく。

 手札看破を発動したことで、男の頭上に魔法が浮かび上がる。

 枚数は三枚。


 斬数は一枚じゃないから、使用する魔法までは見抜けないか……。それにしても、4枚も魔法を持つなんて、かなりの腕が立つ。

 なのに、なんでこんな事件を起こしてるのだろうか? 


 なにより、相手は人間に躊躇ないなく魔法を放てる男。

 さっきは間違いなく僕を殺しにきた。痛めつけられることには慣れてるけど、人から殺意を向けられるのは初めてだ。

 ドクドクと心臓が早まる。


「ユライ、余計なことは考えんなよ? 相手が魔物だろうが人間だろうが、お前が出来ることは限られてんだからな」

「う、うん」


 興奮か恐怖か分からない鼓動が、ロウの言葉で少しだけ落ち着きを取り戻した。

 そうだ。

 魔法の枚数が多くても、ロウから貰った力があれば切り抜けられる。


「ほう。良い面構えだ。だが、次はどうかな? 今度は【脚力強化《中》】で、俺自身が加速し、【斬撃波】を二発繰り出す最速の攻撃だぁ!」


 手札看破などしなくとも、男は自分の持つ魔法を全て教えてくれた。

 相手に手の内をバラすことは愚かなことこの上ないが、きっと自信があるんだ。最速の攻撃を防がれない自信が。


「……」


【脚力強化】

 それは、僕が持つ【腕力強化】と同系統の魔法。身体の下半身に込められる力が倍増し、主に移動スピードが増加する。

 高速で接近されたら厄介だけど――


「ほぉら、行くぞ行くぞ、行くぞぉ!」


 男はゆらゆらと身体を、風になびく布地みたいに揺らす。そうすることで、いつ僕に近付くのか分からなくしているのだろう。

 でも、僕はまだ彼が責めてこないのが分かる。

 だって、頭の上に浮かぶ魔法は一枚も減っていないんだから。


「さーて、どのタイミングで殺そうかなぁ? まだかな、もう行こう――かな?」


 ひゅっと。

 男の頭上に浮かんでいた魔法が一枚消えた。

 男は不意を着いたつもりなのか、言葉の途中で魔法を発動する。どんな魔法か分からなければ、もう少し様子見が必要だけど――。


「【選択領域】!!」


 強化された脚力で一直線に駆ける男。どうやら扱う魔法について嘘は付いていないようだ。


「こいつ……馬鹿だな」


 ロウが馬鹿正直に魔法を教えた男に呆れていた。


「面倒だから、さっさと倒して【擬態龍】を探しに行くぞ」

「うん」


 まだ、解決すべきことはある。こんなところで時間を消費するわけには行かない。僕は表示された手札から一枚を選択する。


「よし!」


 領域を解除すると、男が僕の真正面に現れニヤリと笑う。


「喰らえ!!」


 男が放つのは【斬撃波】。発生タイムが早い範囲技。間合いが短い弱点を【脚力強化】で補う戦法は、確かに効果的だ。

 勿論、自分から相手にバラさなければだけど。


 キィン。


 魔法によって生み出された斬撃が、僕の魔法で弾かれる。

 衝撃を受けた盾から、衝撃波が生み出された。


「ぐ、グハァッ! こ、これは……!?」

「【反射の盾】。防御系で使いどころが難しいんだけど――持ってて良かったよ」


 手に入れてはいたけど、使う機会に恵まれていた魔法が役に立った。【反射の盾】は、魔法で盾を生み出し、受けた衝撃をそのまま放出するカウンター技。


「自分から飛び込んでくるって分かってれば、対応は出来るよね」


 正面から、自分の魔法の威力を受けた男は「ガクン」と膝を付いて地面に倒れた。


「ひゅう~。かっけー」


 ロウが口笛を拭いて手を叩く。


「今回は相手が全部話してくれたから助かっただけだよ。そんなことより、何か拘束できるものを探そう」


 意識を失っているとはいえ、事件と関係をしている人だ。このまま放置するわけにはいかない。

 ロウが近くにあった蔦を千切り僕に渡す。


「ありがと。なんでこんなことをしたのかとか、また後で話を聞かせて貰おう!」


 次は【擬態龍】を探さないと!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] “ユライ、油断すんな!” …前回のラストを見ると…説得力皆無だぜ…エセフェンリルのロウさんよぉ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ