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第19話 裏切りの追放 【追放Side】

◇オストラ視点


「グアアアアア、どういうつもりだ――オストラ!」


 足を斬られたバニスが地べたを這う。まるで、自らの血液に飲み込まれたように状態を起こす。

 もしもこの状況が絵画だとしたら、『地に沈む愚者』と言ったところでしょうか。


「ふふふふ」


 全く。

 この瞬間を私はどれほど待ち望んだことでしょうか?


 哀れな男の断末魔に、紳士な私は律儀に答える。


「どういうつもりと言われましても、最初から計画していたことなので、計画通りと言うしかないのですが?」

「計画通りって何を言ってるんだ! お前は俺の仲間だろう?」

「仲間って、自分が思ってないことを人に押し付けないでくださいよ。願望を押し付ける存在は仲間なんて言わないんですよ?」

「てめぇ――何者だ?」

「そうですねぇ。分かりやすく言えば、隣国の人間(スパイ)ってところですかね?」

「な……、う、嘘だろ!?」


 ここまで言えば流石に馬鹿なバニスでも分かったみたいですね。

 私は自分の国を優勝させるために送り込まれたスパイなのです。国の代表達を大会が始まる前に失墜させる。

 慌て選ばれた二番手のパーティーなら、簡単に倒せますから。


「本当です。私の使命はこの国で一番のパーティーを壊滅させることでした」


 私は与えられた使命を完璧にこなして見せた。この国で一番強いとされるバニスはこの様だ。まあ、一緒に行動していて、この男は襲るるに足りないと気付いたのですが、私個人の判断で計画を止める訳には行きません。

 与えられた使命を全うしてこそのプロのスパイなのです。


「じゃあ、俺が最近調子が悪かったのも――お前の仕業か?」


 残された力を振り絞り問いかけてきますが、残念ながら、


「……それは、関係ないですね」


 私は関係ありません。


 関係しているのは、あなたが追放した男――ユライなのですが、これは言わなくても良い情報ですよね。

 私がスパイとして【占星の騎士団】に所属して、一番厄介だと感じたのはユライの【勘】でした。

 何故か、彼は相手の魔法のタイミングを私が察する前から見抜いていた。それどころか、絶妙なタイミングで矢を放ち魔物たちの動きを抑制する。


 偉そうにしていたのはバニスだが、戦闘で実際に場を支配していたのは、間違いなくユライでした。

 幸いに彼自身が使える魔法は【強化の矢】が二回という弱さ。新たな魔法に目覚める可能性は低いですが、念には念を込めて追放するように仕組ませて貰いました。


「くそぉ! 俺をどうするつもりだ!」


 そんなことを気付きもしない自称天才は、この状況においても傲慢に私に問いかける。ここまで馬鹿だと逆に拍手の一つでも送りたくなりますね。


「そんなの決まってるでしょう。この村と一緒に死んでもらうんですよ。魔物を殺せず村を巻き込んだ雑魚勇者としてね」


 ようやく、自分の置かれている立場に気付いたみたいですね。

 血の気が引いた顔を深々と私に下げた。


「あ、ああああぁ」


 脳が快楽という名の魔法を射出したかのように、気持ちよさに震える。

 はぁ。

 気持ちぃぃぃぃいぃ。


 スパイとして対象に気付かれずに任務を達成した感覚。

 相手の絶望に満ちた表情

 村からか上がる炎も私を称賛しているみたいです。


 実際は大した実力もなく、頭も悪い馬鹿の癖にバニスは、一丁前に悔しさに震えながら、地面に頭を付けていた。

 土を握り食いしばった歯から言葉を漏らす。


「オストラ……。このパーティーのリーダーをお前に譲る。だから、助けてくれないか?」

「……」


 弱い奴ほどパフォーマンスは上手いんですよね。力がないから表面だけつくろう技術を身に着ける。

 私はこうはなりたくないですねぇ。


 ドンっ。


 私はバニスの頭を踏みつけた。

 強い奴は徹底的に強いんだと、勉強のために教えて上げなければ。

 まずは状況に相応しい言葉遣いを教えて上げましょうか。


「オストラさん。あなたに譲ります。助けてください。でしょう?」

「……っ!!」


 屈辱の色が増す。

 プライドを取って死ぬか、命を取るか。

 前者を選べば、まだ格好良く死ねるんでしょうけど――、


「お、オストラさん。コノパーティーのリーダーをあなたに譲ります。だから助けてください」


 本気で言われるがままに言い直しやがった。

 だ、駄目だ。

 わ、笑いを我慢できない。


「ば~か~か、お前は!! 私の目的を聞いてました? 【選抜騎士】のリーダーになるとか興味ないんですよぉ!」


 頭悪すぎだろ!

 こいつ、最後の最後で笑わせてくれんじゃん。


「てめぇ!!」


 怒りに我を忘れて立ち上がろうとするが、脚の筋が斬られているのですから、立てません。


 ズザァ。


 顔から地面に滑り落ちた。血飛沫を上げて倒れた。

 本当、お似合いな姿です。

 この姿が魅せたくて【治癒】を使ってあげたんですから。


「さてと。あなたはどうしますか?」

「え?」


 私たちのやり取りを黙って聞いていたプリス。

 この子も馬鹿ですねぇ。

 自分だけ逃げれば良かったのに。私の正体を知った以上、殺してあげたいのですが、彼女は身体だけは超一流なのですよね。

 あと数回は遊びたいところです。


「この国を――【選抜騎士】の座を捨てて裏切るというのでしたら、生かしてあげます」


 まあ、私が提案しなくても、自分から私を求めるのは分かり切ってますが。

 強い奴に媚びるのがプリスという女。

 使えるもの全てを使って懐に収まろうとする。


「勿論! 私はオストラだけいればいいの!!」


 予想通り私に抱き着いてきました。

 こいつも単純ですね。自分の死が少し伸びただけだというのに。


「では――行きましょうか」


 燃える炎を背に、私は村から逃げ出した。

読んで頂き、ありがとうございます!!

この話で【追放Side】は一段落になります。


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