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第18話 俺以外は皆ゴミ 【追放Side】

 撤退したまでは良かった。

 だが、リベリオーガはその名の通り復讐の鬼だ。仲間を殺した人間たちが逃げることを許さない。

 どこまでも、俺達を殺そうと追ってきた。


 魔物ってこんな怖い生き物だったのか!?

 俺達が一方的に迫害する存在じゃなかったのかよ!


「くそ! どうすればいい!?」


 今は何とか逃げられているが、それも時間の問題。

 魔物たちは必死な俺達を見て楽しんでるだけだ。

 本気を出せば直ぐに追い付くことだろう。


「アディ! アディはどこ行った!?」


 俺はことの発端である女の名前を呼ぶが返事はない。一足先に逃げたアディは近くにすらいないようだ。


 こうなったのは、あいつの責任だというのに、自分だけ逃げやがって。

 あんな奴、このパーティーから追放してやる。

 あの使えなかった馬鹿と同じ目に遭わせてやる。


 だが、一先ずはこの状況を抜け出すのが先だ。


「オストラぁ!! なにか良い手はないか!?」

「良い手……ではないですが、僕たちが助かる方法ならあります」

「それが良い手って言うんだろ。早く教えろ!!」


 この状況で何を勿体付けているんだ。

 思い付いたら直ぐ教えるのがメンバーとしての役目だろ。最後に決定するのは俺なんだから、取り敢えず何でも言えって話だ。


 オストラは、俺の隣に並ぶように加速する。

 荒い吐息に混じり、「良い案」を告げた。


「近くにある村にリベリオーガ達を誘導するんです」

「なに!?」

「そうすれば、人間は沢山います。ですから、弱い村人たちに目を奪われている隙に、私たちは逃げるんです」


 オストラの案にプリスが悲鳴に近いトーンで叫ぶ。


「……それの何処が良い手なの!? オストラ!」


 ちっ。

 ベッドの上なら魅惑的な吐息も、緊迫した状況じゃ、うざってぇな。決めるのは俺なのによ。


「ですから、良い手ではないと……。そんなことをしたら、私たちは【選抜騎士】どころか、罪人になることは間違いないですから」


 危険な魔物を倒して人々を守るのが、俺達に与えられた役割。それを破棄し、守るべき存在を餌に使えば、オストラの言う通り罪に問われるのは間違いない。


 だが――。

 俺達は【選抜騎士】に指名される存在。そこいらの村人と命の価値は――月とスッポンだ。


「だからこそ――こんな所で死ぬわけには行かないんだ」

「え?」


 俺の呟きにプリスが信じられないと目を丸くした。


「まさか――やる気なの? そんなことしたら、今の立場が――」

「そんなの後からどうとでもなる! 村人を襲ってる間にアディを見つけて、あいつを殺せば責任は擦り付けられるだろ!」

「でも――」


 考える余裕はないというのに、プリスは尚も食い下がる。


「だったら! お前が今、この場であいつらの相手をするか? ゴブリン達は殺す前に人間を使って遊ぶっていうもんなぁ! 昔は人間もゴブリンの子を孕んでたみたいだぜ?」


 自分がリベリオーガ達に犯される姿を想像したのか、一気に顔が青褪める。


「いやだ……。それだけは嫌よ……」

「だったら、俺の言うことを聞け!!」


 俺は逃げる方角を村に定めた。

 村まで逃げればいいのなら、全力を出せる。脚の感覚が無くなるほど、死力を尽くして動かす。

 脚を動かすのは生への執念。

 それだけだ。


 なんとか村に着いた俺達を、一人の男が出迎えた。


「おや? あんたらは――ユライさんとこのメンバーじゃないか。少し前に彼は帰ったところですぞ?」


 村長だった。

 既に日は沈んでるというのに、間抜け面を浮かべて歩いていた。

 散歩でもしてたのかよ。

 だったら、今のうちに逃げることをオススメするぜ? まあ、口に出して教えてやらねぇけどな。


「うん? こやつらは――。うわああああ!!」


 村長を無視して通り過ぎる。それからほどなく、悲鳴と血肉が千切られる音が響いた。

 ……。


 よし。

 計画通りだ。


「このまま村を突っ切るぞ!!」


 悲鳴を聞きつけたのか、ボロい母屋から村人たちが顔を覗かせる。

 こいつらはどうせ生きてても、役に立たない人間だ。

 次期、【選抜騎士】となる俺の身代わりになって死ねるなんて光栄なはずなんだ。


 振り向くことなく走る。

 村の出口まであと少し。


 ――その時、横を走っていたオストラが足を止めた。


「おい! なに止まってんだ! 急いでアディを見つけるぞ!」

「……その必要はないですよ?」


 ザンっ。


 オストラが俺の足を切り裂いた。

次の話で一段落になります。

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