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第12話 乗り越えた枚数

「やった! 遂に魔法を30枚手に入れたよ、ロウ!!」

「おお。遂にか! これでお前も【選択領域】を開けるようになるなぁ! ハーハッハ。これもすべて俺のお陰だぁ!!」


 廃墟に獣の高笑いが響く。

 30枚、魔法を集めることが【選択領域】を開く方法だと聞いた僕は、そこから毎日色んな魔物を倒しまくった。

 その努力がようやく報われようとしていた。


「よし、ステータスで確認してみよう!!」



□■□■□■□■□■□■□■□■


【強化の矢】×4

泡弾フォーム・ショット】×4

三連火弾トリプルファイア】×4

爆弾ボム】×4

斬撃スラッシュ】×4

斬撃波ざんげきは】×2

【腕力強化《小》】×3

【治癒《小》】×3

【腕力強化《中》】×2


□■□■□■□■□■□■□■□■



 改めて見ると壮観だった。

 ついこないだまでは一つの魔法を二回しか使えなかったステータスに思えない。


「しっかり、30枚の魔法はあったか? だったら、次は【選択領域】を試してみろぉ!! 魔物を見つけるんだ!」

「分かった!」


 廃墟を歩き回っていると、【爆弾ボム】が手に入る魔物――爆弾スライムが跳ねまわっていた。


「……で、【選択領域】ってどうやって開くの?」

「そんなのは気合に決まってんだろ。いいから、開いてみろ!」

「気合って……」


 ロウはそれ以上、説明するつもりはないみたいだ。気合と言えば力強く吠えるイメージだ。


「【選択領域】!!」


 叫ぶと周囲の景色が暗くなる。

 目の前には6枚の魔法を示すカードが浮かぶ。


「つ、使えた……!!」

「喜ぶのは魔物を倒してからにしろ。ほら、早く魔法を選ぶんだぁ!!」

「う、うん!」


 どうやら、【選択領域】で表示される6枚の魔法はランダムになるみたいだ。つまり、【選択領域】で魔法を確認して、どの魔法を相手に使用するのか決定できるわけか。


「これまでとは魔法の使用勝手が全然違うね……」


 今までは枚数が少なかったから、常に手札に使える魔法が備わっていたことになる。逆に言えば使いたい魔法が最初から使えるってことだもんね。


 デメリット部分が気になる僕に、


「スタートはな。だが、魔法の数が多い方が有利なのは違いないだろぉが!!」


 勢い任せにロウが吠える。


「まあ、そうだけど」


 枚数が多ければ戦略を組み替えたり、魔物の弱点を突くことが出来る。

 選択したのは【泡弾フォームショット】。爆弾スライムは衝撃を与えると爆発する性質持っているんだけど、水の魔法を使用すると不発で倒せるんだ。

 いくら、廃墟とはいえ、倒すたびに爆発させるのは申し訳ないからな。


「よし」


 魔物を倒した僕は一息つく。【選択領域】も使用できるようになったみたいだし、今日は街に帰ろうかな。

 

 帰り道である草原を歩いていると、


「た、助けてください!!」


 オーガに襲われている女性がいた。


「早く助けないと!!」


 オーガは人間の女性が大好物なのだ。

 生きたまま皮を剥ぎ、四肢を削いで食い散らかす習性があるらしい。最近は殆んど被害が出ていないけど、年に数回、不幸に見舞われる人がいる。


「【選択領域】!!」


 全ての動きが止まる。

 動きを持っているのは眼前に浮かぶ六枚の魔法だけ。視線を動かして選択していく。


「……六枚中、四枚が【三連火球トリプルファイア】だ。そんなことあるんだ」

「冷静に考えろ、あるに決まってるだろ! 一日で使える魔法はデッキにセットした30枚だけ。後半は残った魔法が表示されるんだ!」

「あ、そうか」


 廃墟は炎系の魔物が多かったから、【三連火球トリプルファイア】や【爆弾ボム】を使っていなかった。

 だから、残っているんだ。


「ここなら、使っても問題ないでしょ」


 僕は三枚の【三連火球トリプルファイア】選択する。

 狙いをオーガに定めて放った。

 本来、【三連火球トリプルファイア】を使用すると三つの火球が真っ直ぐ飛んでいくのだが、


 ドドドドドドドドドドドド。


 12発の火球がオーガの肉体を焼いた。

 あれ? これって……。


「お、新しい魔法進化を見つけたみたいだな。名付けて【12連火球】ってところか」

「進化っていうか……単純に数が増えただけなんだね」


 だが、三枚を続けて使うよりも連射の隙が少ない。

 それに加えて三枚を個別で使うよりも回数が一回分多くなる。


「結局、使い方次第ってことか」


 ゴブリンに追われていた女性が、ヘタと地面に倒れ込む。


「大丈夫ですか?」

「はい。助かりました……。私は仲間と逸れてしまって……」


 よくよく見れば、ローブすらも高級そうな布で出来ているではないか。真っ白なローブの縁が金色に輝く。


「お、中々の美人じゃないか!」


 チョコチョコと頭の上に移動するロウ。

 確かにロウの言う通り、ローブの下の姿は美女と呼ぶにふさわしい美しさだった。

 ただ、綺麗なだけじゃない。多分、顔のレベルだけだったらプリスも可愛かったんだけど、彼女にはない気品、上品さが漂っていた。


「私……、いつも迷子になってしまうんです」


 目を潤ませる。この顔で瞳を潤ませられたら、それだけで助けた価値があると思ってしまう。


「あなたが助けてくれて、本当に助かりました。ありがとうございます!」


 礼儀正しく手を地面に付いた。


 こんな丁寧に感謝されるのは久しぶりだ。

 バニス達と一緒にいると、感謝を受け取るのはリーダーであるバニスの役目だったもんね……。簡単な人助けは僕に任せて、謝礼だけは受け取っていたっけ。


「この辺は比較的、弱い魔物達が出現しますが……一人では心細いでしょう? 合流するまで僕も探しますよ」

「いいんですか!?」

「勿論。こっちには鼻の利く仲間もいますから」

「……」


 彼女が頭の形に沿うように手足を投げてるロウを見る。


「でも、この子……豚さんですよね? あ、でも豚さんも鼻は良いっていいますもんね」

「誰が豚だぁ! 俺はフェンリルだ!!」

「フェ、フェンリル!?」


 フェンリルが人と行動することに驚いたのか目を見開く。望みの反応にロウが「フン」と鼻を鳴らす。


「嘘……。全然、見えないです」

「お前……助けなきゃ良かったぜ!」

「もう、思ってもないこと言わないでよ、ロウ。彼女の匂いから一緒にいた人たちを探せないかな?」

「そりゃ、探せるさ。だって、俺はフェンリルだからなぁ!」


 見てろよと、地面に降りると、スンスンと鼻を擦りつけて歩いていく。

 その姿は狼よりも豚に近い気がする。

 同じことを彼女も思ったのか、顔を見合わせて笑う。


「ふふふ」

「ふふふ。あ、そうだ。宜しければお名前を聞いてもよろしいですか? 私は、エミリと申します」

「エミリさんだね。僕はユライ。よろしくね」

「おい! 何してんだ。早く付いてこないと置いてくぞ!!」


 顔を上げたロウが叫んだ。

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