第12話 乗り越えた枚数
「やった! 遂に魔法を30枚手に入れたよ、ロウ!!」
「おお。遂にか! これでお前も【選択領域】を開けるようになるなぁ! ハーハッハ。これもすべて俺のお陰だぁ!!」
廃墟に獣の高笑いが響く。
30枚、魔法を集めることが【選択領域】を開く方法だと聞いた僕は、そこから毎日色んな魔物を倒しまくった。
その努力がようやく報われようとしていた。
「よし、ステータスで確認してみよう!!」
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【強化の矢】×4
【泡弾】×4
【三連火弾】×4
【爆弾】×4
【斬撃】×4
【斬撃波】×2
【腕力強化《小》】×3
【治癒《小》】×3
【腕力強化《中》】×2
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改めて見ると壮観だった。
ついこないだまでは一つの魔法を二回しか使えなかったステータスに思えない。
「しっかり、30枚の魔法はあったか? だったら、次は【選択領域】を試してみろぉ!! 魔物を見つけるんだ!」
「分かった!」
廃墟を歩き回っていると、【爆弾】が手に入る魔物――爆弾スライムが跳ねまわっていた。
「……で、【選択領域】ってどうやって開くの?」
「そんなのは気合に決まってんだろ。いいから、開いてみろ!」
「気合って……」
ロウはそれ以上、説明するつもりはないみたいだ。気合と言えば力強く吠えるイメージだ。
「【選択領域】!!」
叫ぶと周囲の景色が暗くなる。
目の前には6枚の魔法を示すカードが浮かぶ。
「つ、使えた……!!」
「喜ぶのは魔物を倒してからにしろ。ほら、早く魔法を選ぶんだぁ!!」
「う、うん!」
どうやら、【選択領域】で表示される6枚の魔法はランダムになるみたいだ。つまり、【選択領域】で魔法を確認して、どの魔法を相手に使用するのか決定できるわけか。
「これまでとは魔法の使用勝手が全然違うね……」
今までは枚数が少なかったから、常に手札に使える魔法が備わっていたことになる。逆に言えば使いたい魔法が最初から使えるってことだもんね。
デメリット部分が気になる僕に、
「スタートはな。だが、魔法の数が多い方が有利なのは違いないだろぉが!!」
勢い任せにロウが吠える。
「まあ、そうだけど」
枚数が多ければ戦略を組み替えたり、魔物の弱点を突くことが出来る。
選択したのは【泡弾】。爆弾スライムは衝撃を与えると爆発する性質持っているんだけど、水の魔法を使用すると不発で倒せるんだ。
いくら、廃墟とはいえ、倒すたびに爆発させるのは申し訳ないからな。
「よし」
魔物を倒した僕は一息つく。【選択領域】も使用できるようになったみたいだし、今日は街に帰ろうかな。
帰り道である草原を歩いていると、
「た、助けてください!!」
オーガに襲われている女性がいた。
「早く助けないと!!」
オーガは人間の女性が大好物なのだ。
生きたまま皮を剥ぎ、四肢を削いで食い散らかす習性があるらしい。最近は殆んど被害が出ていないけど、年に数回、不幸に見舞われる人がいる。
「【選択領域】!!」
全ての動きが止まる。
動きを持っているのは眼前に浮かぶ六枚の魔法だけ。視線を動かして選択していく。
「……六枚中、四枚が【三連火球】だ。そんなことあるんだ」
「冷静に考えろ、あるに決まってるだろ! 一日で使える魔法はデッキにセットした30枚だけ。後半は残った魔法が表示されるんだ!」
「あ、そうか」
廃墟は炎系の魔物が多かったから、【三連火球】や【爆弾】を使っていなかった。
だから、残っているんだ。
「ここなら、使っても問題ないでしょ」
僕は三枚の【三連火球】選択する。
狙いをオーガに定めて放った。
本来、【三連火球】を使用すると三つの火球が真っ直ぐ飛んでいくのだが、
ドドドドドドドドドドドド。
12発の火球がオーガの肉体を焼いた。
あれ? これって……。
「お、新しい魔法進化を見つけたみたいだな。名付けて【12連火球】ってところか」
「進化っていうか……単純に数が増えただけなんだね」
だが、三枚を続けて使うよりも連射の隙が少ない。
それに加えて三枚を個別で使うよりも回数が一回分多くなる。
「結局、使い方次第ってことか」
ゴブリンに追われていた女性が、ヘタと地面に倒れ込む。
「大丈夫ですか?」
「はい。助かりました……。私は仲間と逸れてしまって……」
よくよく見れば、ローブすらも高級そうな布で出来ているではないか。真っ白なローブの縁が金色に輝く。
「お、中々の美人じゃないか!」
チョコチョコと頭の上に移動するロウ。
確かにロウの言う通り、ローブの下の姿は美女と呼ぶにふさわしい美しさだった。
ただ、綺麗なだけじゃない。多分、顔のレベルだけだったらプリスも可愛かったんだけど、彼女にはない気品、上品さが漂っていた。
「私……、いつも迷子になってしまうんです」
目を潤ませる。この顔で瞳を潤ませられたら、それだけで助けた価値があると思ってしまう。
「あなたが助けてくれて、本当に助かりました。ありがとうございます!」
礼儀正しく手を地面に付いた。
こんな丁寧に感謝されるのは久しぶりだ。
バニス達と一緒にいると、感謝を受け取るのはリーダーであるバニスの役目だったもんね……。簡単な人助けは僕に任せて、謝礼だけは受け取っていたっけ。
「この辺は比較的、弱い魔物達が出現しますが……一人では心細いでしょう? 合流するまで僕も探しますよ」
「いいんですか!?」
「勿論。こっちには鼻の利く仲間もいますから」
「……」
彼女が頭の形に沿うように手足を投げてるロウを見る。
「でも、この子……豚さんですよね? あ、でも豚さんも鼻は良いっていいますもんね」
「誰が豚だぁ! 俺はフェンリルだ!!」
「フェ、フェンリル!?」
フェンリルが人と行動することに驚いたのか目を見開く。望みの反応にロウが「フン」と鼻を鳴らす。
「嘘……。全然、見えないです」
「お前……助けなきゃ良かったぜ!」
「もう、思ってもないこと言わないでよ、ロウ。彼女の匂いから一緒にいた人たちを探せないかな?」
「そりゃ、探せるさ。だって、俺はフェンリルだからなぁ!」
見てろよと、地面に降りると、スンスンと鼻を擦りつけて歩いていく。
その姿は狼よりも豚に近い気がする。
同じことを彼女も思ったのか、顔を見合わせて笑う。
「ふふふ」
「ふふふ。あ、そうだ。宜しければお名前を聞いてもよろしいですか? 私は、エミリと申します」
「エミリさんだね。僕はユライ。よろしくね」
「おい! 何してんだ。早く付いてこないと置いてくぞ!!」
顔を上げたロウが叫んだ。
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