第11話 モノで繋ぎ止めたチャンス 【追放Side】
「いてぇぇぇよ! 死んじまう。誰でもいいから、早く助けろぉ! 俺を誰だと思ってるんだぁ!!」
城の医務室。【選抜騎士】の俺が大怪我を負っているというのに、城の人間は誰一人俺を助けようとはしなかった。
隣にいるのは仲間であるプリスだけだった。
心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫?」
「大丈夫なわけあるか! 余計なこという暇があったら、早く俺を治癒しろぉ!」
「そうしたいけど、今日の回数はもう使っちゃったのよ。今、オストラ達が城の人達に頭を下げてるわ」
「ちっ」
本当、使えない奴らだ。
俺がいないと城の人間を言うこと聞かせられないなんて情けない。俺に頼ってるからそうなるんだ。
「にしても、なんで正面から【斬撃波】を喰らうのよ。魔法のタイミング分からなかったの?」
「うるせぇ! そういうのはお前達後衛の仕事だろ? 何で見抜けないんだよ?」
「はぁ? それはあんたが手を出すなって言ったからでしょ! 大体、後衛にばっかり頼るんじゃなくて自分で見抜きなさいよ」
「てめぇ……!!」
俺が怪我を負ったから本性を現わしやがったな、メス豚がぁ!
誰がここまで連れてきてやったと思ってるんだ!!
最後にもう一度、身体を交えたら捨ててやろうか?
喉元まで言葉が出る。
今の俺は痛みで理性という名のストッパーが効かない。思ったことは全て口から出て行っちまう。
だが、俺の言葉を止めたのは、
「剣でチャンスを繋ぎとめるなど、本来、【選抜騎士】がやっていいことではない。王が許していなかったら、儂が止めを刺しているところじゃ」
王の側近である大臣だった。
顔を赤らめ一目で怒っているのが分かる。すっと手を沿えると傷が癒えていく。大臣も治癒魔法が使えたのか……。
「よくも儂に恥を掻かせてくれたなぁ! お前達を【選抜騎士】に推薦したのは儂なんだぞ!? それなのに……!!」
「オストラが勝手にやったことだ。俺は知らないね」
「貴様……!! 【選択騎士】を他の人間に託してもいいのだぞ? そのための最終試験なんだからな!」
「……ちっ」
王が許してるんだから、大臣のお前がとやかく言うなよ。
だが、本音を言うのは面倒だなぁ。
治癒のお陰で少し余裕が出てきた。
「安心しろよ、大臣。あれはな、じつはわざと受けたんだ」
「なに? どういうことだ?」
「普通の奴は最終テストで必死になる。けど、それじゃあ盛り上がらないだろ? だから、わざと情けない姿を見せたんだ。一度は失望された男が大逆転で優勝したら、そりゃあ、盛り上がること間違いなしだ。そのためにあの剣だって用意してたんだからな」
全てが計算通り、手の平の上だとベッドから身体を起こす。
「そうよね、流石はバニス。おかしいと思った」
隣で安堵の息を漏らす尻軽女。
お前はそのまま扱いやすい存在ていてくれよな。
「その言葉……本当だろうな?」
「本当だ。じゃなかったら、火龍の巣から生きて帰ってこれるか? 他のパーティーにそれが出来るか?」
実績があることは大臣も分かってるのだろう。「ぐぬぬ」と言葉を詰まらせる。
そうだ。
それでいい。
一大臣風情が俺に偉そうに説教をするな。
「分かった。お主のことを信じよう。その代わり、二度とこんなふざけた真似をするんじゃないぞ! 次やったわ儂が貴様を殺すからな!!」
「あ~い」
やれるもんならな。
部屋から出ていく背中に小さく呟いた。
◇
嘘に嘘を重ねたバニス。
重ねた嘘が自分に降り注ぐことなど微塵も思っていない。
ここで素直に「魔法を見抜けなかった」と言えば良かったと、後悔することになる。
既に自分は退化していることに、悲しいことに自称最強は気付いていなかった。
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