二人の対立始まる
済みません、なかなか更新出来ず……
6話です!
「ふふ~……♪」
僕の近くでなにやら明るい鼻唄を歌う香奈美だった。そしたら彼女の反対側で、僕の隣にいる幼馴染が手で払うようにして、強い口調で香奈美に言う。
「………駄目よ! ちょっと離れなさいって!!」
「……!」
「咲……??」
「前にも言ったでしょ? 私が彼の一番付き合いの長い幼馴染! だから彼のことを一番よく分かってるのももちろんこの私! そんな私を差し置いて輝憲に近づくなんて100万年早いわ!」
「……」
「だから輝憲の隣を歩いていいのは私だけよ」
そう言いながら咲は自分の腕を僕の左腕へ強引に絡ませる。香奈美は眉間に皺を寄せ、黙って口をツンと尖らす。さっきと打って変わって明らかに機嫌が悪い。
「……」
「さっ、行くわよ輝憲」
「あ、おい咲………?」
と、そしたら次は右側の腕にぐいっと歩いている反対方向に力を受ける。香奈美がぎゅっと僕の右腕を懐へと抱え込んだのだ。
「か、香奈美……!?」
香奈美は必死な顔をする。少し恥ずかしそうだ。ドクンドクンと彼女の鼓動を僕の腕へと伝わってくる。というか腕に色々と柔らかいのが包んでくる……。
「………はっ!! 駄目よ、輝憲! 朝からもう2回も……!/// 離れなさい、この~~!」
「や~だ~~~!!!!」
前へ引っ張る咲、そしてその場から動こうとしない踏ん張る香奈美。二人とも譲らない。特に上半身が横に伸びる……!
「あの~皆さん……」
「なに!?」
「陽花!!」
「そろそろ学校に行かないと遅刻しますよ……?」
そして僕達はクラスになんとか予鈴ギリギリで間に合った。そして席に着いてから、香奈美がじ~~と横からジト目で見てくる。
「……」
「………」
「……どうした?」
「………跡」
「え?」
「ここだと他に別の(史)跡とかある?」
「あ……うん、歴代藩主の墓とか、金毘羅神社とかあるぞ」
そしたら彼女はぱーと目を光らせ、ことのほか嬉しそうだ。
「行く……から、……また連れて行ってね……!」
「うん」
◇◇◇
昼休みになり、食事を終えて、僕は一人席で本を読みふけっていると、ぼやっと肌が視界に入る。それは女子の太ももだった。じっと彼女、香奈美が本の表紙を眺めている。
「どした?」
「本読むの?」
「あぁ、知識になりそうなものを色々とな」
「これは……歴史もの?」
「あぁ、そうだよ。藤沢周次」
「おおー」
少し興奮気味だ。
「藤沢周次! 知ってる、歴史小説の大御所。けど少しマニアックね?」
「歴史好きは斯波斯波ってうるさいからな~。斯波の小説は影響が強くて、それが史実になるから嫌いなんだ。だからフィクションって分かった上で面白い藤沢が良い。あと設定が渋い」
「………」
あり? 香奈美が静かになった。もしかして斯波ファンだったか?
「いや、だからって斯波ファンを嫌っている訳じゃあ……」
「私も読む……!」
「え?」
「私も藤沢……読んでみる……わ」
「お、おう」
「読んだら……その……意見交換……しようね……」
やたら手をもじもじしながら、こっちをチラチラと見る。なにこれ? まあ、けど嫌な気はしないな。
「おう、良い……」
「あーーー!! やっぱりーーっ!!」
廊下側から大きな声がっ、咲だった。
「咲……」
「……!!」
「すぐこいつにチョッカイ出すと思ったわ!! あんたって本当に油断も隙もないん女ね!?」
「咲っ、なにしにここへ!」
「双葉(香)を見張るためよ! ご飯を食べてたら嫌なカンを感じたから」
「………」
「……で、なんの話をしていたの!? 教えなさい!」
「………教える訳ないじゃない。貴女には関係のない話」
「なんですって!?」
「ほ、本の話をしてだけだよ」
「あ~、本って歴史の話ね? よくあんな堅苦しい内容を読めるわね。本はライトなのが良いわ、読みやすくて」
「……ぷ」
「………なに?」
「それじゃあ、テルと本の話で盛り上がったことないでしょ?」
「当たり前じゃない。輝憲は堅い本ばっかり読むから。歴史もの、西洋思想もの、環境問題、経済、科学系……etc」
「……それじゃあ」
ふわっと香奈美の匂いが舞う。
「私との方がテルと気が合いそう」
「あ゛!?」
そこから二人はいがみ合いにらみ合いの口げんかモードになった。僕は急いで止めに走ったが、
「あんたは(テルは)黙って(て!!)なさい!!」
午後の本鈴のチャイムが鳴るまで二人のケンカは続いた。そして休日を終え、次の平日も、そのまた次の日も昼休みになると、咲はクラスに来て、香奈美と口ゲンカをする。
「はあ……」
僕はいまコーヒーを飲みながら、パンの自動販売機の隣にいる。二人のケンカが始まると、堪りかねてそそくさとクラスから逃げて来たのだ。
そしてガタンと販売機の中でモノが落ちる音がする。
「! 陽花」
「あ、輝さん」
今日は少し日射しが強い気がした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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