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香奈美との微妙な距離感

双葉姉妹は咲との関係をやたら気になり……?

5話です

 僕らは片道徒歩5分ほどかかるスーパーまで歩いていく。そしてその間の僕は家を出てからずっと香奈美の視線を感じている。彼女はやたら不服そうだ。


「……あ、あの、輝さん」

「……ん、陽花か…。……どうした?」

「………と、とにかくこれからは色々と楽しんでいきましょう! 私はどんな輝さんでも応援してますから!」

「お、おう………?」


 陽花はなにやら不思議なことを言ってニコッと笑う。そして我々はスーパーに着いた。


「それではこれから買い物してきますね。母から今日の買い出しを頼まれているので」

「おう、分かった」

「行こうか姉さん」

「………うん」


 そうして二人は食材を選びにいくのだが、香奈美の方が姉なのを僕はいま初めて知った。

 そして買い物を終え、買った食材を持って僕と帰るのだが、なんか香奈美がやたら眉間に皺を寄せ、ぷくーと頬を膨らまし、さっきより増して不機嫌になっている気がする。

 どうする術も浮かばない僕なので、しばらく彼女の様子を観察していると、突然彼女が僕の方をキッと見て、


「……もい」

「え?」

「重いの!!」


 そう言って香奈美は荷物を地面に置いて、立ち止まった。


「あっ、ごめんごめん! 気がつかなかった。荷物持っていくよっ」

「もー!! 私達のサポートをしてくれるんだったら、ちゃんと気づいてよ!」

「だからごめんって!」


 そして彼女から僕が荷物を持ち替える時、彼女はぼそっと言う。


「………もう。……どうせ幼馴染には何も言わずにすっと荷物を持ってあげてるんだわっ……」

「へ………なんでそこで咲が出てくるんだ?」


 彼女は気づかれない声で言ったのだろうが、僕は耳が良いからなんとなく聞こえた。そしたら夕焼けの色と同じように彼女はかーと顔を赤く染め上げ、一人でダッと走り去って行ったのであった。


「あ、おいっ……! 荷物………」


 翌日になって登校中に香奈美に会ったが、全然目を合わせてくれなかった。教室に行っても同様で、ずーと読書ばかりして、全然目が合わない。

 僕は昼休みにご飯を食べ、どうしようかと思いながら教室を出たら、陽花と偶然出くわした。


「輝さん……!」

「あ、おい。陽花良いところにっ。ちょっとついて来てくれ!」

「……?」


 そして校内にあるパンの自動販売機まで彼女と行く。


「ほうほう、こんなところに美味しそうなパンが!」

「ここのパンは意外といけるんだぞ~」

「え? そうなんですか!? ではさっそく試してみましょう。……うん、美味しいですっ」


 陽花は明るいから助かる。


「で、輝さん。どうされましたか?」

「あぁ、香奈美の話なんだ」

「姉さんの……」


 彼女はふむと真面目な顔になり、僕の相談を訊いてくれた。


「……なるほど、姉さんの機嫌を直す方法ですか」

「僕はまだ香奈美のことをほとんど知らない。好きなことでも良い。何かないか?」


 そしたら陽花はニヤリと笑い、


「それなら良い考えがありますよ~♪」


◇◇◇


 夕方、ウチのリビングにて。


「香奈美っ!」

「……テル!? な、なに……?」

「ちょっと今から来てくれ……!」

「来てくれ……って、私はまだ陽花を待ってて……!?」

「今日陽花は来ないよ」

「……え!? なんでそれを知ってる……」

「香奈美にここへ来てもらうために、陽花に頼んだんだ」

「~~~」

「さあ、とりあえず来てくれっ」


 そして僕は彼女の手を引っ張って、あるところに連れて行った。それはウチから歩いて約3分ほどにある神社だ。


「ここは……」

「うちの町を守る神社だ」


 そこは周りの住宅地から比べると一際目立つ存在で、たくさん木々に覆われて、知らなければ小さな森に見える。中に入ると、鳥居から荘厳な雰囲気があり、その隣には公園があって子供たちが楽しそうに遊んでいる。


「ここは昔から地元の人に愛されてる神社で、他の地域からもちらほら来ているらしい」

「……」

「ほらこの鳥居見てみろっ。文政12年に建てたんだと。それに確か他にも江戸時代に建てた跡があってだな……」

「陽花から聞いたの……?」

「え? あぁ、香奈美もこういう史跡が好きって聞いたから」

「“も”って……、テルもこういうとこ好きなの?」

「あぁ、好きだよ」

「そう……。あんまり周りにそういう人いなかったから、それは嬉しいことね……」

「………」

「……テル」

「ん?」

「また……来ようね」

「あぁ、勿論」


 こうして僕は香奈美と仲直りしたのだった。

 翌日、咲との登校中に、笑顔で手を振る双葉姉妹の姿があった。


「おはようございます、輝さん!」

「おはよう……テル」

「あぁ、おはよう二人とも」


 おお、これは幸先が良い感じだっ。なにか良い日になりそうな予感………ん?

 香奈美が僕の傍を歩く。


「どうした香奈美? なんかあったか?」

「うんん、なんでもない……」


 そう言いながらもトーンが少しいつもより高くなっていた。しかしこの状況に我慢できない女子がいた……。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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