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香奈美の災難

香奈美の仲はいかに!?

3話です!

 公私ともに二人のサポートをする、それってつまり……。


「彼女たちと一緒に行動す……」

「ちょっと待ってください! その話に私は反対です!」


 そう声を高らかに上げて言ったのは意外にもロングヘアの静かな方だった。


「香奈美……っ」

「だっていきなりまだ知らない人から公私に渡って色々と親身にしてもらうだなんて納得できません! 第一その相手がそもそも男子やし………」

「ちょっと香奈美! 折角のご厚意にそんな言い方じゃあ土岐さんに失礼でしょ!?」

「ママッ! こっちだって見知らぬ同年代の男子に近づかれて、その人から唐突に親切にされても怖いだけや!」

「だからその言い方は相手に失礼……」

「まあまあ、確かに年頃の女子高生がこんな訳の分からない男子にいきなりサポートしてもらっても困るのは至極当然な話ね」


 おい、一応あなたの息子なんですけど……。


「でもね香奈美ちゃん、貴女に訊いて欲しいんだけど、ずっと都会に住んでたらその暮らしに慣れて、こっちの生活はなかなか大変だと思うの。やっぱりそこと比べたらやっぱりこっちは田舎だから利便性がどうしても良くない。それに知らない土地で暮らすなら、互いに一応知っている間柄の人がいる方が心強いと思うの」

「……………」

「それにその人達はこの土地のことも知ってるしね♪」


 そう言われては彼女だって反論もしにくいのだろう。ただぐっと口を閉じて黙ってしまった。そして僕はこの間に自身の母に問うた。


「……それでなんで公私両方なんだ? 今の話だと生活面だけのサポートで良いんじゃないのか? それにそもそも公私って?」

「公は勉強面で、私は生活面よ」

「ん……? それって……」

「はい……。実は娘達は本当に勉強というものが苦手でして……」


 そして僕が二人を見たら、香奈美の方は目線をそらされ、陽花の方は後頭部に手を当てて苦笑いだった。


「………」

「それで陽花ちゃんはどう思ってるの?」


 そしてウチの母がすかさず明るい性格の方に訊く。


「……え? あっ、私ですか? 私は輝さんが色々とフォローしてくれるのに大歓迎ですよー」

「え! 陽花!?」

「だって彼は一見頭が固そうだけど、真面目で人が良さそうだし、それに……色々と…ほしいから……」

「?」


 まさかの答えにショックをうけたのか、震えながらもう一方の双葉さんが我慢出来ずに反対の意見を言う。


「とにかく私は助けなんて受けなくても問題ありません!」

「私から言っても……?」

「それでも……です!」


 そう言って香奈美はドタドタと足早にリビングから出て行くのであった。


◇◇◇


「えーーーーー!? 何よそれーー!?」


 翌日、一緒に登校する咲に昨日のことを言ったら、かなり不満げな反応だった。


「私は反対ね! そんな見ず知らずの女を助けて、何かしてきたらどうするの!?」

「何かって……何?」

「そこが分からないから危ないんじゃない!」

「? …………けどお前には関係のない話だろ?」

「か、関係あるわよ……! だから、え……えーと……、()()()()()()輝憲が何か変なことに巻き込まれたら心配なだけよ!!」

「はあ……、そんな大げさな?」

「大袈裟なもんですか! この世の中、一寸先は闇よ!」


 それならお前のその派手な格好もどうにかしろ。スカート短すぎるぞっ。


「……とにかくっ、輝憲は全然女慣れとかしてないんだから、女子には何か秘密を隠されているといつも思って十分気をつけてね!」

「お、おう……」


 そして咲と別れ、クラスに着いて自分の席に向かうと、隣の席にもう彼女が本を読みながら座っていた。


「………」

「………」


 昨日の今日だってのに目線すら合わない……。


「………」

「………」

「……お、おは……」

「……」

「……おはよう……」


 し~ん。

 こ、こいつ……、折角挨拶したのに目線も合わせず無視しやがった。


「よーっす、土岐くーん!!」

「………」

「ん……どうした? ふて腐れた顔して」

「いや、別に……!」


 もう知らん!!

 知らん、知らん、知らん!! もう僕はこいつとは一切関係がない!!

 放課後部活終わり、僕は早朝の出来事にずっと遺恨を持ちながら、スタスタと帰っていた。

 そうすると数人でたむろしている不良達が向こうにいた。

(西高の連中かあ、あんなに集まって暇人だな~。ま、僕には関係ないが……)


「詫びの一つもなしに帰ろうとしてんじゃねーよ! 黙ってねーで何か言えよ、あっ!?」


 うへーっ、こっわ! 一体誰が絡まれて……、とちらっと見たら、僕は思わずぎょっとした。なんとそれは香奈美だった。彼女は手をぎゅっと胸元に抑えて、下を向いて震えている。

 そして彼らの言いがかりは続く。


「お前さー、周りを見ずに歩いてたんだから、そりゃあ人とぶつかるだろうよ。分かる? スマホ歩きは他人の迷惑なの!」

「………」

「本を読んでるくせにそんなことも知らねーのかよ! ほんと馬鹿な女ーっ! そんぐらいガキでも知ってるぜー!」

「………」

「だから何か言えよ、おらっ!!」

「………」

「ちっ、何も答えねーよ」

「この女、どうする?」

「そうだな~。とりあえず賠償として金くれよ、金。1万(円)でいいからさ~」

「え……そんな……」

「てめーからぶつかってきたんだから、詫びの一つもらって当然だろうがっ!」


 そしたら次はもう一人の奴が舌打ちして、僕の方を見る。


「あ? てめーさっきから何じろじろ見てんだよ?」

「え……」


 次は僕かよっ!?


「いや、別に……?」

「さっきからじろじろ見てるの知ってんだぞ!? なんかあるのか、あ!?」


 あることまみれなんですけど~~~~!?? くそ、警察にも連絡してないしどうすれば……!

 香奈美の方を見ると、こっちを不安げに見ている。

 く、かくなる上は!


「いてっ!? いててててててっ!!??」


 僕は絡んだ奴の関節を決めて跪かせる。


「あ!? なにしてんだてめー!!?」

「これでも武道してるんだ。華奢だからって舐めてると、こいつみたいに痛い目みることになるぞ……!」

「……!」

「さあ、どうする……?」

「……」

「……」

「……っち、さっさと帰ろうぜ!」


 そして奴らは向こうへとづらかった。


「…………ふわーーっ、助かった~~」


 武道してたって言っても、3年ぐらいしか習ってなかったから、精々出来るのはこの技ぐらいだ。完全にケンカモードになってたら、本当に危なかったー……。


「大丈夫か……? 香奈美……」


 彼女はすとんと地面に腰から崩れ落ちた。


「お、おいっ。大丈夫k……!?」

「腰に力が抜けて……立てない……」

「え、えぇー……!?」


◇◇◇


「ごめん……なさい……」

「良いって別に」


 僕は彼女の片腕を担いで一緒に歩く。しばらく無言が続く。そうしたら彼女から声が懸かる。


「どうして……」

「?」

「どうして助けてくれたの……?」

「え? どうしてって、僕も絡まれたから……」

「貴方だけなら逃げられた……でも逃げなかった……。どうして……?」

「それは~……」


『私は強い人が好きなの……』


「……。男はやっぱり強くないといけないからな……」

「…………ぷっ」

「はっ、何がおかしいんだよ!?」

「耳まで真っ赤……。本音を言うと本当に赤くなるんだな~と思って……」

「あ、あぁ……」


 バレてる……。なんか恥ずかしいな……。


「とりあえずありがと……その~………?」

「?」

「名前……呼び方……」

「あぁ、なんでも良いよ別に」

「じゃあテル………で」

「はは、まったく面倒臭がりだな~」

「うふふ……」

「はははははっ」


 僕達はこうして仲良く帰宅したのであった。

 ん? でもなんか大事なことを忘れているような……?


「…………あ」

「ん? どうかした……?」

「咲……」

放課後の校門前にて。


咲「へくちっ」

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