1.始まり
ー誰が言ったのだろう。流れ星に3回願いを唱えれば、きっと願は叶うと。
一面黒の絵の具をひっくり返したような月のない夜に、それはやってきた。
「うっきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「阿呆ぅぅーー!誰が助けに来るってんだ!落ち着けぇぇぇぇ」
空から滑空するように流れ星が落ちてゆく。
眩い光を放つそれは、少女の姿をしていた。
金色の長い緩やかな髪を高く結い、瞳の色はエメラルドのようにキラキラと輝いていた。しかしその瞳には涙がいっぱい溜まっている。
「こんなに早く落ちるなんてきいてないぃぃぃぃ」
「いいから早く体勢を整えろ、地面に叩きつけられるぞ!!」
少女の杖に捕まりながら、黒猫が叫ぶ。
「落ち着けばなんてことない!自分を信じろ!」
地面が目の前に迫る。
少女は目一杯目を見開いて地面に向かって手をかざした。すると地面から砂煙が上がり、落下が止まった。
「ふー。間一髪……」
ボサボサになった髪のまま、放心したように少女が呟く。
「しょっぱなからヤバかったな。1ページ目で物語が終わるところだったぜ」
冷や汗をかきながら黒猫はゆっくりと地面にジャンプした。
「で?誰か3回唱えられてたか?」
「あ…それどころじゃなくて全然きいてなかった」
ブチッ
黒猫の血管が切れた。
「ばっかもーーーーん!!!」
暗闇に黒猫の怒声と少女の嘆きが響く。
そしてここから、すべてが始まった。