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お越しいただきありがとうございます。10話までストックがあるので隔日投稿したいと思います。その後はプロットを纏める時間も欲しいのでしばらく申し訳ありませんが隔週になると思います。また15話くらいまでバトルなしの説明パートが続きますがご容赦ください。
道中説明されたがとりあえず発言を許されるまでは頭を下げていればよいらしい。広間には和装に身を包んだ緊張した面持ちの男性が列を成して並んでいた。快はその列の最後尾に正座し、待っていた。しばらくすると後ろにスーツの男性が並ぶ。嘘だろ、この人テレビで見たことあるぞ確か外務大臣では?快は出来るだけ顔に動揺を出さないように努めたがついチラチラ顔を見てしまい睨み返されてしまった。
快の後ろにも幾人か並び快の足のしびれが限界に近づいた頃。突如太鼓の音がしたと思うと周りの男たちは一斉に頭を下げた。快もそれに倣い頭を下げると簾の奥から声が響く。
「桜皇様のご入りである」
今代の桜皇様は快と同い年のはずだが簾の奥のその御姿は高校生の歳とは思えないくらい神聖さが溢れていた。桜皇様は人前では常に仮面を付ける。なんでも公務の際に私が出ないようにするためだとか、ご尊顔が美しすぎるためだとかその理由については噂が尽きない。そんなことを考えっていると一人、また一人と簾の奥へ招かれ遂に快の順番になってしまった。快は簾の奥に入ると教えられた通りに跪いて発言が許されるのを待った。
「そなたが北居の使者か、あのご老体から手紙を預かっておるじゃろう」
桜皇様の威厳に満ちた美しい声が響いた
女中さんと思わしき人が差し出してきたお盆?に神主様から渡された手紙を置く。桜皇様は何も言わずに暫く手紙を読むとこう言い放った。
「その者を未の客間へ通せ。後で二人きりで話がある」
快はそのまま案内されるまま洋風の客間に通され、ソファに腰掛ける。
「紅茶をご用意いたしました。桜皇様をお待ちの間ご自由にお飲みください。桜皇様がいらしたら新しいものをお持ちしますので全部飲んでいただいても構いませんよ。お手洗いはあちらの扉を入っていただいて右側にございます。他、何か御用がありましたらこちらの鈴を鳴らしてください。」
そう言われ部屋に一人置き去りにされる。
暫く快は考え込んでいた。二人きりで話って何だ?手紙を渡してハイ帰宅って流れを想像していた快は混乱していた。思考を回しているうちにドアが開く。一人の少女が入って来る。服装こそ先ほどの豪美な和装とは違いフリルの多いロングのワンピースというラフな格好だが、あの仮面を間違えるはずない、桜皇様だ。快はすぐにソファーを立ち深くお辞儀をする。
「礼儀作法は気にせんでよい」
桜皇様がソファに座ると先ほどの女中さんが緑茶とお菓子を持ってきた。
「桜皇様、くれぐれもお菓子食べ過ぎちゃダメですよ。本当に!これ以上食べたら太りますからね!!」
そう言って出て行ってしまった。
「座っていいわよ」
先ほどまでの威厳に満ちた声ではなく少女らしい凛々しい声だ。桜皇様は腰掛けるとなんと仮面を外したのだ。ご尊顔を拝する。美しい。そんな感想しか出てこなかった。理想の大和撫子を現実にしたような美人だ。そして桜皇様の片目は金色に光り輝いていた。まるで覗き込んだら永遠に虜になる万華鏡のようだ。
「さて北居の神主からの手紙は読ませて貰ったわ。貴方神隠しに遭った人間を覚えているんでしょ?ふむふむ、ホンモノね。貴方のこと気に入ったわ。貴方には二つの選択肢があるわ。一つ目は今日のことも貴方の親友のことも全て忘れて一般人として生活するの。もう一つは入寮するの。入寮して貴方が順調に成長して階級を上げていけば神隠しを調査する権限も貴方の親友の秘密を知る権限も私が与えてあげられるわ。」
悟の事を忘れる?そんなこと出来るはずがない。ここまで来たんだ。もう乗るしかない。
「入寮?します。悟のことを俺は諦められない。」
「あらびっくり即答するのね。この道を選んだら50年以上は一般人になる資格を失うわよ?本当に覚悟はいい?」
「やります」
「貴方の覚悟は受け取ったわ。続きは私の居室で話しましょうか」
桜皇様は机に置かれたベルを鳴らす。いやベルを振っても音はしなかった。だが恐るべきスピードで女中さんがやってくる。
「快には私の居室で生活してもらうから男物の衣服を用意しておいて」
「「は?」」
快と女中さんの反応は完璧にシンクロしていた。
~入寮~
○○寮へ参加すること。○○寮とは桜の国の魔の平和を守る1000年以上の伝統を誇る組織である。