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北居から皇居のある京戸まで四時間。快は新幹線の中でひたすら考え事をしていた。鬼とは何か、素質とは何か、そして桜皇様。桜皇様とはこの桜の国を統べるお方だ。簡単に会えるものではない。だが神主様は報告してこいと言った。だが京戸で新幹線を降りても何のコネも無ければ帰りの切符すら渡されていない。四時間経ち静かな旅を終えた快は反射的に京戸駅に降りていた。だが初めて訪れる京戸である。行く当てすらなく駅をふらついていた。
そんな中駅内にアナウンスが流れる
「迷子のお知らせです。北居からご紹介でお越しのお客様。お迎えがお見えですので0番線ホームまでお願いします。」
「これ俺だよな?というか0番線なんて存在するのか」
そんなことを呟きながら駅内を彷徨っているとあった、いかにも怪しい0番線と書かれた地下への階段が。快は身構えながら階段を降りていくと駅の地下には大きなホームが広がっていた。
「待っていたぞ北居の使いだな」
声が掛かったほうを見るとそこには筋肉モリモリマッチョマンの変態が立っていた。いや初対面で変態というのは失礼だ。だがその男のタンクトップから溢れ出る筋肉は確かに快を威圧していた。
「はい、、そうですが」
快は少し身構えながら答える。
「お前の迎えに寄越された、大萬だ。よろしく頼む。こっちだこの汽車に乗れば皇居まで直通だ。」
「稲葉 快です。その、皇居まで直通なんて他の方が勝手に入ってきたりしないんですか?」
汽車の客車に乗りながら快は素朴な疑問をぶつけた。
「このホームは許可の無い者は気付けんし入れんようになっとる」
「でも僕許可なんて」
「その切符があるだろう」
はっと快は気付き手に持っている切符を眺めた。
「じゃああの放送は?」
「あれは素質の無い者には聞こえない一種の神通力だ」
そんな話をしているうちに汽車は地下を抜け皇居敷地内の地上を走っていた。一般人には一生入れない神域、それがこの皇居である。美しい庭園が広がり清流が流れていた。そして汽車は皇居の敷地の中央付近にある駅に止まった。
「降りろ」
「まず謁見の準備が必要だが服装は制服だから良いとしてマナーだな。いいかこれだけは覚えておけ、発言を許されるまで絶対に喋るな」
「は、はい。」
そう答えるがまま付いていくと簾で仕切られた如何にも神聖そうな広間に着いた。
北居:東北地方の複数の県に跨る地域。古くから北居神社を中心に栄え近年には新幹線の駅も出来た。