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一話一話は短めに執筆しているのでストックがあるうちは毎日投稿したいと思います。
「お主、悟のことを憶えているというのは本当か?」
神主様は悟のことを知っているのだ。
「は、はい。あの、貴方は神社の神主様ですよね、何故悟のことを」
老人は笑みを浮かべると答えた
「儂は悟の後見人じゃ。あ奴は両親と血がつながっておらんというのはあ奴から聞いておるだろう。昔色々あって儂が預かり面倒を見ておったのじゃ。だが今回あ奴は神隠しにあってしもうた」
老人は悲しそうにうつむくと車の中から手招きした。
「立ち話もなんじゃから道すがら色々説明するとしよう」
ドアが開かれ快は招かれるがまま高級車の後部座席に座った。快がシートベルトを締めると車が動き出した。
「さて、お主の名は確か快といったな。お主はあ奴の神隠しの現場に居合わせた、そうじゃな?」
「はい気配がしなくなったと思うと突然悟の姿が彼の周囲の物ごと消えてて最初は悪戯だと思ったんです。でもその神主様は神隠しとおっしゃいましたが何かご存じなんですか」
「神隠しとはのう、人間の存在が消えてしまうことじゃ。消えるだけでなく素質を持たん人間は神隠しに逢うた者の記憶や記録がすっぽり抜け落ちてしまう。お主も心当たりがあるじゃろ?神隠しの原因は不確かでな鬼共の悪術かそれとも時空のひずみに巻き込まれる事故かよう分かっとらんのじゃ」
「素質?鬼?どういうことですか?」
「それを説明したいんじゃが儂もいつまでも話していられるほど暇というわけではない。そこで一つ聞きたいことがある。お主は今の生活を棒に振ってでも悟を見つけだしたいか?」
「今の生活?僕は、いや俺はアイツを見つけ出したい、親友だから。」
「その覚悟があるのならこれを渡そう」
渡されたのは新幹線の切符と一通の手紙だった。
「今回の件、桜皇様に報告する必要があってのう、じゃが鬼共が騒がしくしとるせいで儂はここを離れられん。じゃから悟のことを憶えておるお主に行ってもらう。くれぐれも粗相のないようにな」
そう言われると快は東北新幹線の北居駅前に降ろされた。
~桜皇~
桜の国の元首にして現人神と伝えられる。普段は京戸の皇居で暮らしている。常に仮面を被っておりその素顔を知る人間はごく少数と言われている。