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~~~~~~一か月後~~~~~~~
陰陽寮上層新人戦会場にて
快は一か月の鍛錬をこなし無事老師と明花様から入寮を認められた。老師の推薦によって試験を免除されいきなりやってきたのが新人戦である。陰陽寮は毎年入寮した新人同士で新人戦を行い上位の新人には一つ上の十二階から始まる権利が与えられる。つまり緑の下ではなく緑の上からだ。ちなみに老師から優勝以外認めないと釘を刺されており、快はもし負けてしまったら何をされるか分からないという恐怖に怯えていた。
「では新人の皆さんは自分の整理番号が掛かれている機械獏に入ってください」
案内に従い自分の番号、14番が書かれた機械獏に入る。既に試合の組み合わせは決まっており新人戦が終わるまでこの機械獏に入りっぱなしでいいのだ。ざっと周りにいる新人を眺めたが強そうなのは3人、パーカーで目深くフードを被った多分男子と高校の制服のようなブレザー姿の女子、和装で薙刀を背負っている女子だ。そんなことを考えている内に最初の試合が始まった。フィールドは視界の悪い森、時間は夜だ。
ふと明花様との鍛錬を思い出す。
「貴方が扱うのは雷で、私が扱うのは光。これらを操って例えば攻撃する。ここまでが魔法の世界よ。今日からは一歩踏み込んで魔法に魔術を組み込むわ。細かく言うなら例えば私の光に回復魔術を組み込むことで光で照らした対象を回復したり逆に着弾点で大爆発が起きるように術を組み込む事が出来るわ。貴方の雷でも同じように術式によってただの雷から意味を持った雷に変化させる、それが今日から訓練する内容よ。」
試合が始まり快は相手の姿が見えるよりも前にミストの魔術を発動する。ミストは普通目隠しとしての機能が主だが快が使うともう一つの役割が生まれる。それが快の魔法の射程上昇と自動索敵だ。雷の攻撃は距離が離れるほど大きく減衰するがミストで大気中の水分が多い状態なら殆ど減衰せずに長射程で攻撃できるうえ相手の身体そのものが避雷針として機能するため索敵せずとも一方的に相手を攻撃できる。
「黒雷・浸毒」
快が使ったのは黒い雷、その名の通り神経毒としての要素をもった雷だ。弱い雷で攻撃しても魔導士相手では体に纏っているクリプトで軽減してちょっとビリっとするだけで終わりだ。だがそこを逆手に取りちょっとビリっとした瞬間に相手の体内に毒として作用する電撃を入り込ませ上手くやれば相手の心臓を止め上手くいかなくても体の一部を麻痺させるアドバンテージを得られる。あの老師の腕を暫く使えなく出来たのだから効果は保証されている。そしてどうやら今回は相手の心臓を止められたようだ。快の最初の試合はわずか十秒で終わった。
黒雷
快の使う雷の中でも特にトリッキーな攻撃に長けた物、それ故威力は低いが刺さってしまえば相手に致命的なダメージを与えられる。浸毒以外にも電子機器をハッキングする攻撃や微弱な電磁波を飛ばしアクティブソナーとしての役割を持ったもの等がある。