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ストックがあるうちは高頻度で投稿させていただきます。後書きにて用語解説も毎話行っていく予定です。
放課後、北居高校2-3の教室で快と悟は二人で話していた。
「なぁ悟。一年の奴が神社の裏山で幽霊見たらしいぜ」
「またかよ、というかあの裏山立ち入り禁止だろ?肝試しに丁度いいからって何度も入ってるとバレて生徒指導部送りだぞ」
「あの鬼教師は幽霊より恐ろしいよな」
二人は目を見合わせると声を上げて笑った。いつも通りの彼らである。二人は幼馴染で小中高と同じ学校に通い、こうして放課後の教室で駄弁ってから帰るのが習慣であった。
「なぁ悟。そろそろ帰ろうぜ」
そう言って快が悟のほうを見るとすぐ隣にいたはずの悟は消えていたのである。どころか悟が座っていたはずの悟の席の机や椅子も消えていたのである。快は悟の悪戯だろうと思い廊下や隣の教室を覗いてみた。しかし見つからなかったため快は諦めてその日は帰ったのである。快は心のどこかに途轍もないことが起きているかのような違和感を覚えたがただの杞憂だと思いベッドに入った。
次の日、快が登校してみると昨日に同じく悟の席の机や椅子がなく教室にぽかんと穴が開いていたのである。朝礼が始まり担任が点呼した際も悟の名前は呼ばれなかった。他の生徒も担任も何も気にしてない様子だった。たまらず快は担任に聞いてみる。
「先生、悟はどうしたんですか」
次の瞬間担任が放った言葉は快の心に地震のような衝撃を与えた。
「悟?そんな奴このクラスにいたか」
「何言ってるんですか先生、たしかに昨日までそこに座って」
そういって快は教室の空白を指差したが
「ん?なんでそこ空いてるんだ、おいお前ら前に詰めろ。」
生徒たちは当然のように担任の指示に従い前に詰めていった。この瞬間この世界に残った悟の痕跡が全て消えたように思えて快は深い絶望感に襲われた。
全くその日の授業に身が入らないまま放課後を迎えた。快は授業が終わり次第鞄と一緒に教室を飛び出した。駆け込んだ先は悟の家の近所の交番だ。だが事情を説明しても全く取り合ってもらえなかった。意気消沈のまま交番を出た快が目にしたのは鴉のような色の高級そうな車だった。快は車に詳しくないので正確な価値は分からないがその高級感溢れるデザインから乗っている人物が只者でないことは容易に想像できた。後部座席のドアが開く。姿を現したのは一人の老人であった。快はこの人物を知っている。北居神社の神主、北居 源武だ。
「お前、悟のことを憶えているというのは本当か?」
老人は衝撃の一言を発した。
~桜の国~
極東の島国。宗教国家としての側面が強く、女皇・桜皇を全国民が崇拝している。