ショート劇場「待て、セリヌンティウス」
「あー、磔そろそろ飽きたわ。」
「飽きるでしょうね。今日でも二日目ですもんね。」
私は、セリヌンティウスを見張るように命令を受け、彼を見張ることになった兵士である。磔も二日目の夜なので、どうやらセリヌンティウスも飽き飽きしているようだ。
「運動不足になるよね。俺、健康の為に一日30分は外走ることにしてるから、走れないと気持ち悪くてさぁ。」
セリヌンティウスの話し相手になるのも私の役目だ。というかコチラも話してないと暇で仕方ない。
「兵士君、君の名前は?」
「あっ、マルクスです。」
「マルちゃんか、オッケー。」
磔になってるのにテンション高いよなこの人。
「マルちゃん、いくら命令とはいえ、もう嫌でしょ?こんなちんけな見張りとか。」
「いやいや参交代でやってますし、夜勤手当もでる野で結構美味しい仕事ですよ。」
「そうなんだ。俺、石工屋だからさ、夜勤とか分かんないな。眠くない?」
「まぁ、多少は眠いですけど、慣れたら大丈夫ですよ。」
本当に他愛ない会話だよな。緊張感も無くなるわ。
「あー、メロス本当に来るかなぁ。」
「あの人、王様にキレるとか本当に無鉄砲ですよね。」
「そうなんだよ。昔からそういうところあるんだよ。先生に殴り掛かったり大変だったよ。」
「昔からヤンチャだったんですねぇ。」
いきなり王様を殺そうとするとか、マジで危ない人だなぁ。しかも友達を自分の代わりになってもらうとか、俺だったら友達やめてるよ。
「メロス来ないかもな。てか、来ない。アイツ諦めグセがあるんだよ。あーもう信じられないよ。明日俺は日没に死んぬんだなぁ。」
なんか投げやりになってきてるな。ここは何か言ってあげたほうが良いかな?
「信じましょうよ。ここまで信じてきたんだから。」
「・・・そっかぁ、そうだよねぇ。信じてみようかな。友達疑っちゃったなぁ・・・よし、顔にワンパンで許してもらおう。」
「そ、そこまでしないと許して貰えない感じですか。」
「うん、ただアイツも同じことしたら俺も殴るけどね。」
「結構、バイオレンスな関係なんですね。」
こうして夜は更けていく。