狩りの時間
今回の遠征はあるグループを狙う。こいつらは前々からリサーチを続けていた連中で、12人組の大所帯だ。こちらにいる時点で殺したって構わない。こちら側のルールを決めたのは頭のイカれた昔の人達だ。俺は車に乗り込むと立体駐車場を出た。
12人組は山下という男の元にまとまって行動する集団だ。規律正しく、稼いでいく。来る時も帰る時も一緒。かなり手強い相手だが、武装はこちらの方が硬い。そいつらの根城はマンションの一棟丸々一つだ。だが拠点は最上階でそれ以外の部屋は空きだと言うことは調べがついている。
マンションより7百メートルほどの位置のビル陰に停車すると俺は素早く車を降りた。ビルの壁に張り付くと角から目標地点を確認した。
フェンスの向こう側のT字路を直進した先に件のマンションがある。俺は周りこむようにマンションの足元を目指した。暗い路地裏に侵入すると前から人が歩いてくる。12人組の1人だ。俺はゴミ箱こ陰に身をかがめ、足音と動きに集中した。息をゆっくり吐き出すと、ゴミ箱の陰に爪先が見えた。
飛び出し、喉笛から耳にかけてナイフを振り抜き口を押さえる。この一投足は1人の男の命を確実に奪った。男は全身の力をゆっくり抜き地面に横たわった。2秒ほどすると血が蒸発し始め、二枚の札に変わる。俺はダンプポーチに札をねじ込み、拳銃を抜くと路地裏を進んだ。
マンション下を進捗に一周したが、人影は見当たらない。恐らく警らは彼1人だったのだろう。俺は素早くマンションの階段を上り最上段手前に辿り着いた。上階をクイックピークすると廊下に狙撃銃を構えた男と拳銃を腰に挿した男が見えた。見張りと護衛兼観測手といったところか。俺はホルスターに拳銃を納めM4をしっかり肩付けする。息を吐いてゆっくり吸うと階段を駆け上がった。
まず動いたのは護衛だった。腰に手を伸ばす。バイタルに2発、顔面に2発。素早く見張りに2発。
彼らの死体を飛び越えるとドアに向かって4発連写した。ドアの向こうで人が倒れる音がした。壁に張り付き一呼吸。弾倉内には残り20発、残りは9人、負傷者が最高でも1人。
けたたましい銃声が続いてドアがボロボロになってゆく。壁から離れてドアの内側を覗くと呻いている男が1人見えた。素早く3発、男の動きは止まった。残りは8人。俺はしゃがみこむとドア枠の陰に隠れた。片足を伸ばして部屋内を狙う。ドアの隙間から影が見えた瞬間に3発打ち込む。叫び声を確認して下側に2発。立ち上がって二つ目の死体を確認する。そのまま間髪を入れずに部屋に向かって8発打ち込んだ。弾倉を素早く交換する。弾倉内は31発だ。俺はドアを蹴破り素早く身を引く。
すぐさま中の住人が応戦してきた。下手投でフラッシュバンを部屋内に投げ入れた。銃声に混じり甲高い破裂音がする。閃光に続いて部屋に忍び込み、前方、右側の机の側の男に4発、バイタルを射撃しながら左の壁に寄る。左の角の下からはみ出す膝に1発、倒れ込んでくる頭に2発。続いてリビングの隅にうずくまる男に4発。残りは4人だ。
廊下の先に素早く進む。途中のトイレに6発、扉を開けるが空だった。一番奥の部屋ベランダに一瞬見えた陰に3発打ち込む。人影は倒れる。部屋内向かって三時の方向から叫び声がする。
助けを乞うていたがジワジワと壁から遮蔽を切り、左から順に殺していく。3発、4発、4発、遮蔽物に隠れると新しい弾倉を叩き込み、ボルトストップを叩いた。高さを変えて残りの1人を無力化。
その後に近辺の安全確認を終えると死体のあった場所にある札をかき集めてポーチに押し込む。
その次に金庫をバールとハンマーでこじ開けた。
中身は札束が6つほど。それらも素早くバックポーチに納めるとベランダに駆け寄った。
ラベルリングロープを下に投げ、ロープを確認したところだった。下から大人数の足音と叫び声がする。どうやら新手のようだ。俺は素早くロープを降り、階下の部屋に隠れた。
入れ違いで最上階に集団が到着したらしい。俺はバラクラバを直してグラスをかける。上階の集団の話し声が聞こえる。
「先を越されたわね」
若い女の声。
「目をつけてたのは俺たちだけじゃなかったって事ですか?」
男の声が応える。
「当たり前だ、かなり派手に暴れてた奴らだからな。溜め込んでるって馬鹿でもわかる」
別の男が少し大きな声をだした。
「襲撃者は?」
「逃げたようです」
「用意周到ね、引き揚げるわよ。まだ近くにいるはず、探しして」
応!と男達は応えた。
俺はバラクラバを直してグラスをかけた。奴らが探りを入れる前に車両にたどり着く必要がある。
息を殺して、静かに移動を始めた。