〜どうにもならない冒険ファンタジー!?〜
青々とした芝生の先に
置いてあるただの丸太に剣を振るうも虚しく、
俺の腕は悲鳴を上げて更に尻もちまでついた。
「なあ、俺強くなってる気がしないんだが
どうしたらいいと思う?」
「知らん」
バッサリ切り捨てるかのように言い放ったのは
俺の家の近くにある切り株に座って
何か読んでいる黒髪ショートの超美少女。
「真面目に答えて〜」
俺が芝生に寝転びながら駄々をこねるも虚しく、
彼女はそういえば…と口を開いた。
無視ですね、ありがとうございます。
「あんた王宮いつ行くの?」
「はあ!?
まだ強くなってないから
王宮まで行けないんだけど!
外出てスライムに
エンカウントしたら死ねるんですけど!」
「スライムとか私が倒すから良くない?
それに急いだ方がいいと思うのよね」
どういう意味だ?
とか思っていたら彼女が
手に持っていた紙をこちらに向ける。
「王宮から速達で届いてた。
至急王宮に来られよ、って。」
「他人の家のモン勝手に読むな!自由か!」
俺の声も虚しく、そこには確かに
王宮のマークのついた便箋が目の前にあった。
どうしてこうなった。
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「よし!変じゃない!?」
「もとから変でしょ」
「酷い!」
家に戻って俺の唯一の一張羅である鎧を着た。
けどこの目の前にいる超美少女こと
魔導師ハーフマオリエは辛辣だった。
「とりあえず王宮まで徒歩で3日くらいかな?」
何処からか地図を出し、テキパキと
冒険の支度をしていく彼女を
遠い目で見ながら俺は天を仰ぐ。
ああ、神様いるなら俺の代わりの勇者を見つけてくれ。
だがそんな俺の願いも虚しく…。
「で、出たああああああああぁぁぁ!」
俺の絶叫に耳を塞ぐ
ハーフマオリエ。
そして俺の目の前にいるヤツ…スライムだ。
「俺の体力もつ!?もつかなあ!?
死んだら協会で生き返らせてね!
絶対だからね!?」
「うるさっ」
俺の情けない台詞に顔をしかめながら
ハーフマオリエが杖を一振りすると
スライムが一瞬で消えた。
「え?なにがおこった?
……ハーフマオリエさん?」
「……ちょっと燃やしただけだよ。
燃やし過ぎて消し炭になっちゃっただけ」
「アッ…ソウナンダ……。」
さらっと恐ろしいことを言った
ハーフマオリエに俺の声が震えていたのは
言うまでもない。
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「俺、このままでいいのかなー」
「……なに、急に」
「だって俺さっきからノータッチなんだけど!」
「何が?」
「せ・ん・と・う!だよ!戦闘!」
俺がわあわあと叫んでいる間にも
ハーフマオリエはさっさと
日が暮れないうちに
手際よくキャンプの用意をしていた。
「敵より先に私が倒すのが早いから
敵より遅いブレイトには
どうしても順番回って来ないよ」
何処から持って来たのか
わからない眼鏡をかけて
あきらメロン、とか言って来る
ハーフマオリエが
そんなことより、と早くも話題を変えて来た。
「今日のご飯よろしく」
「俺の担当料理だけかい!」
「私が作ったらこの場所ごと燃やせる」
「ありがたく作らせて頂きます!」
かくして俺の作ったシチューを食べ
ハーフマオリエが作ったキャンプで
1日目はなんとかなった。
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「2日目も3日目も順調過ぎない?」
俺の講義の声にまたか、
とでもいうような顔をする
ハーフマオリエにため息つかれた。
「あんたが戦闘出なくても
私が敵倒してそれで経験値増えて
成長するならいいでしょう、楽で」
「楽だけど!嬉しくない!
なんで俺この3日間、全然何もしてないよ!?
なのに朝、丸太に向かって
1人虚しく修行してたら
斬鉄剣とかなんか知らない技
使えるようになってたんだけど!?」
「そういうもんでしょ」
「そういうもんなのか!?」
納得いかない、という俺の意見も虚しく
ついには王宮まで辿り着いてしまった。
「もう王様目の前なんだから
いい加減腹くくったら?」
「腹くくる前に自分のツッコミで
首を絞めそうだよ」
げっそりしながら俺は言ったものの、
ハーフマオリエな慣れたようにスルーし、
王宮からの手紙を受付に出していた。
そんな彼女の背を見ながら
俺は泣きたい気分でいっぱいだった。
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「これはこれは勇者ブレイト・フェニニクス。
よくぞ来てくれた」
王の座で王様本人からの声かけに
俺はドキドキしながら
赤い絨毯に跪く。
「勇者ブレイト・フェニニクス、
王の便りのもと参りました」
俺が少しどもりながらも言うと
王様のはて、という声。
「君は……?」
「お初にお目にかかります、王よ。
魔導師ハーフマオリエです。
勇者ブレイト・フェニニクス殿に勧誘され
現在パーティーを組まさせて頂いております」
王様が気にしてたのはハーフマオリエの事だったのか。
というかこいつちゃんと敬語話せるのか。
普段は毒しか吐かないのに。
「そうか。魔導師殿をパーティーに
加えるとはさすが勇者。
今回便りを貴殿に送ったのは言うまでもない。
魔族の王、魔王の討伐だ」
王宮に響く王様の声。
その声とほぼ同時に
側近が地図を持って来た。
「東の谷に亜人種の村がある。
そこで魔族の住む場所を聞いてくると良い。
魔族の住む場所の近くに魔王はいるはずだ。」
王様の言葉に俺は
わかりました、とだけ伝えて
ハーフマオリエと共にその場を後にした。
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「やっぱり魔王討伐かー」
ぐへへ、と宿のベッドに蹲りながらも
俺はにやにやとした笑みが止まらない。
なんせ俺は勇者に憧れてたから
テンプレである魔王は倒しておきたい。
重たい鎧も王様の計らいで一新して貰ったし、
しばらくやりくりするお金も貰ったし。
今日は明日に備えて寝よう!
「……不安なの?」
そんなことを思っていたら
ハーフマオリエの声が小さく聞こえた。
「は!?ハーフマオリエ!?」
部屋にはいない。
宿は王様の配慮で部屋別にして貰ったからだ。
ふと窓をみるとハーフマオリエがいた。
「なんか不安なこと言ってたから
窓から浮きつつ観察してみた」
「なんとかし過ぎ!
大丈夫だから!観察しなくていいから!」
俺が叫ぶと、
ハーフマオリエは大人しく部屋に帰って行った。
まったく、なんでもありか。
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「……東の谷、遠いね?」
王宮近くの宿から歩いて3日目です。
皆さんどうも、ブレイトです。
歩きまくってはや3日、
相変わらず戦闘のひとつもしていません。
「まあ、東の谷に向かうより先に
その辺の村につくと思う。
目的地そこだし、そんなに遠くないよ」
魔導師装備から最多見える靱やかな脚に
横目から見える形の良さそうな胸。
ハーフマオリエは相変わらず今日も超美少女です。
「あーもー俺戦闘してないから
気が狂いそうー、
ハーフマオリエたんの普段
見ないとこまで見てるもんー」
「何言ってんだこいつ」
ハーフマオリエのナイフが
今日も切れ味鋭過ぎ案件ですね。
「あのぅ……、旅のお方ですか……?」
か細い可愛らしい声が聞こえて目線を下げた。
「……ぇと、その……お水……、
あったら、わけて……ほしい、です。」
フードを深く被った幼女だ。
「水って言われても……。
あったかな……」
「はい。水」
俺がもたもたしていると
ハーフマオリエが杖から水を出した。
あの杖あればなんでも出来るのか。
「……ぁ、りがと……ぅ、ございます。」
ぱさ、とフードが外れると
にっこりと笑った幼女の姿。
真っ白な髪に真っ白なふわっふわのまつ毛、
同じく真っ白な長い耳……、耳!?
「もしかして君、うさぎの亜人?」
「ひ、ぅ……!?」
びっくりしたのか幼女は
真っ赤な瞳をくりっと見開いて
肩をビクッと揺らした。
「ブレイト。
亜人に亜人呼ばわりは駄目よ。
……ごめんなさいね、彼……、
悪気はないのよ。
ただ、初めてだっただけ」
ハーフマオリエが優しく幼女の誤解を解くと
幼女はびくびくしてはいたが
一応は落ち着いたみたいだ。
「ねぇ、この近くに村はない?
見ての通り旅人なの。
ほんの少し、寝泊まり出来る場所が
欲しいのだけど」
ハーフマオリエの言葉に
俺はびっくりした。
「おい、俺たちは……」
「あんたは黙ってて。
文句なら後で聞く。」
ハーフマオリエにそう言われて
しぶしぶと黙った。
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「もし良かったら、
使ってください。
粗末なところですけど……。
何かあったら言って下さい。」
うさぎのアルビノ幼女
リア・パレスが言うには
東の谷の付近にある亜人種の村は
近年飢饉で苦しんでいること。
つい最近では雨も降らない状態で
旅人だと思ったらしい俺たちに
声をかけて来たらしいのだ。
リアの小さな家の狭い部屋を借りた俺は
ハーフマオリエを見た。
「なんで旅人なんて言ったんだ?」
「王様が言ってたでしょ?
亜人種が魔族の居場所を
知ってるかもしれないって。
私たちが勇者一行だってわかったら
勇者が来て欲しくない魔族が
亜人種に自分の居場所教えると思う?」
「だからなんだって亜人種まで巻き込むんだよ。
嘘つくなら魔族だけでいいだろ?」
「……駄目だね。
魔族が亜人種に対して
勇者には何も喋るな、って
脅していたら私たちは情報を得られない」
「だからあの子に旅人だって言ったのか……」
俺は自分の頭をボリボリと掻きながら
下を向いた。
ハーフマオリエは案外頭も切れるのかもしれない。
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「……というわけで生き別れた友人を探すため、
魔族の住む場所を探して旅をしていたのです。」
「……うっ、いいはなし……。
あ、鼻水が……」
ハーフマオリエはいけしゃあしゃあと
嘘八百を並べているが
リアはうさ耳を垂れ流し、
真っ赤な瞳からボロボロと涙を零しながら
しゃっくりをあげた。
ちなみに俺はハーフマオリエだけは
敵に回したくないと常々思っていたところだ。
「魔族の住む場所は
残念ながら私も知らないんです……。
でも、魔族がある街の市場で
売られているのは知ってます。」
リアのうさ耳は垂れた状態のまま
話し続けた。
「昨日、この村が飢饉だと言ったとおり、
ものすごく村民は苦労してます。
だからせめて自分の身を売って
代わりにこうして食料を送って
くれるんです。」
「それってまさか!?」
「人身販売、みたいなものよね。
悪趣味」
俺たちの言葉に暗い表情で頷くリア。
「この村から南に向かうと
オアシスがあります。
そこの近くに旧神殿があって
そこでオークションが開催されるんです。」
リアは軋む棚からボロボロの地図を出すと
見にくいですが、と言った。
「この都市に行ってオークションの日にちとか
聞いた方がいいかも、です。
たぶんここに私の仲間もいるかと」
リアはそう言いながら
首にかけていたペンダントを
俺に渡した。
「これは?」
「亜人種が友好の証に送るものです。
私の名前が彫ってあるので
仲間が見えればわかります。
いざという時に助けになるかと」
リアは小さいのにちゃんとしている。
きっと大人たちが身を売る中、
この村できちんと生きていくように
言われたからかもしれない。
「ありがとう、リア。
行ってみるよ」




