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吸血鬼の弟子の英雄譚  作者: 誠義
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悪夢の夜

どうも誠義です。

続けて投稿してます。まぁ、こんなこと書いてもあまり意味ないですね。

投稿しといてアレですがタイトル「吸血鬼の弟子の英雄譚」ですが、まだこれでいいのか悩んでます。

今さら何言ってんだって話ですが…。

では、楽しんでください!また後書きで。

日は傾き、空は茜色に染まり始め、冷たい風が吹き抜ける。

森の調査を始めてから数時間が経過していた。輝く金髪を風に靡かせ、少女は鎧を身にまとう男に声をかける。

「ルミア様、御命令でしょうか?」少女の前に跪き、彼女の言葉を待つ男。

「そうかしこまらないで下さい。

お願いがあるのですが、皆に作業の中止を伝えてくれますか?

まもなく、日が暮れるので、出発地点に戻り、野営の準備をするようにと伝えてください。」

「了解しました。ルミア様、見つけた遺体は全て運んでもよろしいでしょうか?」

男の問いに少女は微笑み答える。

「はい、よろしくお願いしますね。」

「はっ!」

男は彼女から離れ、今の内容を皆に伝えていく。

男が去ってすぐ、後ろに気配を感じた少女は冗談混じりに声を掛ける。

「盗み聞きが趣味なんですか?ユートくん。」

「お疲れ。俺は護衛役として仕事しに来ただけだ。」

「ふふっ、そうですか。」

私の身分は大体分かっているはずなのに、遠慮のない話し方は何なのでしょうね。

他の者に知られたら禁固刑かもしれないのに。

「一つ気になっていたことがあるんですが、いいですか?」

「ん?何だよ?」

隣に立つユートは彼女に顔を向けた。

「ユートくんは私のことをどこまで分かっているんですか?」

「なんだそんなことか。この国の姫かなんかだろ?」

「やはり気付かれていましたか。本当なら話さないつもりでしたが、ユートくんの予想通り、私はこの国の姫です。

でも、本当に聞きたいのはそんなことじゃないんです。

あなたは何故、そこまで分かっていて、私達に普通に接してくれるんですか?」

その問いに驚いたように口を開けたユートは、その後、呆れたようにため息を吐いた。

「何故、その反応なんですか⁉︎姫ですよ!そんな人に無礼な言葉遣いでは刑に処されるかもしれないんですよ?それなのに何故なんですか?」

「そんなの決まってんだろ?友達に遠慮するやつなんかいねぇだろ。

依頼で一緒にいるだけだとしても、何だかんだルミア達と一緒にいて楽しかったし、さっきのルミアの言葉には助けられたし。

だから、俺はルミアを友達と思ってる。」

「友達、ですか…。」

幼い頃から友達がいなかったルミアは不思議な気持ちだった。

自分の立場では友達なんて一生、出来ないと思っていた。しかし、彼は私を友達だと言ってくれている。

そうか、今まで諦めていたけど、簡単なことだったんですね。

「そう、ですね。私達は友達です!」

その時の彼女の笑顔は、花のように明るく、宝石のように輝いていて、俺はそんな笑顔を見て、嬉しくなって、また笑ってしまった。

「あっ、また笑いましたね。」

「いや、良かったって思ってさ。」

「ありがとうね、ユート。」ルミアは小さく呟く。

「え…?」

「さ、寒くなってきましたし、私達も野営の準備をしましょう。私は調査隊の様子を見てきますね。」

そう言うと、彼女は森の奥に消えていった。

「初めての友達だな…よしっ!」

茜色に染まる空の下、小さく喜びを表すユートだった。


森の木々を掻き分け、奥に進む調査隊に野営の準備の連絡が伝えられたのは、すぐだった。

五人の冒険者は連絡係からそのことを聞くと木々に剣で印をつけ、帰路に着こうとしていた。

「明日はここから再開だな。」

「あぁ。だが、俺達より奥に進んでる奴らもいるんだろ?明日は焦らず、じっくり調査してもいいんじゃねぇか?」

何気ない会話をしながら、彼らはその場を後にしようとしたその時だった。

彼らの進んでいたさらに奥から、何かが走ってくる足音が聞こえ、五人は振り返った。

「何だ?他の冒険者かな?」

その足音はどんどん近づいて来て、人影がはっきりと見えてくる。

「なに走ってんだ?おーい、仲間に置いてかれたのか?」

冒険者達は完全に油断していた。森を支配していた魔物は死に、後は雑魚ばかりだと思っていたからだ。

実際、森の奥近くでも大した魔物には遭遇しなかった。一人で倒せる程度だった。

しかし、今度は違った。

近付いてくる人影は、両腕を動かさず、妙な動きで走っているのだ。

まるで腕を体に付けたまま走っているように見える。

「変な走り方だな。」

全員がその動きがおかしいことには気付いていたが、暗い森の中では影は見えても姿をはっきりと捉えることは出来ず、妙な動きとしか思わなかった。

しかし、それが近付いてくると、その異常な姿がはっきりと目に映る。

そいつは腕を体に付けているのではなく、肩から下が無かったのだ。

両肩から血液を垂れ流し、死にものぐるいで走るその顔は青白く、まるで死人のようだった。

「ひっ⁉︎」「何だあいつは!!」

驚く冒険者達の前で倒れたその人物は呼吸が荒く、体は完全に冷えきっていた。

瞬きもせず、眼球は焦点が合わず、様々な方向に動いている。

「おいっ、どうした⁉︎」「何にやられた?」

生きているのがおかしい状態の男ははっきりと話し始める。

「逃げろ。あれが来る。」

そう口にした瞬間に男は発狂し、同じ言葉を繰り返す。

「逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ……。」

数十回繰り返した男は口をガッと大きく開けたまま絶命する。

目の前で起きた異常な光景に冒険者達は静まり返ってしまう。

数十秒後、一人が口を開く。

「おい、今のって…。」「分からん。」

再び、そこは静寂に包まれ、誰も何も口に出そうとはしない。

その時だった。死んだ男が来た方向からパキッと枝を踏んだような音が聞こえ、冒険者達は視線を向ける。

各々武器を構え、注意深く辺りを見回す。

汗が体を伝い、緊張から体が熱くなる。

草木を踏む足音が聞こえ、小柄な女性と思われる影がゆっくりと近付いてくるのが見える。

「なんだ女か。人間だ安心しろ。」

冒険者の一人がその姿に安心したのか武器を下ろす。

次の瞬間、背中に冷たい気配を感じ、それは人間ではないと分かった。

全身の毛穴が開き、鳥肌が立つ。筋肉が硬直し、身動きが取れない。

「安心スルノハ、早インジャナイ?」

気持ちの悪い話し方のそいつは顔の横からヌッと現れ、三つの赤い瞳で冒険者を見つめる。

植物を思わせる緑色の顔が彼の頬に押し付けられる。

頭と反対側の頬に奴の手が触れ、ねっとりと撫でられる。

「舞台ハ始マッテイルノダカラ、モッート私ヲ楽シマセテヨ!

デモ…歌イ踊レナイ役立タズニ、用ハ無イワ。」

その言葉と同時に冒険者の顔は引き裂かれ、赤いものが吹き上がり、舞い散る。

突然のことで頭が真っ白になる冒険者達は、何が起こったのか分からず、動けずにいた。

紙を破るように頭を引き裂いた魔物は首を有り得ない方向に曲げ、残りの冒険者を眺め、ニヤリと気味の悪い笑い方をすると、男の死体を地面に捨てた。

ドサッと音を立て、落ちた死体は血を流しながら痙攣している。

「理解出来テナイノー?オ前達ノ価値ハ私ヲ楽シマセルコトナノヨ。役ニ立タナイ人間ハドウナルカ分カルデショォ?」

目の前の魔物の背中から触手のようなものが生え、蠢いている。

逃げなければ、殺される。

三人の冒険者は一斉にその場から逃げ出したが、一人だけ武器を持ち、魔物に向けるものがいた。

耳まで裂けた口がニヤリと笑う。

「ヘェー。オ前、コノ私ニ剣ヲ向ケルナンテ、死ニタイミタイネェ。」

「お、お前の、望みは…楽しむことだろ?だったら、俺が楽しませてやるぜ!!」

男は剣を振りかざし、魔物に斬りかかる。

「アハハッ!!オ前ハドンナ踊リヲ見セテクレルノカシラァ?」

森に男の叫び声が響き、逃げた三人は振り返る。

「おいっ、行くぞ!」

汗が止まらず、足もガタガタと震え、思うように走れない。

つまずきながらも進む三人の前に、血で描かれた真っ直ぐな道が現れる。

「な、何だこれ…⁉︎」「こっちだ!」

それとは別の方向に進む三人の前に再び赤い道が現れる。

「ど、どうなってやがる…。」

「俺達、殺されるのか⁉︎」

「バカ言え!あんな化け物に殺されてたまるか!」

また赤い道とは別の方向へ進んだ三人。しかし、赤い道は消えることは無かった。

「一体、どうなってんだ…。なぁ…あれ、あいつらどこ行ったんだ?」

音も声も聞こえない静寂に支配された暗い森の中、仲間を呼んでも返事はなく、赤い道を避けても何度も前に現れる。

当ても無く森を彷徨い、次第に不安、焦り、恐怖が彼の心を犯していく。

「どこに行けば、森を出られるんだ?」

そう呟いた男は自分の足下に目をやると、避けていたはずの赤い道の上に自分が立っていることに気付き、驚きのあまり、その場に転げてしまう。

這いずるようにそこから離れ、ガタガタと体を震わせる冒険者。

すると、どこからとも無く、音程が外れた不気味な鼻歌が彼の耳に届いた。

「や、奴だ…。一体、どこにいるんだ?」

体の震えを抑えながら、辺りを見回していると、ボトッと何か重いものが落ちる音が聞こえ、彼はそちらに視線を向ける。

「何だ?」それは明らかに肉片だった。

衝撃に声を上げる冒険者。再び、何かが落ちた音が聞こえ、ゆっくりと視線を向ける。

そこにあったのは、さっきまで一緒にいた仲間の頭部だった。

一つではなく次々に肉片が彼の周りに落ちてくる。

歯はカチカチと音を立て、体は震えて力が入らず、動けない。

鼻歌も止まず、ずっと聞こえている。すると、突然、鼻歌が止み、一瞬静かになる。

「モウ、鬼ゴッコハ終ワリ?」

頭のすぐ後ろで声がした。冷たく湿った何かが首筋に触れている。

奴の息がかかり、腐敗臭が鼻をつく。

首筋から顔を舌でねっとりと舐められ、ネバネバとした唾液が体に纏わりつき、垂れ落ちる。

奴の大きく開かれた口が、男の頭をゆっくりと飲み込み、噛みちぎる。

飲み込むと同時に長い舌で唇で舐めると、右手の人差し指を唇に当てる。

「ハァ…美味シィ。」



茜と藍が混ざり合い、空は星の輝きを露わにしていく。

夜の帳が下り、森が闇に覆われていく。

森の奥に進んでいくと、調査を切り上げた三人組の冒険者とすれ違うルミア。

「すみません。あなた方の他にまだ戻っていない方達はいますか?」

「え?あぁ、まだ何人かいると思いますが、そいつらにも連絡はいってると思いますよ。先に戻ってもいいんじゃないですか?」

「いえ、私には皆の安全を守る責任がありますから。

では、あなた方も気をつけて戻ってくださいね。美味しいご飯も用意してあるはずですから。」

そう言って微笑むルミアは暗い森を奥へ進んでいく。

冒険者達は彼女の後ろ姿を見つめ、目を合わせるとため息を吐く。

「全く、困った人だな。」

小走りに彼女を追う三人。

「ちょっと待って下さいよ。俺達も行きますよ。

あなたの責任が俺達を守ることだってんなら、それは俺達だって同じことだ。」

「皆さん、ありがとうございます。」

「いいってことです。俺はロッツって言います。こいつらはグローインとアーベル。

こう見えても、俺らは銅等級なんですよ。任せてください!」

鎧を纏い、斧に大楯の重装備の大男と軽装備の弓使い、そしてリーダー格らしい長剣使い。

等級から考えても、相当な腕利きの冒険者らしい。

「よろしくお願いしますね。」

挨拶を終えると、弓使いのアーベルが軽い身のこなしで木の上に飛び移る。

「俺が先行して様子を見てくる。」

そう言うと木から木へ飛び移っていく。

「まるでエルフのようですね。」

「はははっ、確かに。あの動きと目の良さから偵察を任せてるんです。

まぁ、エルフには劣りますがね。」

「後で怒られるぞ。」

グローインの低い声が聞こえ、喋れたんですねと心の中で驚くルミア。

彼らから数十メートル離れた木の上で、アーベルは恐ろしいものを目の当たりにしていた。

薄闇の中、赤く染められた地面と散らばる肉片。そして、今まさに食事中であろう魔物だった。

はっきりとは見えないが、何かを飲み込む姿と咀嚼音が聞こえてくる。

雰囲気から漂う危険な感じが伝わってくる。

これは近付かない方が良さそうだ。

静かに戻ろうとした時、声が聞こえてきた。

「食事ヲ覗キ見シテオイテ、挨拶モ無シニ帰ルナンテ、失礼ニモ程ガアルワネェ。

ソレトモ下等ナ猿ナノカシラァ。コレハ礼儀ヲ教エテアゲナイトイケナイワ、ネェ…。」

音程を外したかのような気味の悪い発音の声が響いた。

魔物の首がグルッと回り、三つの赤い瞳が暗闇の中、煌々(こうこう)とこちらを見つめている。

アイツは俺のいる場所を分かっている!逃げなければ殺される⁉︎

その時、彼のこれまでの経験が危険を感じ取り、翻るように木から飛び降りる。

一瞬だが、今何かが見えた気がしたが…。上を見ると、今いた木の幹が喰われたように抉られていた。

「アラ、目ガ良イノカ、感ガ鋭イノカ…オ前トハ楽シメソウネ。」

「ふざけるなよ化け物め。」

アーベルは弓を構え、矢を放つ。

放たれた矢は、正確に魔物の額目掛けて飛んでいくが、直前でかわされる。

見えていたのか⁉︎なら、これでどうだ…!

再び弓を構え、つるを引き絞り、放つ。続けて二発、三発と矢を放ち、それぞれが別の急所に飛んでいく。

「ナカナカノ技量ダケド…。」

狙いを定め、飛んでいく矢は魔物を射抜く直前に消え、次の瞬間には奴の手に握られていた。

「ま、まさか…。矢を掴んだってのか⁉︎」

「キヒヒヒッ。ソノ、マサカ、ダヨォ。」

余裕の表情で明らかに楽しんでいる魔物にアーベルは愕然とする。

他の魔物とはレベルが違いすぎる…。こんな奴がいるなんて聞いてないぜ。

「なら、次で仕留める!」

アーベルは左手の親指の皮膚を噛み切ると、流れ出る血液を矢に塗り、それをつがえ、弦を引き絞る。

すると、構えた弓は光を放ち、矢に風が集まっていく。

「水よ、土よ、風よ。我は流れ、我は鋼、我は刃。抉り、切り裂き、貫き通せ!

風よ巻き起これ、ブラストスティンガー!!!」

風が吹き荒れる中、放たれた矢は風を吸収し、竜巻となって魔物に向かって飛んでいく。

竜巻は地面を抉り、空気を切り裂き、突き進む。

「ヘェ、コンナ魔術ヲ使エルナンテネェ。デモォ…残念ネ。」

魔物は右手の人差し指を上から下へ縦に動かすと、ある言葉を呟く。

「消エ去レ。」

すると、竜巻は縦に真っ二つに分かれ、消え去り、後には風が吹き抜けるだけだった。

「え…。」

目の前の出来事が理解出来ず、言葉が出てこない。

何だ、何が起こった…。奴は何をしたんだ⁉︎

「コレデ、終ワリ?」

「ひぃっ…。」

後ろに倒れるように座り込んだアーベルは、体を震わせながら、後ろへ下がっていく。足に力が入らず、思うように動けない。

「オヤァ、サッキマデノ威勢ハドォシタノカシラ〜?」

頭を傾け、耳まで裂けた口をニヤつかせ、不気味な笑みを浮かべている。

その時だった。遠くの方から足音と、アーベルの名を呼ぶ声が聞こえてきた。

「アラ?オ仲間ノヨウデスネ。ソウダワ!次ハ彼ラデ楽シムコトニシマショー!」

新しい玩具おもちゃを見つけた子供の笑みを浮かべた魔物はクルクルと楽しそうに回っている。

きっとアイツらは殺される…!そうはさせねぇ!!

奴はこちらに注意を向けていない。殺るなら今しかない。

奴との距離は約二、三メートル。この距離なら外さない!

「速さを我に、強きを矢に。貫け!」

単純に速さと威力を上げるだけだが不意打ちを狙うなら、これで十分だろう。

今までにない速さで矢を放ったアーベル。放たれた矢は赤い光を帯び、目の前の魔物を射抜く。

頭部を貫かれた魔物は大きく仰け反り、そのまま動かなくなる。

「やったのか…。」

しかし、アーベルは射抜く直前に、奴が何か呟き、笑う姿が見えていた。

だが、目の前の魔物は動かない。その光景を振り払うように、頭を振り、立ち上がる。

不意に、胸に痛みが走り、手を当てる。

「何だ?」生温かく、べっとりと濡れている。

見ると、手も胸も赤く染まっていた。

「な、何だ⁉︎」

胸が苦しくなり咳き込むと、赤いものが口から吐き出され、体の力が抜けていく。

「アハハハハッ!自分ヲ射抜イタ気持チハドォカシラァ?」

魔物は仰け反った体勢を勢い良く戻し、そのまま息がかかるほどアーベルに顔を近づける。

意識が遠のいていく中、赤い三つ目がこちらを見て、ニヤニヤ笑っているのが見える。

最後の光景が化け物の顔とは…ツイてないな…。

「アーベル!!」

ロッツは彼の名を呼ぶが、地面に倒れる彼から返事はない。

「この化け物がっ!!!」

そう言って剣を構えたロッツは、突然の衝撃によりバランスを崩し、その場に座り込んだ。

「な、何だ⁉︎」

目の前では金色の輝きを放つ盾を持つルミアが魔物の攻撃を防いでいた。

「折角、一人バラバラニシヨウト思ッタノニ、止メラレルナンテ。オ前、何者ナノ?」

「私はこの国を、国民を、愛する者たちを守ると誓った者です。

ロッツさん、アーベルさんを連れて帰ってあげて下さい。こいつは私が止めてみせます。」

ロッツには今、何が起こったのか理解出来ないが、彼女の言った通りアーベルを連れ帰るのを優先するべきだろう。

「分かった。グローイン、行くぞ!」

二人はアーベルの元へ走るが、それを阻止しようと魔物は彼らに襲い掛かる。

「私ガ獲物ヲ見逃スワケナイジャナーイ!!」

目で捉えられないほどの速さで、触手が彼らに喰らいつく。

「無駄です。彼らには指一本、触れさせません!」

その瞬間、ロッツ達を金色の光が包み込み、触手の攻撃から彼らを守った。

「あなたの相手は私です。」

ロッツ達を庇うように魔物の前に立ち塞がるルミア。

「早く行ってください!」

「あ、あぁ。」光に包まれた三人はその場を離れていく。

輝く金色こんじきの盾を左手に、ルミアは目の前の魔物を睨みつける。

「この森を支配していた魔物は倒されたはずですが、まだ残っていたとは思いませんでした。」

「アラ?私ノ子供ガ殺サレタノヲ知ッテイルノネェ。」

「子供?ということは、敵討ち…ということですか?それなら、ここにいる人達は無関係です。」

ルミアの言葉を聞いた魔物は右手の人差し指を顎に当て、ニヤっと笑う。

「敵討チ?ソンナノ、ツマラナイワ。私ハ、タダ殺シタイダケナノ。

私ガ作ル舞台ノ上デ、イーーパイ…死ヌノヲ見タイダケ。」

「そうですか。なら、覚悟しなさい!」

盾を前に構え、真っ直ぐ突っ込んでいくルミア。

「砕け散りなさい!」

金色の輝きは巨大な壁に変化し、堅牢な姿はまさに城壁を思わせるような大きさで魔物に迫っていく。

「コレハ…⁉︎アグッ!!」

潰れる音と共に手に衝撃が伝わってくる。ルミアは壁に張り付く蛙の様な姿の魔物をそのまま殴り飛ばす。

後方へ吹き飛ばされた魔物は木を数本薙ぎ倒し、地面に転がり落ちる。

体が捻じ曲がり、動かない魔物に注意しながら、ルミアは近付いていく。

今の一撃で死ぬはずがありません。この魔物は何か嫌な感じがしますし、気を付けなくては…。

すると、魔物の体がピクピクと動き、捻れ曲がった体が元に戻り始めた。

「やはり、そう簡単には死んでくれませんか。」

「残念ダッタワネ。驚カサレタケド、マサカ聖女ダッタトハネ。

私、聖女ッテ嫌イナノ。ダカラ、イッパイ踊ラセテアゲルワァ!」

「私もあなたが嫌いなので、良かったです。殺しても心が痛まないでしょうから。」

「殺ス?」裂けた口が不気味に笑っている。

「今ノオ前デハ、私ハ殺セナイワヨ。ソレ、魔力デ形作ッタ偽物デショ?本物ハドコニアルノカシラ?」

聖女と言ったことも、本物と言ったことも、この魔物は一体どこまで気付いてるの⁉︎

「驚イタカシラ?」

「何者ですか?」

「ソウ、ネ…魔ノ王ノ一人トデモ言ッテオコウカシラ。」

「魔の王…ですって⁉︎」

もしかしたらと思っていましたが、聞きたくなかったですね…。

「最悪です。」

「フフッ、ドウ言ウ意味カシラ?マァ、イイワ。

サァ、苦シミニ歪ム悲痛ナ表情ヲ見セテ頂戴ィィ!!」

背中の触手から液体を垂れ流し、ルミアに襲い掛かる魔の王。

「速いっ⁉︎」

四つん這いで動く姿はまるで獣のようで、常軌を逸した不規則な動きにルミアの反応は遅れてしまう。

「先ズハ手足ヲ頂クワァ!」

背中から生える四つの触手がルミアに喰らいつこうと先端が大きく開かれる。

「この壁を壊すことは出来ません!」

反応が遅れたが、周りに光の壁を作り上げたルミア。

「ウフフ…ドウカシラネ。」

ルミアはその言葉に嫌なものを感じたが、次の瞬間、触手が光の壁に喰らいつき、周りは衝撃音と煙で包まれてしまう。

「この煙は何…?」

「踊リ狂イナサイ。爆ケル毒液ノ狂想曲。」

壁の向こうから声が聞こえた瞬間、ルミアの嫌な予感が姿を現わす。

魔力で作られた壁が溶け、沸騰したように泡立ち、赤く燃え始めた。

「まずいっ…!!」

彼女は一瞬で光と熱に包まれ、炎の柱が空を貫いた。



ルミアと別れたユートはエリザベス、シャルルと共に野営地で彼女が戻って来るのを待っていた。

「ルミアのやつ遅いな。何かあったのか。」

「大丈夫ですよ。ルミアに限って、何かあるわけが……。」

エリザベスはそこまで言うと急に黙り、森を見つめながら立ち上がる。

「どうした?」

「シャル、感じましたか?」

「はい。微弱ですが、魔物の気配です。それも故意に気配を消しているようです。」

「えぇ、それと…血の匂いですね。」

鼻をヒクヒク動かしたエリザベスの目付きが鋭くなる。

「つまり、誰か殺されたってことか⁉︎」

「そうだと思います。」

「だったら、助けに行かねぇと!」

ユートの声に周りがざわつきだす。

「ユートくん、落ち着いてください。ルミアに何かあったと決まったわけではありません。

それにあの子は強い。自分で解決できるでしょう。」

「そうだとしても…!」

ユートは立ち上がり、森に目を向ける。

「俺は友達を助けに行く。」

そう言ったユートの瞳は光のない夜でも輝きを失わず、青緑色の光を放っていた。

「ふふ、そうですか。では、ここの守りは私とシャルに任せて行きなさい。」

「…お願いします!」

「ユートくん…!」

エリザベスに呼び止められ、ユートは振り返る。

頬を赤らめた彼女はゆっくりとユートに近付き、少し小さな彼の身長に合わせ屈むと、ユートの額に唇をつける。

ふわっと甘い匂いがユートを包み、何が起こったのか分からず、頭が回らない。

青い薔薇を宿した瞳がこちらを見つめ、照れた様子で「ご武運を…。」と告げる。

「お、おう…。」

恥ずかしさのあまり、それだけ言うとユートは走り出した。

彼の後ろ姿を見つめるエリザベスにシャルルはある質問をする。

「行かなくて良いんですか?」

「もちろん行くわよ。私の大切なものを傷付ける者は消し去らないといけないものね…。」

「さすが、魔の王…ですね。」



目の前が白くなり、衝撃が体を貫き、熱で皮膚が焼かれていく。

一瞬の爆発音の後、世界が一つの音に埋め尽くされたかのように、キーンという耳鳴りが彼女を支配していた。

高温の空気が肺を焼いて、上手く呼吸が出来ず、息が荒くなる。

回復魔法を使おうにも、声が出ず、逃げようにも体は痛みで動かない。

周りは白から赤に変わり、音が戻ってくる。

燃え盛る炎の音と木が倒れ、燃える音、そして近付いてくる足音。

「イヒヒヒッ、ナントカ生キテルミタイネ。」

業火の中、佇む醜い魔物の姿が彼女の目に映る。

地面に這いつくばる彼女を見下ろし、嘲笑っている。

「マダ死ンジャダメヨ?オ前ニハモット苦シンデモラワナイト…デナイト、楽シクナイジャナイ。」

上げられた足が彼女の背中を踏みつけ、潰れた音が体を伝って、耳に届いてくる。

悲鳴とも嗚咽ともとれる叫びが燃える森に響き、静かに消える。

「イイ叫ビ声ネッ!!」

倒れる彼女の横腹を魔物は蹴り飛ばし、骨の砕ける音が重く響く。

声にならない叫びと血が吐き出され、彼女の体は地面を転がっていく。

炎で赤く照らされた夜空に煙が立ち昇るのが見える。

その時だった、空に一筋の流れ星が見え、一瞬で消え去る。

「私も今の流れ星のように、一瞬で消えてしまうのでしょうか…。

今まで、国の為、民の為、知恵を力をつけ、一国の姫として頑張ってきたのですが、こんなところで命を失うとは…呆気ないものですね。まだ、何も成し得てないというのに…。」

一筋の涙と共に、消え去りそうなか細い声が零れ落ちる。

「安心シナサイ。オ前ノ命ヲ一瞬デ奪ウナンテシナイワ。マダマダ楽シマセテ貰ウワヨ。」

舌で唇を舐め、耳まで裂けた口は気味の悪い笑みを浮かべている。

拷問の方法でも考えているのか背中の触手が楽しそうに蠢いている。

その姿を横目で確認すると、彼女は唇を噛み締める。

強く噛んだのか唇からは血が流れている。

「諦め…たくない…!」

小さな声で呟いた彼女は立ち上がるために体を少しずつ動かすが、その度に全身に激痛が走り、体は痙攣したかのように震えだす。

だが、痛みに耐えながら、ゆっくりと体を起こし、膝に手をつき力を込め、立ち上がる。

しかし、足の力が抜け、崩れ落ちそうになるのを必死に堪えながら、彼女は魔物を睨みつける。

首を傾け、それを気にもしていない様子の魔物は「ナァニ?」と問いかける。

「やっぱり、諦めたくないっ!!

死を受け入れて、生きることを諦めて、何もしないなんて…嫌。

私は最後まで…足掻いて、絶望を希望にしてみせる!

あなたの様な悪には屈しない!!」

足の力が抜け、その場に座り込んでしまう。立ち上がろうにも、なかなか力が入らない。

「ソォ。デモ、立ツノモヤットジャナイ。オ前ノ運命ハ変ワラナイワ。私ニ弄バレナガラ、苦シンデ死ンデイクノヨ。」

魔物は笑いながら、近付き、目の前で止まると、長く鋭い爪が生えた腕を振り上げる。

「サァ、苦シミト痛ミ、絶望ヲ味ワイナサイ。苦悶ニ歪メル可愛イ顔ヲ血ニ染メテ、踊リ狂ウ姿ヲ私ニ見セテ頂戴ィィィィ!!!」

腕が振り下ろされ、目を強く閉じる。その瞬間、先程の流れ星を思い出し、彼女は願う。


誰か、お願い…。私に力を貸してください!!


彼女の願いが叶ったのか願いは風となり、森を吹き抜け、彼女のもとへ駆けつける。

それは一瞬のことだったが、時間が止まったように感じられた。

突然の風は魔物の手を一瞬止め、音を消した。さらに目の前の獲物に意識が集中し、周りへの注意が薄れていた。

偶然が重なったのか神の悪戯か、もしくは、その奇跡の一瞬は彼が引き寄せたのか…。

死角から飛んできたナイフに魔物は気付かず、背中に突き刺さった痛みで叫びをあげる。

マンドラゴラの悲鳴にも似た叫び声をあげた魔物は触手を蠢かせ、怒り狂う。

「誰ナノ!私ノ楽シミヲ邪魔スル奴ワ!四肢ヲ引キ裂キ、細切レニシテヤル!!」

その時、鈍い輝きを放つ一閃が魔物の目を斬り裂き、視界を奪う。

彼女の前に現れた金髪の少年は火花が散る拳程の大きさの玉を二つ魔物に投げると、「伏せろ!」と言って、動けない少女の上に覆い被さる。

目の傷を再生させた魔物が目を開くと、閃光と爆風が魔物を飲み込み、衝撃が体を吹き飛ばす。

爆風の威力と距離を甘く見ていたのかそれは彼らも飲み込もうと炎を伸ばしてくる。

「やべぇ!」彼女を庇うために抱き締める腕に力が入る。

「大丈夫です。」

耳元で彼女の声が聞こえ、爆風から彼らを守るように光の壁が現れ、炎の波は壁に阻まれ、消えていく。

「今のは…?」

「私の力です。そんなことより、そろそろどいてくれませんか?」

彼女に馬乗りになる形で覆い被さっているのを思い出し、転がるように慌てて離れる少年。

お互い顔を合わせられないほど顔が真っ赤になっている。

「た、助けていただいて、ありがとうございます。」

「いや、別に…。」

沈黙が話しづらい空気を作ってしまい、どうすればいいか分からなくなる。

「ルミア。」「ユートくん。」

息ピッタリに声をかけてしまった二人は目を合わせたまま、固まってしまう。

「あーと…無事でよかった。二人も心配してたぞ。早く帰ろうぜ。」

「えぇ、そうですね。」

立ち上がり、ルミアに手を差し伸べるユート。

ルミアがその手を掴もうとしたその時、音程の外れた不気味な声が聞こえてきた。

「モォ、帰ルノ?ソンナコト、私ガ許スト思ッテイルノ?」

燃え盛る炎の中に佇む影は両腕が無く、体のあらゆる場所が欠損し、再生しているのか泡立つように蠢いている。

「ルミアは休んでいてくれ。あれは俺が止める。」

「ダメです!ユートくんでは勝てません。私が足止めしますので、その間に師匠達を探して来て下さい。」

フラつく体でなんとか立っているが、ルミアはどう見ても戦える状態ではなかった。

「お前じゃもっと無理だろ。俺がやる。安心してくれ、俺にはやらなきゃならないことがあるんだ。それまでは死なねぇよ。」

鈍く輝く剣を構え、左手には小さめの盾、鎧はすね当てと腕、服の下に鎖帷子くさりかたびらを着ている。

ユートは盾を前に構え、剣を後ろに向け、魔物に向かって走り出す。

「待って!」

ルミアは手を伸ばすが、彼には届かず、空を掴み、その場に膝をつく。

「はぁぁぁぁぁ!!!」

炎の中にいる魔物に向かって走るユートは、剣先を真後ろに向け、体に隠れるようにし、剣筋を見せないように走る。

「サッキトハ違ッテ、真ッ向カラ向カッテ来ルナンテ、人間テ本当ニ馬鹿ネ!!」

背中に残る二本の触手の口を大きく開け、失った両腕の代わりにユートに向かって伸びていく。

巨大な口がユートを捉え、地面ごと抉るように喰らい付き、衝撃と同時に土煙が舞い上がり、それを覆い隠す。

「ユートくん!!!」

涙が流れ、体が震えてしまう。頭が真っ白になっていき、感情が溢れてくる。

私がもっと強ければ、守れたはずなのに…。私が代わりに行ってれば、彼が死ぬことはなかった…。

「ヤッタ!ヤッタワ!!アハハハハッ、むごタラシク苦シマセルコトハ出来ナカッタケド、殺シテヤッタワァ!!!」

魔物の高笑いが遠くで聞こえる。許せない…アイツは命に変えても私が倒す!!

「今度ハ、オ前ネ。」

顔の半分を失った魔物はこちらを睨みつけるルミアを見て笑い、彼女の方へゆっくり歩いていく。

どんな苦痛を与えるか、痛み、恐怖、苦しみに悶える歌声を滑稽な踊りを早く見たい。

魔物の頭の中はルミアをどうやって苦しめるかでいっぱいで、土煙の中で動く影に完全に気付いていなかった。

「甘いんだよ!」

土煙の中から勢い良く飛び出したユートは、先程と同じように剣先を後ろに向けた体勢で魔物の目の前まで行くと、左向きに回転し、その力と走る速さを剣に乗せ、斬りかかる。

「オ前!生キテイタノッ⁉︎」

驚きの声を上げる魔物は失った両腕を再生させ、剣を防ごうとするが、再生が間に合わず、不完全な柔らかい腕は斬り飛ばされる。

「アガァァァァァァァァァァ!!!!」

緑色の体液が流れ落ち、魔物の顔は痛みと怒りで醜く歪む。

トドメを刺すために首を斬り落とそうとしたユートだったが、剣を振るう寸前に魔物の体液は蒸発し、煙に変化したそれは周囲を包んでしまう。

「クソッ!全然見えねぇ。アイツの魔法か?」

次の瞬間、腹部に砕かれるような衝撃と痛みが走り、吹き飛ばされた体は宙を舞い、地面に転げ落ちる。

一瞬、呼吸が止まり、咳き込むと同時に、血を吐き出すユート。

「人間ノ分際デ、フザケタコトスルワネェ。」

再生を続ける体はボコボコと泡立つように蠢いており、先程斬り落とした腕も再生が始まっていた。

「オ前ハ肉片スラ残サナイ。少シズツ刻ンデ、焼キ払ッテヤルワ。デモ、先ズハ叩イテ肉ヲ柔ラカクシナイトネ。」

触手がむちのようにしなり、ユートに打ち付けられる。

反射的に構えた盾は一瞬で砕かれ破片が舞い散り、衝撃は腕の骨を砕き、体はミシミシと音を立て、吹き飛ばされる。

「ユートくん!!」ルミアの叫びがその場に響く。

「アラ、チョット強クシ過ギタカモネェ。」

全身の骨が砕かれたかと思う痛みにユートは、倒れたまま動けずにいた。

意識が飛びそうだ…。腕は完全に骨が折れてんな。

どうすれば、アイツに勝てるのか想像もつかねぇな。いや、ルミアの言う通り…俺は勝てない、絶対に…。

だから、なんとかルミアを逃がさないと。

戦闘で疲弊した体を無理に動かし、立ち上がるユート。

「良カッタ。マダ生キテルミタイネ。」

魔物の体は完全に再生しているようで、背中の触手も両腕も元に戻っている。

はぁ…不意を突いたからここまでできたけど、ここまでか。

諦めが彼の頭をぎり、ため息と何故か笑みが溢れる。

「俺にお前は倒せない…俺には誰かを守れるような力も英雄になれる素質ももないからだ。」

「ダッタラ、サッサトクタバリナサイ。地面ニ這イツクバッテ死ヌ最期ノ瞬間マデ絶望ニ染マル顔ヲ私ニ見セテ頂戴!!」

「でもな、俺は諦めが悪いんだ。だから、俺はこの命が尽きるまで抗い続けてやる!

お前が見る顔は絶望に染まる顔でも、苦しみに歪む顔でも無く、敵に立ち向かい、生きようと希望を掴もうとする顔だ!」

「ホザクナッ!!死ノ恐怖ヲ味ワイナサイッ!!」

伸びる触手は物凄い速さで蛇の様に地面を這い進み、大きな口を開け、喰らい付こうと襲い掛かる。

全てを飲み込む暗い空間が目の前に迫り、自らを奮い立たせる為か恐怖を消すためか、雄叫びを上げて剣を構えたユートは、目の前に現れた金色の壁と彼女の声に目を丸くする。

「あなたは馬鹿なんですか!勝てないと分かっていて、戦うなんて…。

私なんかほっといて逃げればいいのに…もっと自分の命を大切にして下さい!」

「その言葉、そのまま返してやるよ!馬鹿はお前だろ!

ほっとけるわけねぇだろが!命を粗末にしてんじゃねぇよ!!」

今まで自分を抑え、姫として生きてきたルミアは誰かに怒鳴られたことなどなかった。

だからなのか、怒られたことへの驚きと共に喜びを感じていた。

「今までどうだったか知らねぇけど、助けて欲しいなら助けてって言えよ!

俺は友達を見捨てたりしねぇから…支え合うって約束しただろ?友達が傷付くとこなんか見たくないんだ。」

「ユートくん…。」

間違っていたのは私ですね。大切な人には傷付いて欲しくないと思うあまり、自分を犠牲にして、彼を傷付けていたなんて…。

「邪魔ヲスルナァァァァァ!!!」

金色の壁にぶつかり、潰れた触手を蠢かせ、怒りを露わにする魔物。

「ユートくん、お願いがあります。」

フラつき倒れそうになるルミアの肩にそっと手を触れ、彼女の体を支えるユート。

「私と一緒に戦って下さい。」

真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に頷く。

「あぁ。さっさとあの化け物を倒して二人のところに帰ろうぜ。」

決意を新たにした二人の見つめる先には怒り狂う魔物の姿があった。

どうでしたか?イマイチでしたか?

説明が足りない所とか多いと感じると思います。自分でも読み返してて思うんですが、それは読み進めていただくと分かったりするので、是非続けて読んでもらえると嬉しいです。

では、続き上げていきます。ではでは!

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