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千夜の着替えが終わり、急いで入学式の会場である体育館へと向かい走る優人と千夜はその道中、先ほどの事を話していた。
「いい!?本当次やったら本気で怒るから!!」
「は、は~い……」
優人の顔はいまだほんのり赤い。
なんだかその反応が少しだけ新鮮で罪悪感を抱きつつも少しだけ千夜は面白がっていた。
「ほんとにほんとに次やったら知らないから!!」
「わ、わかったよ、優人君。」
千夜が少し面白がっているのがなんとなくわかったのか優人は釘を刺すようにもう一度千夜へ訴えかけた。
「ほんと、千夜は俺の事なんだと思ってるんだか……」
「大事な幼馴染って思ってるよ。」
「……そういう話はしてない。」
千夜の返答にため息をつきながら優人はガックシと肩を落とした。
「そもそもそういうことできるって事はやっぱり俺の事……。」
ぼそぼそ千夜に聞こえない声で言葉をこぼす優人。
そんな優人に首をかしげながら千夜はふと思い出したように「あっ!」と声を上げた。
「そういえばね優人君。今朝も見たの、あの夢!」
「え?あ、あぁ……修学旅行で倒れてた時に見た夢?」
修学旅行時、白装束の男性が現れ、変な話をされたことを千夜は優人にも話していた。
というより、話さなければいけない状況だったというのが本当のところだ。
白装束の男性の不思議な行動により光に包まれ倒れた千夜を見つけたのはほかでもない、優人だった。
優人の話では境内で突然倒れた千夜を観光に来ていた人たち、寺の人たちが囲んでおり、とりあえず救急車を呼んで病院へ搬送したとのことだった。
勿論千夜が目を覚ましたのは病院で、何があったのかと優人に問われたのだ。
ごまかすのも心苦しかった千夜はそのすべてを優人に話した。
信じがたいであろうその話は信じてもらえないかもしれないと思いつつ話した千夜だったが、優人は千夜の話を「信じるよ。」といって信じてくれた。
そして、その修学旅行での出来事以来、頻繁にその夢を見るようになっていた。
「今回も名前とか何も聞けなかったの?」
いつも名前に靄がかかったように名前だけが聞き取れないと優人に話していたこともあり、優人からはそんな質問が返された。
「うん。今回も駄目だった。」
別に名前が解らない事はそんなに大きなことではないんじゃないかと優人は言った。
だけど、千夜はなぜか名前を思い出さなければいけない気がしており、その名前を聞きたいといつも願っているのだ。
「それに……本当にあの夢は一体……。」
夢の中の出来事なはずなのにひどく体に襲い掛かる感覚が現実味があって、そんな夢の中の自分が抱いている感情もひどく現実味を帯びて伝わってくる。
そう、夢なのかと錯覚するほど鮮明なのだ。
だからこそあの不思議な夢が気にかかるというのが本心だった。
それに、それだけじゃない。
「っと、話はあとにしよう!とにかくもう少し飛ばして走ろう!」
「!!」
千夜の手が突然優人につかまれる。
急がなければいけないという思いから千夜の手を取り、スピードを上げて走り始めたのだ。
そんな優人に掴まれている手のぬくもり。
そのぬくもりこそ今、一番千夜を悩ませているものだった。
(…………また、この感じ。)
修学旅行先で夢を見てからというもの、どうも変なのだ。
昔から当たり前のようにつながれてきたこの手。
その手がひどく懐かしくて、ひどく離したくないと思うようになってしまったのだ。
今まで何気もなかった行動に抱くようになった感情に千夜は戸惑いを覚えていた。
「そこの二人、止まれ。」
「!!」
体育館へ向かい走る二人の前に二人の青年が立ちふさがる。
とまれといわれたこともあり、とっさに脚を止めて立ち止まる千夜と優人をその二人の青年はじっと見つめてきていた。
一人の青年はブラックサファイアのような暗い青色の髪をしており、一人の青年は対照的に明るい金色の髪をしている。
その髪色はまるでそれぞれの性格を示しているかのように真面目そうな雰囲気と軽そうな雰囲気が二人に伝わった。
対照的のような二人の青年。
その青年たちとの遭遇に二人は戸惑いを隠せなかった。
「え、えっと、そこ、どいてくれない?俺たち急いで体育館に行かなきゃならないんだけど!」
何故止められたのかはわからないけれど、自分たちは今急がなければならない。
構っている時間は無いと伝える優人に対し、真面目そうな青年が睨むように二人を見つめ、口を開いた。
「断る。」
「なっ……!」
思いもよらない返答に驚く千夜と優人。
一体何故だというのだろうか。
そんなわけのわからないという顔を浮かべていると今度は軽そうな青年が口を開いた。
「相変わらず二人は仲良いですね。……妬いてしまいます。」
にっこりと優しい笑みを浮かべたのちに笑顔なのに怖いと感じる笑みを浮かべだした金髪の青年に千夜と優人は背筋をぞっとさせた。
この人はなんだか危ない。
そう本能的に察した。
「……相変わらずだとか、通さないとか、何なんだよあんたたち!俺たち急いでるって言ってるんだけど!!」
関わってはいけない。
そう感じた優人は背に千夜をかばうように前に出て二人を睨みつけた。
そんな優人の背中に隠れながら千夜は静かに優人に言葉をかける。
「ひ、優人君。け、喧嘩は……。」
「大丈夫。千夜は俺が守るよ。」
怯えるながら語り掛けた千夜を安心させるかのようにはっきりと断言する優人。
しかし、千夜が言いたいのはそういう事ではなく、喧嘩をするの事態がまずいのではという事だった。
(優人君、喧嘩っ早い癖高校入ったら治すとか言ってなかったっけ……?)
優人はとても優しい性格だからこそ正義感が強く、曲がったことが許せない真面目な性格だ。
そんなこともあってか喧嘩っ早い。……というか、割と短気なのだ。
それを止めなければと一瞬思った千夜だったけれど、言っても無駄なことを察し、止める事をあきらめた。
(もうどうなったって知らないよ……。)
入学そうそう教師などに眼をつけられることを恐れていたというのが本心だった。
しかしそんな千夜の本心は伝わらず優人と真面目そうな青年はにらみ合っていた。
「……うん。やっぱり平助は平助ですね。安心しました。」
「…………は?」
突然金髪の青年がにっこりと笑みを浮かべて変なことを口走る。
優人はその言葉にひどく不思議そうな顔を浮かべた。
しかし、不思議そうな顔を浮かべたのは優人だけではない。
千夜も同じだった。
「平……助……。」
どこか聞き覚えのあるその名前を千夜はゆっくりと口ずさむ。
知っている。
その名前を。
そんなことを思っていると優人が苛立ったように口を開いた。
「ねぇ、人違いなんだけど。俺は平助なんて名前じゃないし、あんたたちの事なんて知らない!そこ、どいてよ。」
優人はいっそうつよく青年たちを睨みつけた。
だけど、金髪の青年はそんな優人を見て笑みを浮かべ続けている。
……どこか楽しそうに。
「そんなに睨まないでくださいよ。それに、人間違いじゃありませんよ。杉平優人君に輝夜千夜さんでしょ?」
「え……な、何故私たちの名前を……。」
金髪の青年の言葉に反応する千夜。
反応するとともに身を乗り出す千夜を優人が制する者の、千夜は構わず青年たちに問いかけた。
「どうして、どうして私たちの名前を知っているんですか!?それに、平助って……!あの、あなた方は一体っ……!」
青年たちが自分たちの名前を知っているのはもちろん気になる。
だけど、それ以上に金髪の青年が優人を平助と呼んだことがひどく引っかかっていた。
それもあってかくい気味に問いかける千夜の姿をみて金髪の青年はにっこりと笑った。
「相変わらずですね、貴方も。少し安心しました。」
「え……。」
千夜は相変わらずの意味が解らなくて驚くと共に、なぜか危ない雰囲気を感じ一方城へ下がる。
やはり笑みが怖い。
そんなことを思っていると真面目そうな青年が口を開いた。
「……総司。やるなら早くしろ。これ以上は時間の無駄だ。」
どこか苛立ちのようなあきれのような感情が見える声で真面目そうな青髪の青年は金髪の青年に何かを促し始める。
それを受けて総司と呼ばれた金髪の青年は仕方がないという表情を浮かべた。
「……はぁ、わかっていますよ。でもね、一君。久々の再会なんですよ?もう少しおしゃべりしていたいという気持ちを汲んでくれたりとか――――」
「ないな。」
一と呼ばれた青年は総司と呼ばれた青年の言葉を遮り、否定の言葉を紡いだ。
そんな反応にため息をついて「相変わらず貴方はクールですね。」と言いながら総司と呼ばれた青年は一枚の紙を胸元から取り出した。
「式により封じられし物体よ。その真の姿をもってここに現れよ。――――――【上総介兼重】。」
総司という青年が紙を掲げ、不思議な言葉を紡ぐとその紙は光、やがて一つの刀へと姿を変えた。
そんな不思議な光景を目の当たりにした優人と千夜は目を丸め、何が起きたのかわからないという顔をしている。
「受け取ってください、平助!」
突然紙から刀へと姿を変えたそれは優人に向かい投げられ、優人はとっさにそれを受け取った。
「って重っ!!!おい!こんなものいきなり投げたら危な――――」
「式により封じられし物体よ。その真の姿をもってここに現れよ。――――――【加州清光】。
「式により封じられし物体よ。その真の姿をもってここに現れよ。――――――【鬼神丸国重】。」
優人の言葉を遮り、総司と呼ばれた青年、そしてそれに続きはじめと呼ばれた青年はまたも紙から刀を出して見せた。
「な、何なの本当、さっきからっ……!」
手品ではない。
それは渡された刀の重みでなんとなく察していた。
だけど、だとしたらこれはどういう事なんだ。
そう思いながら優人は二人を見つめていた。
「さぁ、抜いてください、平助。」
「は……?」
「早くしろ。時間の無駄だ。」
刀を抜けと促される優人は首を傾げた。
そして言われた通り刀を抜こうと刀を持ち直してはみるものの、その手は動こうとはしない。
「どうした。早くしろ、平助。」
早くと促されるけれど優人は固まって動きはしない。
しばらく沈黙がその場に広がった。
「……はぁ、あの人が言った通りですか。なんだか気に食わないですね。」
「……あの人?……なぁ、あんたたちは本当なんなの?一体何が目的でこんな事っ……!」
総司と呼ばれた青年の言葉に反応を見せた優人。そんな優人の言葉に総司と呼ばれた青年は小さく笑った。
「目的ですか……。目的は一つですよ。それは……――――――貴方に刀を抜かせることです!!!」
「!!」
突然地面を強く蹴り、一瞬にして刀を抜いて高々と宙から優人へと切りかかってくる総司と呼ばれた青年。
それを何とか鞘に収まったままの刀で受け止める優人。
「……本当、意外と強情ですよね。あぁ、頑固といったほうがいいですか。まじめすぎるところが本当、貴方の傷ですよ、ね!」
総司と呼ばれた青年は優人の刀をとぶつかり合う自身の刀で反動をつけて身軽にまたその身を宙に浮かし、優人の背後へ回る。
そしてすぐさまその腕を千夜の腰へ回し、千夜を抱き寄せ優人と千夜を引き離した。
「いやっ!離して!!!」
優人の元へ逃れようと暴れる千夜。
しかしそんな千夜の首にひんやりと冷たいものが当てられる。
「動かないでください。動いたら首、飛んじゃうかもしれませんよ?」
耳元でささやかれる背筋をぞっとさせる声に千夜の体はぴたりと固まる。
紙から現れたこの刀は偽物なんかじゃない。
本物だと瞬時に察したのだ。
そしてこれは単なる脅しではない。
本気で切られるかもしれないという恐怖が千夜を襲った。
「千夜!!!このっ……!千夜を離せ――――」
とっさに千夜を取り返そう地面を強く踏み込むものの、後方へと振り向いた優人との間合いをすでに一と呼ばれた青年が詰めていた。
「遅い。」
一と呼ばれた青年の瞳はまるで人斬りのように鋭く優人をにらみつける。
優人はその瞬間、殺られると覚悟した。
千夜も優人の身に危険が迫っていることに焦りを覚え、とっさに大きな声で叫んだ。
「やめてぇぇ――――――――――――!!!」
自身の首に突き立てられている冷ややかの物がその首を切り裂くかもしれないという事など気にも留めず、千夜は叫んだ。
そしてその次の瞬間だった。
「やめろお前ら!!!」
新しい声が大きくその場に響いた。
「……左之さん。」
総司と呼ばれた青年に左之さんと呼ばれる男性。
その男性の体格はよく、見るからにそのなりは教師という事を瞬時に理解させた。
「おい、総司、一!お前ら式にいねぇと思ったらこんな所で何やってやがんだ!」
明らかにイラついた態度でゆっくりとこちらへ歩いてくる左之と呼ばれた男性。
そしてその男性ははじめと呼ばれた青年の頭の上に手刀を落とした。
「っ!!な、何をする……!」
「何をする……!じゃねぇよ!ったく、お前らこそ何してんだ。特に総司!!…………千夜にんな物騒なもん突きつけてんじゃねぇよ。」
ひどく怖い表情で総司と呼ばれた青年をにらみつける左之という男性。
総司と呼ばれた青年は千夜の首元から刀をどけて反省の素振りのない声で返答をし始めた。
「嫌ですね。本気じゃありませんよ。ただ、ちょ~っとうるさかったので静かにしてもらいたいなぁってお願いしていたんです。」
(さ、されてない!!お願いはされてない!!)
怖くて言えないけれどそんなことを思いながら千夜はゆっくりと総司と呼ばれた青年から離れ、優人の元へ駆け寄った。
「千夜っ!!」
優人も千夜へと駆けより、自身の胸へ飛び込んでくる千夜を抱きしめた。
「……妬けるなぁ、おい。」
「大人の嫉妬は見苦しいぞ。左之。」
「うるせぇよ、一。」
小さな声でやり取りを始める二人。
そんな二人の元へ静かに総司と呼ばれた青年も合流をした。
「……見てのとおり駄目でした。」
「だから言ったろ、あいつは抜かねぇってな。」
あきれたような声を出しながら左之と呼ばれた男性は総司、一と呼ばれた青年の肩に腕を回し、二人に耳打ちをした。
「お前らはとりあえず下がれ。あいつのことは俺に任せときゃいいから。わかったか?」
左之という男性の言葉に二人は大きなため息をついた。
そして総司と呼ばれた青年は「わかりましたよ。」と言いながら左之と呼ばれた男性の腕を払った。
「杉平優人君。輝夜千夜さん。」
名前を呼ばれて青年たちへと振り返る優人と千夜。
優人は青年たちを睨みながら強く千夜を抱きしめる。
そんな姿を見て総司と呼ばれた青年は肩をすくめた。
「もう手は出しませんよ。それに、今の君とやってもつまらないですしね。」
まるで挑発をするような言い方をする青年に苛立ちを覚える優人。
カッとなった優人はとっさに口を開いた。
「あんたみたいな頭のねじ飛んでそうな人の言葉なんて信用ならないね!」
またいつ襲い掛かってくるかと警戒を見せる優人に対し、今度は一と呼ばれた青年が口を開いた。
「突然襲い掛かったのは詫びよう。しかし、こちらにも事情があった事を理解してもらいたい。」
「じ、事情……?」
怯えながらもその事情が気になりという駆ける千夜。
そんな千夜に静かな声で優人が「そんなのどうだっていいよ。」と聞くことを制した。
「どんな事情があったにせよ、千夜をこんなに怯えさせた事に変わりはない。特にそっちの笑顔が怖い奴!俺はあんたを許さないから。」
そういっていっそう強く睨みつける優人。
そんな優人を見ても総司と呼ばれた青年はにこにこ笑っている。
「そんな怖い顔をしないでくださいよ。僕は君たちと仲良くしたいと思っていますよ。」
「なっ……!あんな事しといて、ふざけるなよ!」
飄々とした口調に余計苛立ちを覚え、大きな声で叫ぶ優人。
そんな優人の声に驚き千夜の体がびくっと跳ねる。
それに気づいた優人は千夜に「ごめん。」と急いで謝罪をして少し優しい顔に戻った。
「……ところで知っていますか?この学園では生徒手帳ってとっても大事なものなんですよ?」
「……は?」
突然切り出された話題に理解ができず、疑問を口にする優人。
次の瞬間、そんな優人の目に二冊の生徒手帳が映った。
「君たちの生徒手帳です。」
「なっ……!」
愉快そうな笑みを浮かべて生徒手帳を振る総司と呼ばれた青年。
そしてそれをあろう事か自分の胸元のポケットへとしまいだした。
「か、返せよ!それ、俺たちのじゃん!」
「あはは、嫌ですよ。せっかくの人質……いえ、物質何ですから。」
「は、はぁ!?何言ってんだよ!わけわかんないんだけど!!」
何が何だかわからないという顔を浮かべる優人ににっこりと笑みを浮かべて総司と呼ばれた青年は手に持っていた刀を紙へと戻した。
「紹介し忘れていましたが僕は上条総司。そして先ほど君の背後を取ったのは双子の弟の上条悠一です。僕らはこの学園の生徒会長、副会長をしています。あ、ちなみに僕らを止めたこの先生は佐野浩介といって生徒会顧問であり、君たち一年A組の担任です。」
「う、嘘だろ……こんな危ないのが生徒会って……」
この学園大丈夫だろうか。そんな不信感を抱く千夜と優人の顔を見て総司は苦笑いを浮かべた。
「わぁ~傷つきますねぇ~。これでも立派に仕事してるんですよ?」
「信用できるわけないよ、そんなの!」
明らかに信用など論外な行動をしておき、この発言。
信用などできるはずがない。
さらに言えばそんな人物がこの学園では大事だという生徒手帳の強奪。
まさにどこを信用すればよいのかという状態だ。
「さて、そんな信用云々は置いて置き、入学式の今日は授業が一限目の学校説明のみです。よって、一限目が終わったら生徒会室へと来てください。ちゃんと来てくれたらその時にこの生徒手帳は貴方たちに返します。」
「なっ……!わ、わけわかんないよ!今返せよ!」
「駄目です。それじゃ、待ってますよ。」
返せという優人の言葉を聞き入れることなく総司と悠一は去っていく。
それを追いかけようとする優人の襟元を佐野が掴んだ。
「なっ!離してよ先生!生徒手帳取り返さないと!!」
襟を掴まれ暴れる優人。
だけどそんな優人の頭を襟をつかんでいる反対の手で掴み、ワシャワシャと頭を掻きまわした。
「大丈夫だ。悪い様にはされねぇよ。ったく、俺に任せろっつったのにあいつは全く……。」
「どうしようもねぇな。」と言いながらため息を吐き、去っていく二人の背中を見つめる佐野。
そしてその視線はやがて優人と千夜へと向けられた。
「んで、入学式早々遅刻の両名。とっとと体育館向かうぞ。」
「は、はい……。」
生徒手帳の事が気になるものの、教師に迎えに来られては仕方がない。
その場は教師である佐野の言葉を信じ、二人は渋々体育館へと連れられ式に参加した。