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三章 ギルドと内通者《1》

宿屋 《月明》 玄関ロビー



「アル、そろそろ行くぞ。」


「準備は万端じゃ!」



寝ぐせが少し気になる様子のアルではあったが、お互いに顔を合わせ準備の確認を済ませると、希望を胸に宿屋の扉を勢いよく開き朝の街へと出掛けた。



今日の目的、それは金銭の安定的な確保である。昨晩はヴォルフが手配してくれたお陰で食事も宿も何とかなったが、これから先はヴォルフを頼るわけにはいかない。


どんな世界でも生きていくには絶対に欠かせないものがある。それは 《金》 だ。


ましてやこの世界に来たばかりの新には金だけでなくいざと言う時に助けてくれる人脈もない。ヴォルフがいるにはいるが何度も助けて貰うわけにはいかない。


つまり今すべき事は仕事を一刻も早く見つけ、安定して金銭を稼ぐことなのだ。

その仕事のことだが幸運なことに一つ当てがあった。



「今日はヴォルフが言っていたギルドとやらに行くのじゃろ?」


「あぁそうだ。早く仕事を見つけて金を稼がないと、今日の分の食事も宿も手配できないからな」



当てにしていたのはギルドのことだ。


しかし仕事内容はどういった内容なのか、そもそも見た目からして子どもの二人に仕事をあたえてくれるのか。


仮にどんな酷くキツい仕事内容であっても働かなければ到底生きてはいけない。昨日はただ運がよかっただけに過ぎない。これからは自分の手でなんとかしなければ。


そういった不安と焦りが新を苦しめていた。



そうこう考え込みながらも歩いていると、気がつけば昨夜訪れた大衆食堂グラン・トリノの前まで来ていた。



「気がつかなかったが、この店ギルドから近い場所にあったんだな。」



アルに話しかけたつもりだったのだが、表情を見る限り明らかに新の発した言葉はアルには届いていなかった。



「昨日の飯はほんとに美味かったのー。なぁ、あらた!もし金が手に入ったら今日もここで夕食をとらぬか??」



相当ここの料理が気に入ったのだろう。昨夜の料理を思い出しているのか今にも涎が口から溢れそうだ。


だが、珍しく新もアルと同じ意見だった。正直あんなに美味しい料理を食べたのは生まれて初めてだったと迷わず言える。



それに、どんな小さな事でもそういった目標を持つことは大事なことだ。



「そうだな。そのためにもまずはギルドに行って仕事探しだ。またここで美味い飯が食いたいならアルも頑張らないとな」


「任せるのじゃ!」



少しばかり寄り道をしてしまったが宿屋を出た時よりも二人の目には輝きが増していた。


不安な事ばかりの生活だが、ここにきて些細ではあるが二人の共通の小さな目標とそれを叶えるための確かな意思がそこにはあった。



朝までの重い足取りから一転。

二人は笑顔を浮かべ、足早にギルドへと向かった。



ギルドと呼ばれるその建物はこの街随一の敷地面積と高さを有している。外観は純白のドーム型を形成しており、百年以上も昔に人々の手で建造されたとは思えぬほど立派な建物である。


聞いた話では現在の技術でこれ程の建造物を建てるのは不可能に等しいという。


この街にとっても価値のある重要な建物なのだろう。歴史こそ感じるが汚れなどは一切ない。手入れが行き届いている証拠立てる。



そんな有書ある建造物の前に似つかわしくない格好をした二人の人間が立っていた。



「話には聞いていたが...これはすごいな」



顔を上げ、改めて建物の大きさとその堂々とした立ち姿を実感する。その圧倒的な存在感に新は中に入る一歩が踏み出せないでいた。


その横で一人。アルだけは平然とした様子で建物を見ていた。



「あらた入らんのか?」


「どうしてお前はそんなに平然としてるんだよ」



アルは何を言っているのか到底理解できないと言いたげな顔でこちらを見つめた。



「んー。確かに立派だと思うが、神界にもこれぐらいの物なら幾らでもあったしのー。」


(なるほどな)



アルの奇妙な態度の理由がなんとなく分かった新であった。


しかし、今はそうこう話をしている場合ではない。一秒でも早く仕事を見つけなくては。


ギルド前に立ち尽くして早 十分。気持ちを整理した新はようやくギルドの大扉に手をかけ、鳴り止まぬ心臓の鼓動と共に中へと入っていった。

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