[Domestic violence]
…その転倒以来、暫く単車に
乗らない日々が続いて
季節はいつの間にか
気付いた時には
もう当たり前に冬だった。
ある晩、
大河ドラマを視てたら
なんか、、あれ?って
思う部分が有って
「歴史読本」とか
小和田哲男先生や桑田忠親先生の
著作を引っ張り出して調べてた。
でも調べきれんくて
何かー、煮詰まったから、、、
冷蔵庫から
おビールちゃん取り出しながら、
(久々にチャイの
くるみ割り人形でも聞くかな、
クリスマス近いしなー、
キーロフバレエ、又見たいな、)
なんてCD探してたら、、、
テーブルの上で
ケータイが振動して
勝手に動き始めた。
ブーブー言いながら
斜め右に回転する様に。
ほへーって見てた。
…はっ!として電話に出る。
「…猫か? 俺だ。
もう飲んだか?」
「は?いや? これから。
てか、元気かよ?久々ー?」
「ちょっと来てくれ、、、
…頼む…、、、」
「は?どした?
なんか有ったんか?」
「…来てくれ、頼む。」
随分、久し振りだったが
息が荒いし半泣き?だし、
何か有ったと思って、
直ぐにケンジんちへ向かった。
さみーから仕事のトラックで。
…なんだろ?
嫁とケンカでもして
実家に帰られた?
お袋さんが亡くなってから
親父さんが飲んで暴れて
しょうがないって言ってたな、
結構、ケンカ強いくせに
涙もろいってゆーか
気が弱いってゆーか、、、、
ケンジんちは
玄関灯も点いて無くて、
(真っ暗じゃんか?)
「ケンジっ!!来たぜっ!!!
おいっ!!ケンジっ?!!」
鍵は掛かって無いし。
返答が無いから
勝手に入って玄関上がった。
変な雰囲気。
リビングのドアのガラスから
明かりが見える。
「お邪魔しまーすー?」
リビングのドアを開けたら
そこになんか、
デカイ塊が倒れてた。
「…う、親父さんっ?!!!」
ケンジはリビングのソファーに
いや、ソファーには座らず
床に座り込み、
放心状態でソファーの座面に
もたれ掛かっていた。
ケータイを握り締める右手は
真っ赤だった。
テーブルの上には
「いいちこ」とかゆー焼酎の
1リッターの紙パックが
倒れて溢れまくりで…
灰皿はひっくり返しで、、、
…荒れてた。
振り返ると
親父さんは動いていない、
ヤバイぞこれ?
顔は、親父さんの顔は…、、、
鼻がひしゃげて
口の周りは血塗れで
床についた方の右目の端も
なんか切れてて
血塗れで目ん玉が飛び出てた。
「ちょ、、、
どーしたんだ、これ?!!
おいっ、ケンジっ!!!
しっかりしろやっ!!
おめーがやったのか?!
おいっ、ケンジっ!!」
「……やっちまった…、、、」
「なんでー??
おめ、手加減ってもんが
あんだろーよ?!!
救急車は?呼んだのか?!!」
「どーしよー、俺、、、」
「はぁ??
洗面器に水汲んで来いや!
目ん玉、やべーぞこれ?
洗って押し込んでやらんと、」
「…生きてる?」
ドキってした、、、
まさか、、、、
俯せの親父さんの足が
ピクって動く、、
「大丈夫だ、生きてる、、、」
「…嫁は? ガキは?」
「実家に帰した…。」
「そか、んな事、どーでもいいや、
救急車呼ぶからな?」
「待ってくれ、
そんな事したら、
俺、どーなる?
只でさえ、あん頃、
あんだけ悪さして捕まって、、」
「んな事知るかよー!!!
とにかく親父のこんが先だろー!
死んじまったらどーすんだっ!
おめー、馬鹿かっ??」
ケンジは気が動転して
既に自分のこれからを
先読みしてブルブルと震えて、
「手が、、手が離れん、、
ケータイ、手に貼り付いた、」
「?やい!しっかりしろっ!」
殴ってやろうかと思ったが
こいつ、今、
ヤバイと思って止めた。
「やいっ!ケンジっ!!」
「猫っ!でけぇ声出すなよっ!
周りに聞こえんだろがっ!」
…目が、、イッテる。
「救急車、呼ぶからな?」
ケンジはいきなり立ち上がり
風呂場に向かった様だ。
洗面器とタオルでも
取りに行ったんだろうか。
何が原因で、とか、
まぁ、親父さんが飲んで暴れて
それをケンジが??
…そんな事、考えたが、
それをケンジに問い質す
状況では無かった。
ケンジは執行猶予が付き、
…嫁と離婚した。