4話
あの後、結局どれだけ頑張ってもレベルアップもスキル取得もなかった。
皆どんどんレベルアップしてるのにな。
ちなみにケランの光は俺にしか見えてないらしい。
俺以外が見るとケセランパセランそのものに見えるんだとか。
そんなわけで肉てんこ盛りの夕食を終えた俺たちは各自部屋で休憩をしていた。
俺はというとケランの明かりで魔法書を読んでいた。
魔法書はとても精巧な造りをしている。
皮の表紙には銀飾で翼を広げた女神が描かれ、裏を返せばメタルシルバーで彩られた逆さまの男神が描かれていた。
ちなみに女神と男神、どちらを表紙に持って来るかで内容が変わるらしい。
俺は女神の方から読んでいたらしく、回復や光系が多かった。
ひっくり返して男神の方から読むとなんかエグそうな魔法がありそうな絵がいっぱいだった。
ただ攻撃魔法は男神の方が多かった。
当たり前と言えば当たり前なのだが。
だが精巧なのは表紙だけではない。
文章が美しいの一言に尽きる、まさしく芸術品のようなものだった。
光が当たると淡い煌きを揺らめかせる紫紺色の黒インクと、炎のように輝く濃緋色の黒インクがまるで蔦の様に紙の上を列になってうねっている。
その中に、まるで浮かび上がるかのように黒銀の図面が鈍く光沢を映している。
どうやら紫紺色が説明、濃緋色が詠唱部分、黒銀色が物に描く時に使うらしい。
これを書いた人はちょっと変人なんじゃないだろうが。
いや、もちろんいい意味で。
それと、一緒に貰った短剣。
これはどうも魔方陣を描くための物らしい。
皮の巻かれた柄にはなにやら細かい文字が刻まれている。
小さすぎて解読はできなかった。
半透明の蒼い刃は凄く切れ味がいい替わりに使いすぎると消えてしまう。
魔法を刻む分にはいくら使っても消えず、しかも刻んだところが銀色に輝くという素敵仕様だった。
付け加えておくと、魔方陣は発動しなかった。
悔しくなんかない。
そしてケラン。
これはどうも魔物召喚の結果らしかった。
説明のところに「魔物召喚はそれ単体では使用することができない。種族や属性を指定してやらなければ出現させることはできないのだ。おかげでワシが書かねばならないことが増えるのだ。」と書いてあった。
つまり、俺は光を灯すことのできる魔物を召喚したと言うことらしい。
魔物は指定しなかった場合、術者の力量や性格、つぎ込んだ魔力によって決まるらしい。
イメージにも左右されることがあるらしいのでより正確にイメージすると強力な魔物を呼べるとか何とか。
だが今の俺にはそんなことはどうでもいい。
両手両足で抱え込んだ白い毛玉に顔をうずめる。
「はぁ、あったかい・・・。」
ケランめっちゃ有能。
あったか毛玉最高。
なんでケランがこんなにでかくなっているかというと。
温かいから両手で包んでいたのだが、もう少しおっきくならねぇかなぁ、とかぼんやり思っていたのだ。
そしたら気がついたらケランがでっかくなってた。
しかも小さいときより温かい。
なので、ありがたくケランを抱き枕に布団に潜り込んでいたのだ。
ただしベッドは固めだが。
なにかあったら困るので持ち物を全てウエストポーチに放り込んでの就寝である。
ウエストポーチに対して本のほうがでかいがなぜかすっぽり納まったので、まぁそういうことだろう。
ぬくぬくとしながら、俺は朝までぐっすりと眠りについたのであった。