13話
【―――変異進化が完了しました。
レベルが初期化されました。
スキル 暗視を取得しました。
スキル 叡智のレベルが9になりました。
称号 影人のレベルが3になりました。
スキル 滑空のスキル上限が開放されました。
従魔 ナーリアの進化が完了しました。
称号 魔物の主のレベルが5になりました。】
おはようございます。
無事に進化出来たみたいです。
色々特典付いててうまうまじゃねぇか。
ていうか影人ってなんだろうな。
そんなの持ってたっけか。
『グギュルルゥゥゥ・・・』
・・・どっかで聞いたことがある唸り声だよな。
いやまさかなぁ。
この前見かけた奴はレイディナの樹に近づけてなかったからな。
まさかそんな、デスクーリアーがわざわざ聖樹の真下に来るなんて、なぁ・・・?
恐る恐る、そぉっと目を開けてみる。
新緑の草の絨毯の先、黒い服の人影が見えて―――
バッと、視界に真っ赤な目が映りこんだ。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『ギャルァァァっ、がっが、がぁあぁぁ・・・・』
まさに俺の頭を喰い千切らんとしていたデスクーリアーから、渾身の力で体を引き離す。
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デスクーリアー Lv89
種族:闇霊
区分:悪霊
属性:闇
スキル:
『魂喰らいLv96』『影足Lv74』『周囲探知Lv80』『侵食Lv47』
称号:
『禁忌LvMAX』『闇に侵されし者Lv――』『捕食者LvMAX』『残虐Lv86』
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レベル高ぇ!?
たまたま鑑定に引っ掛かったのか、提示された鑑定結果に全身が震えた。
とにかくこいつから逃げねぇと殺される。
そう思い体勢を立て直してデスクーリアーに向き直った俺に、びちゃりと生暖かいモノが降りかかった。
「・・・は?」
見上げた俺の視界の先。
でろりとした赤い目を見開いたデスクーリアーの、その大きく開いた口から、銀色の剣が血を滴らせて突き出していた。
そして、その後ろ。
淡い菜の花色の髪をなびかせた少女が、無表情に俺を見下ろしていた。
***
「いやぁ、間に合ってよかったですよ。あいつに喰われたら復活なんて出来ませんからね。」
菜の花色の少女がデスクーリアーを消し飛ばした後。
俺と少女と少女と一緒にいた青年はお茶を飲んでいた。
心底安心したかのようにそう言って俺にお茶を出してくれるこの青年は、青木裕也。
俺を助けてくれた少女に巻き込まれたらしい。
なんでも、崖からジャンプしようとした彼女を引っ張ったら、転移しようとしていたらしくそのまま気がついたらこの世界だったんだとか。
そりゃ、崖からジャンプしようとするなんて自殺だと勘違いするわな。
そんな自殺未遂少女だが、見た目は素晴らしく美人さんなのに、初対面の俺でも分かる欠点が一つある。
「アラウ、お菓子食べようよ。フィナンシェ好きだろ?」
「何度いらないと言えば分かる。食べなくても何も支障は出ない。」
「ええっ!前に試食してくれた時には美味しいって言ってくれたじゃないか!」
「味を見て欲しいと言われたからだ。ぎゃんぎゃん騒ぐな鬱陶しい。」
・・・無表情かつぶっきらぼう。
聞けば人間嫌いなんだとか。
「美人なのにもったいないよな。」
「やっぱりそう思いますよね!?アラウ、せめて微笑むだけでもいいから笑ってろよ!」
おおう、思わず口に出してしまった。
アラウのサファイアそっくりな目が俺の方を見た。
それだけでドキッとする。
別に恋をしてるわけじゃない。
本能が危険信号を発信しまくってる。
虚無を沈めこんだような、そんな感情のない目をしている。
たまにちらりと悲しそうな色が浮かぶのがなんとも言えないが、絶対的な力を滲ませているからただただ怖い。
「ほら、ちょっとでいいからさ、笑えって。絶対可愛いからさ?な?」
裕也、お前よく怖くないな。
俺あの目で睨まれたら多分失神できるぞ。
そんな俺の内心など知る由もなく、裕也はアラウの顔を触ろうと手を伸ばして叩かれていた。
がっつり睨まれてるのにニコニコしてて全然効いてなさそうだな。
あの図太さ俺も欲しい・・・。
主人公、せっかく進化したのに自分の鑑定はしなかったのね・・・。
ちなみに裕也とアラウのステータスは次話に出ます。
二人の話はそのうち出しますのでかなりお待ちください。
 




