16話
朝。
うん、朝だわ。
あの後魔法書をぺらぺら捲ってみたりとかしてたらいつの間にか寝てたらしい。
朝日がまぶしいぜ。
とりあえずはあれだな。
死にたくない。
いくら弱体化が解除されるって言ったって怖いもんは怖い。
だから、俺は死なないように頑張ることにするわ。
幸いスキルは取りやすいらしいし、商人兄弟の所で働かせてもらえないか訊いてみよう。
さぁて思い立ったが吉日ってな!
***
「つまり、勇者をやめて俺らの所で働きたいのか。」
「お前も大変だな・・・。」
今日はドルトスとマルドが居た。
なので二人にお願いしているところだ。
二人とも眉尻下げて俺を見てくるんだか、スキルもらえるからそこまで苦じゃないんだけど。
話し込んでいる二人を尻目に俺はケランとニアンを両手に持っている。
何をしているかというと、鑑定のスキルとか取れるかと思ってやっているんだ。
鑑定来い、鑑定来い、鑑定来い、鑑定―――。
【―――スキル 鑑定Lv2は取得済みです。】
え、いつ取ったの俺。
しかもレベル上がってんじゃんか。
謎の、じゃない、叡智さん、なんか他に商人が持ってるスキルない?
【―――取得済みスキルは忍耐力Lv2、鑑定Lv2、採取Lv1、調合Lv1です。取得可能スキルは交渉、観察眼、非情、錬金です。】
いっぱいあるな。
てかなんだよ非情って、そんなスキル取りたくないよ!
いや、でも非情にならないといけない状況もあるってことか?
もしくは取得しやすいやつかもしれない。
観察眼はそのまんまだよな。
毎日ケランたちを観察すればいいかな。
「おーい、剣人?聞こえてるかー?」
「あっはい!なんですか。」
顔を上げるとゲラゲラ笑っているマルドの隣でドルトスが若干疲れた顔で俺を見ていた。
「お前考え事すると周りの音聞こえないやつなんだな、覚えておくよ。」
「ドルトス、ずっと剣人呼んでたんだぞ。」
「すいません!」
「いやいや、気にしなくていい。それより、うちで一緒に働こうか。」
えっマジか!
ならスキル取得急がないとまずいんじゃ。
「剣人、スキルは無理に取得しなくても大丈夫だからな。とりあえず店の上が俺らの家だから、空き部屋に荷物を入れよう。仕事は明日からだ、今日はいつも通り素材集めとかレベリングとか、好きなことをしてくれ。」
「ありがとうございます!荷物は今持ってるのだけなんで、宿のおっちゃんに言ってきます。」
「おう、そうしろそうしろ。シドスが戻ったら言っておくからな。」
商人兄弟、やっぱりすごく優しい人たちだった。
こうして俺は商人達の下で働くこととなった。