12話
森の入り口に着くまでに血が抜けていた鳥を袋に入れてポシェットに閉まった俺は、鳥の素材を活かす為に素材を探していた。
と言いつつ既にキラキラ光る糸だとか幹に挟まってた鱗みたいなものだとか、折れた牙みたいなものだとか。
そんなものを集めては小袋に入れて仕舞ってを繰り返している。
もちろん薬草集めも平行している。
いい小遣い稼ぎになるからな。
きょろきょろと辺りを見回しながら目に付いた物を片っ端から拾い上げ、光の加護を掛け、袋に仕舞い、ウエストバッグに入れる。
宝探しみたいな気分でわくわくとしていた俺だが、急に背中に悪寒が走った。
勢いよく顔を上げて悪寒の原因を探す。
早く見つけないとヤバイ気がする。
気のせいとかそういうものより、本能に近い部分がそう警告してくる。
だがいくら見回せど危険そうな物は全く見えない。
草に覆われた地面。
木の葉が茂る樹冠。
屹立とする木々の幹。
「・・・ん?」
視界の端に違和感がある。
なんというか、左の端がやけに黒いような、誰かに覗かれている様な。
ゾッと、先ほどよりも強い悪寒が走った。
逃げろと本能が叫ぶや否や、俺は全力で右に飛び上がった。
「تسليط بيرس!」
『グギュルゥァァァァァァァア!!』
途端に視界が真っ白になり、俺のすぐ左側でおぞましい叫び声が響き渡った。
まぶしさのあまり目が開かず、思わずうずくまった俺の頭上で。
叫び声が不自然に途切れた。
トサッとなにか軽い物が落ちた音がした。
化け物の声は、気配は、もうしない。
恐る恐る目を開けると、徐々に収束していく光の中にケランがいるのが見えた。
これ、ケランに攻撃させる魔法だったのかよ。
狩りの前に覚えた魔法の正体を知り、その威力の高さに呆然としてしまう。
全方向攻撃とか、えげつねぇ。
いや、でも属性攻撃とかかっこいいじゃねぇか!
「やったな、ケラン!」
両手にケランを包んでもにゅもにゅと揉み込む。
うれしそうに明滅するケランに俺の笑みも深くなる。
だがしかし、俺はこの時、重大な勘違いをしていることに気がついていなかった。
新しい魔法―――光槍は全方向攻撃ではないということを。
この勘違いを、俺は後に後悔することとなる。




