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1時間ほどトレーニングをしてシャワーを浴びたところで呼び鈴が鳴る。
誰だろうと思いながらドアを開けると樹里だった。
「やあ、孝ちゃん、お隣さんの本間樹里だ。よろしく頼む。」
俺の部屋の鍵は持っているはずなのにわざわざ呼び鈴を鳴らすというのは、どうしてもお隣さんごっこがしたいらしい。
「そうか。まあ、あがれよ。」
「何っ!?ちょっと挨拶に来ただけの隣人をいきなり部屋にあげるというのか君は!?」
「うるせえよ。」
いつもは黙ってあがってくる癖に今日は何だ。
「あ、これお土産。」
そう言って手渡されたものは、小さな箱に入ったトマト。
「お前これ大家さんにもらったやつだろ。」
「ではお言葉に甘えてあがらせてもらおう。」
話を聞きやしねえ。
ともかく、ソファに座って話しをすることとなる。
「で?何がどうしたんだ?」
「簡単な話だ。私が、引っ越してきた。」
「それは知ってる。その前だ。何で引越しなんか。」
こいつの前家はアパートだったが、悪い家じゃなかったはずだ。探すのを手伝ったから間違いない。
「いやー、それがさー。前の家追い出されちゃって。」
「追い出されたって……なんでまた。」
「それでむかついたからアパート燃やしてやったわ。」
「いや、そうじゃなくて……おい今なんて言った?」
「やっちゃった。」
「アパートを?」
「燃やした。」
「アホか!!」
ついさっき大家さんに聞いた話が脳裏をよぎる。「どうも近くのマンションで火事があったみたいですよ。岩崎さんも気をつけてくださいね。」
とにかく今からでも様子を見に行かないといけない。
俺は玄関へ向かったが、そこを樹里に呼び止められる。
「いやちょ、ちょっと待って!冗談よ、冗談。」
「……冗談?」
「そう、冗談。決まってるでしょ。いくら私でもアパートもやしたりはしないって。」
「いや、お前ならやりかねん。」
冗談になってないんだよ。本当か嘘か分からないし、つまらないし。
「ちょっとはやろうかと思ったがな。まあなんとか我慢した。ほめていいぞ。」
「アホか。」
ふーっと大きくため息をつく。
そこでいつものように電話が鳴った。