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屋上とあひる少女

 授業をさぼって屋上で昼寝をしていた。春の日差しが心地よく、通り過ぎる風は暖かくて優しい。まるで、女性の柔らかな手で肌を撫でられるようだ。そんな経験は無いけれど。


 流れていく雲を眺める少年「青」は、空しい現実から逃げるように再び目を閉じた。せめて夢でくらい、想像上の柔らかさを味わいたい。わかりやすく言うと、可愛い女の子といちゃいちゃしたい。ちくしょう、現実なんて…!

くそくらえ、と考えた瞬間、誰もいないはずの空間で物音がした。…誰か来たのだろうか。薄目を開けて様子をうかがうと、どうやら足元に人がいるようだった。仕方なく起き上がり、その人物を見て思わず思考が停止する。とびきりの美少女が、アヒルのおまるにまたがり、じっと僕を見つめていた。


 人間というのは予想外の事態に陥ると、余計なことばかり考えてしまうものらしい。「くそくらえ」などと言うから、アヒルのおまるが復讐に来たのだろうか。彼は不本意ながら毎日くらっているはずだ。フリーズした脳に真っ先に浮かんだのは、そんな実に下らない憶測だった。ぽかんとしたまま少女と見つめあって、どのくらい時間が経ったのか。少女はふいに立ち上がり、黒い瞳で僕を見下ろして呟いた。

「あなたに復讐をしに来ました。」

あぁ、僕の脳みそも捨てたもんじゃないな。


 とても怒っているのか、少女の目はひどく冷ややかだ。

「あの、失礼なこと言ってごめん。今度からはそうだな…キャンディくらえ、とかにしておく。」

「何の話ですか。私は復讐をしに来たと言ったんです。」

あれ、キャンディは嫌いなのかな。

「じゃあチョコレートでなんとか。」

「意味がわかりません。」

少女は無表情に言い放つが、僕にしてみれば彼女の方がわからない。今時の女子高生は、おまるで移動するのがトレンドなのだろうか。とても歩きづらそうだ。

「もしかして、チョコレートなんかで許してもらおうと考えているのですか?」

それっぽっちであなたの罪は許されませんよ、と少女は続けた。僕の罪?あのたった一言で有罪判決とは、あまりに大げさではないか。


 被告人としての言い分を述べようとしたその時、僕は自分の耳を疑った。目の前の美少女は相変わらずの無表情で、淡々と爆弾を投下した。

「私はあなたに恋をしたせいで、大事なものを失ったのです。それはあなたの責任で、あなたの罪でしょう?だから私は、復讐することを決めました。でもチョコレートはもらってあげます。」


僕の脳みそは再びフリーズしたのだった。




 

ご覧頂きありがとうございます!

おそらく続きます。感想などありましたら是非。

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