表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の螺旋  作者: Tomokazu
第一章
8/18

4

 4



 自分のデスクに戻ると、凜は実験の準備をした。


 マイクロチューブラックを手元に置き、棚から試薬をいくつか取り出す。

 いま遙にバッファーの調製をお願いしているため、石山から渡されたサンプルの解析はすぐには行えない。さらにはオートクレーブも行うので、バッファーが適温に下がるまでの時間も考慮に入れる必要があるだろう。

 今日は、別に計画していた実験の作業からはじめることにする。マルチタスクは研究を効率よく進めるためには重要なことだ。


 凜が準備をしていると、再び遙がやって来た。凜を見て、あっという顔になる。


「鳥須さん、忙しかったですか?」


「――いや、作業をはじめるところだから、まだ問題ない。バッファーの調製は?」


「終わりました。いまオートクレーブにかけてます」


「早いな」


 凜は遙の作業の手早さに驚いた。研究室に出入りするようになってまだ数ヶ月だが、思った以上に飲み込みが早い。優秀な子だとは分かっていたが、器用さも兼ね備えている。


「そうそう、さっき愛稀に連絡してみたんです。そしたらすぐに返信が来て――」


 そちらもずいぶんと早いものだ。


「『近いうちに会いたい』とのことです」


 メッセージの部分を復唱したであろう部分は、愛稀の喋り方を真似たのだろう、遙はわざと少し舌っ足らずな喋り方をした。


「それは構わないが。しかし、なぜ僕なんかに」


「さあ――あの子の考えてることは私にもよく分かりません」


 遙はさらりと言ってのける。でも――とさらにつづけた。


「もしかしたら、話し相手が欲しいのかな。あの子、友達が少ないようなんです。地元から出てきて、私以外には近くに知り合いもいないし。大学にもあまり関わりの深い人はいないみたいで。……ほら、あの子ちょっと変わってるでしょ?」


「風変りという意味では僕も同じだ。気にはしない」


「それもそうですね」


 遙の物言いに、凜は思わず笑った。


「来週なら予定が空けられそうだ。彼女にそう伝えておいてくれないか」


「分かりました。もしかすると、ロマンスがあるかもしれませんね?」


 遙はいたずらっぽく言った。ただ、明らかに面白がっている遙の口調とは裏腹に、凜はぽつりと言った。


「……それはあり得ないよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ